むかしばなし。
「弓張月の夜は魔女に狙われるから、家の外に出ては行けないよ」
おばあちゃんの言い伝えを、娘はすっかり忘れていた。庭で飛び交う蛍を見て、娘は庭に出てしまった。あっという間に魔女は娘を連れ去らい、娘をシチューにして食べてしまった。
魔女は印として、娘の小指を2本庭に差した。おばあちゃんはそれを見て、ため息をついた。
「ねえねえ」
「どうしたの?」
「これって、おばあちゃんが魔女なんでしょ?」
「どうしてそう思うの?」
「娘が夜一人なのもおかしいし、最後も泣いていないもの」
「うんうん、面白い考えね」
「ねえねえ」
「どうしたの?」
「魔女はどこにいるのかしら?」
「いないかもしれないし、あなたの目の前にいるかもしれないね」