藤原俊成は、崇徳天皇、後白河天皇から愛され、後鳥羽天皇からは90歳を盛大に祝われるほどの人柄で、生涯現役で和歌の道に邁進し、亡くなる一週間前まで歌集の合点を行い、三日前には息子の藤原定家と和歌の話をし、平安末期から鎌倉時代初期という恵まれない衛生環境の中、 91歳の大往生を遂げた
藤原定家の明月記を調べていく中で俊成のエピソードにたくさん触れ、その藤原俊成の生涯を書いた「臨終の雪」という本で、俊成は筆跡と同様に「麗しく」生きた人なのだと知った
藤原俊成の生きた時代
藤原俊成の美しい筆跡
藤原俊成を始祖とする冷泉家の子孫の方が
「俊成さんの美しい字を見ると、これを守って行かなければと思う」とおっしゃるのも納得
雪を食べたい
藤原俊成というと、今一番心に強く残るのが、 明月記に書かれた、臨終の際の「雪を求めた」エピソード。 藤原定家が俊成の臨終を明月記に詳細に書き残しているため、 820年前の出来事とは思えないほどありありと想像できる。自分の死がこんなに鮮明に後世に伝わっているとは俊成もビックリなはず。 (明月記は失われている巻もある中でこの記述の部分は残っているからこそ ”知ることができるエピソード” 残ってくれてありがとう)
「臨終の雪」東野利夫著
俊成の臨終の際のエピソードの詳細を知りたくて、まさにそれがタイトルになっていた本を手に取った
引き込まれる本の冒頭
著者が俊成に魅せられ、
この本を書くに至った背景が語られている
静かな夜に一人机に向かうさまがなんとも尊い
俊成の魅力が伝わってくる
「臨終の雪」目次
藤原俊成の世界観を大事にした美しい構成
本の構成は、「藤原俊成の生涯」 「和歌」 その合間に「コラム」で、 文章自体と文章の配置いずれも俊成へのリスペクトと愛情が伝わる
余白の美
この本の文章は、完結で分かりやすく美しい
余白が俊成の世界観を表しているよう。構成自体芸術
俊成の臨終の表現は、
何冊か明月記関連の本を読んだうちで一番美しい
俊成さん愛おしい
医師目線で見る歌人の健康・長寿
著者の東野さんは医師であることもあり、明月記の記述から読み取れる 「病気を抱えながら長寿を果たした俊成」への考察が興味深い。 俊成の長寿の秘訣の一つとして和歌の会合のため、毎日5〜6キロは歩いていたからだという。歌人と長寿との関係についてのページを読むと、健康法に和歌を追加しないと!と思う 笑
藤原俊成の臨終 詳細(明月記より全文)
11月11日から亡くなる6日前の11月24日まで最後となった仕事「秋篠月清集」の合点(評価をつけること)を行い、亡くなる3日前にあたる11月27日には定家と和歌の話をしていた。まさに生涯現役
この時代の臨終の様がこれほど鮮明に書かれているのは、他に無いのではないだろうか
印象に残る美しい表現
長生きの秘訣は自然と芸術
東野さんの文章から、この美しいリズムに似ているなと美術評論家の高階先生の文章を思い出した
書かれている内容が、
「うつろうもの」「もののあはれ」
和歌と日本画、共通する日本の美意識
東野利夫さん (95歳没) 医師・作家
高階秀爾先生 (現在92歳) 美術評論家
お二方ともご長寿!まさに自然と芸術を愛し、楽しむ姿勢が長生きの秘訣なのだろうと納得
芸術を愛し、それを説明する言葉自体も芸術的に美しく表現できる才能は素晴らしい
「臨終の雪」東野利夫著
本との出会いのこと
藤原俊成のことが知りたくなり、俊成関連の本を図書館で何冊か借りた中にあった本。まさに雪のエピソードがタイトルとなっていた
早速開いて驚いた
達筆な字で「 謹呈 東野利夫 」著者のサインと寄贈本の印。 なんだかご本人の熱意が伝わってくるようで感動。 俊成に感動し、本を出すまでに至った方とは どんな人なのだろうと調べてみたところ、
なんと、実話をベースにして書かれた遠藤周作「海と毒薬」その元となる経験をしたお医者さんだった。
「臨終の雪」は2010年10月出版
東野さんがこの本を書かれたのはおそらく84歳頃
2021年に95歳で亡くなられていた
藤原俊成の美と著者東野利夫さん
本の最後は静かな俊成の「臨終の雪」の場面
若い頃の不幸な出来事を乗り越え、この静かで美しい俊成の世界を愛され、晩年に本として残したいと強く思われたのだ。背景を知るとより深みが増す。本にサインを書かれ寄贈された時、どんな思いだったのだろう
俊成への熱い思い、
時を超えてしっかり受け取りました!
本との出会いに感謝
たまたま著者が寄贈された図書館を利用していたからこそ出会えた本。 ご存命であればお手紙書きたいくらい感動してしまった。 せめて購入したいと調べたら新品の在庫が無い、、、 やむなく中古を検索。なんと、サイン入り初版が販売されていたので購入。大事にしよう
■藤原俊成と定家を祖とする冷泉家 唯一現存の公家邸宅
藤原定家の日記や冷泉家の書物が奇跡の伝来をしてきた経緯。書物も蔵も徳川家康・秀忠、天皇に守られ、書物散逸危機には蔵を天皇が封印するほど大事にされた。現代の家存続の危機には稲盛和夫さんにも寄付を受け守られていた 今では現在唯一の公家邸宅となっている
今だったら参加したい勢いのイベント(開催済)
俊成の人柄伝わる
公家と武士という立場を超えて和歌を愛する者どうしの繋がり。素敵な話だなぁ
◼️調べて分かった藤原定家の日記が残るのは超奇跡
天皇の書物すら失われる中、この時代の本人が書いた日記原本が残るのは稀で奇跡。道長と定家の日記の違い、宮廷儀式に奮闘する定家と息子の為家が垣間見られる記録など