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少女は川縁でいつも一番大きな石を探した。 「もうあれ以上の石はないだろう」 少女は納得が…
カフェテリアには、人以外にも沢山の来客がある。親離れしたばかりのリス、申し訳なさそうに鱗…
眠れない夜はカラスと会話をする。 「かあ(どうしてこんな時間に起きているんだ?)」 「眠…
好意とは、その感情がもつ曖昧さとは裏腹に、境界線は立ちはだかる壁のように堅牢である。つま…
本棚を組み立てるところから、僕の物語は始まる。しかし、一人ですっかり組み立てるこてしまう…
ふたつの世界が交錯していることに気づいのは、植え込みの鈴蘭を見ているときだった。僕はその…
「弓張月の夜は魔女に狙われるから、家の外に出ては行けないよ」 おばあちゃんの言い伝えを、娘はすっかり忘れていた。庭で飛び交う蛍を見て、娘は庭に出てしまった。あっという間に魔女は娘を連れ去らい、娘をシチューにして食べてしまった。 魔女は印として、娘の小指を2本庭に差した。おばあちゃんはそれを見て、ため息をついた。 「ねえねえ」 「どうしたの?」 「これって、おばあちゃんが魔女なんでしょ?」 「どうしてそう思うの?」 「娘が夜一人なのもおかしいし、最後も泣いてい
夢でみた天気予報は見当違いだった。夏日の次の日が氷点下だなんて、普通の感覚で考えたら起こ…
生まれ変わったら時計になりたい。同じ間隔で、同じリズムで。タクチク時間を刻むふりをする。…
ダンスホールで踊る私を、彼は見つけてしまった。私の律儀なステップを、拍数に合わせて揺れる…
孤独な青年が部屋の中央で胡座をかいている。部屋は不気味なほど片付いていて、生活感を欠片も…
「憶えてる? あなたと月暈の話をしたこと」 彼女はブルー・ムーンに視線を落としながら呟い…
空から醜い女の子が降ってきた。直撃したある男は途端に気絶をした。ある男が目を覚ますとそこ…
湿気混じりの朝方、バルコニーでぼうっとしていると一羽のカモメが柵に止まった。海からは随分離れているこの地にいるとは、なかなか数奇なカモメだ。 「おい、こんな時間に何してやがる」 僕はいささか吃驚したけれど、酔いが良いように作用して解釈した。つまり、カモメが日本語を語ることだって、想像できる時点で現実せしめるのだと。僕はカモメに応答した。 「見れば分かるだろう。煙草を吸っているんだ」 「頭が悪いやつだ。それを含めて、何をしているんだと聞いているんだ」 ずいぶん口の悪い