ダンスホール。
ダンスホールで踊る私を、彼は見つけてしまった。私の律儀なステップを、拍数に合わせて揺れる体躯を、見つけてしまった。彼は釘付けになっている。私を特別な存在だと認知している。私を知覚している。
私が死してなお、このダンスホールで踊り続けていることを彼は理解してくれるだろうか? 私はある意味では16歳であり、ある意味では51歳なのだ。ダンスホールに固執した私という存在を、彼は慈しんでくれるだろうか? 彼は1歩ずつ私に近づく。1歩、また1歩と、敬虔なサーファーのように人の荒波を縫って来る。
「君、幽霊なんだろう」
彼は私を通り過ぎてから、そう呟いた。
「私に言ってる?」
19歳くらいの幼気な少女は、微笑んだ。彼は彼女の手を取り、踊り始めた。言葉は彼女を透過して私を穿つ。しかし、私は踊り続けることしかできない。