交錯。
ふたつの世界が交錯していることに気づいのは、植え込みの鈴蘭を見ているときだった。僕はそのような可能性すらも考えていなかったから、酷く混乱した。あるいは、どうして気づけなかったんだろうか、と狼狽する気持ちもあったのかもしれない。僕は深く溜息をついた後、うっかり鈴蘭の毒に浸ってしまいそうになった。
ふたつの世界が交錯していることを理解し、この頃感じていた違和が輪郭をもって立ち現れる。目が覚めた瞬間、夢と現実のどちらに意識があるのかが分からない。交錯。夢での中で眠りに就いて、現実の方で目が覚めることもあるし、その逆もまた同じくらい存在する。交錯する中で平衡感覚が崩れても、それは僕の責任ではない。僕は躓いてばかりだったこの頃に納得し、安堵した。
ここで躓かなくてよかったな、と僕は思った。鈴蘭に顔から突っ込んでしまえば、僕は酷い目にあっただろう。それが現実の世界なら、尚更のことだ。