とけいくん。
生まれ変わったら時計になりたい。同じ間隔で、同じリズムで。タクチク時間を刻むふりをする。時計が時間を司っている訳ではない。ただ、時間を伝える存在。だけれど人は、時計を有り難がる。恭しく掲げたりする。僕は生まれ変わったら時計になりたい。こくこく毎日準備をしている。
まずは、正確に1秒を把握する。秒針のリズムに合わせて、スタッカートでタクチクタクチク。くしゃみをしても、誰かが死んでも、一心不乱にタクチクタクチク。うるう秒をカウントしても、誰も僕を責めたりしない。無心で刻み続けることだけ。そして、笑顔は絶やさない。せっかくなら、僕は掲げられたいから。みんなの視線を集めたいから。ちやほやされても、タクチクタクチク。
「タクチクタクチク「とけいくん、とけいくん」タクチクタクチク「あなたはどこからやってきたの?」タクチクタクチク「あなたのことを聞かせてちょうだい」タクチクタクチク「……」タクチクタクチク「残念だわ」タッ!……ク」