啓示X。
夢でみた天気予報は見当違いだった。夏日の次の日が氷点下だなんて、普通の感覚で考えたら起こりえないものだけれども、普通ではないことがしばしば起こりうる現代だから気づけなかった。僕は目が覚めてから急いでコートとマフラーを引っ張り出して、外へと繰り出した。外は心地よい5月の陽気で、僕はすぐに汗ばみ始めた。
でも、僕は夢をある種の啓示として捉えるようにしているから、その格好のまま過ごすことにした。すれ違う人々は訝しげな視線を投げるけれども、それはいつものことだから気にならない。僕はハンカチを濡らしながら、授業が行われる教室へと急いだ。
「どうしてコートを着てきたの?」
汗をかいているうちに授業が終われば、啓示が現実を指揮しはじめる。
「夢で見た天気予報が、今日は氷点下だからコートを着た方がいい、と言ったんだ」
彼女は、しっかりと3度頷いた。
「さて、私についてきてもらえるかしら」
僕はコートのボタンを締め直し、マフラーを綺麗に巻き直した。このようにして、人生は動いていくのだ。僕は夢にまた感謝をした。