カラス。

眠れない夜はカラスと会話をする。

「かあ(どうしてこんな時間に起きているんだ?)」

「眠りの方が僕を拒絶しているみたいなんだ」

「かあ(俺は眠たい時に自然と眠れるぜ)」

「人間は頭でっかちすぎるから、そういう不具合が起こることがあるんだ」

「かあ、かあ(おいおい、俺の方がずっと賢いぜ。それは人間と言うより、お前に問題があるんじゃないか?)」

「かあ」

「かあ(おい、茶化すなよ。酒でも飲んで、気絶しちまえばいいじゃねえか)」

「それはずっとやっているさ。それでも眠れないんだよ」

「かあ、かあかあ(こりゃあずいぶん重症なんだな。まあ、肩の力を抜くことだよ。俺よりずっと良い暮らしをしているのに、憂いてばっかりなのはなんだか不自然だぜ)」

「確かに、僕は恵まれていることを忘れていたのかも知れない」

「かあ(さあ、眠りな。俺は今の時間が、かき入れ時なんだ)」

「おやすみ」

残念ながら、僕はカラスの言葉を理解することは出来ない。それだから、僕はカラスに仮託して、自分が欲しい言葉を話してもらっている。そうすれば眠りの方が僕によってくる。僕は抽象性の高いカラスの鳴き声に毎晩感謝している。

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