マガジンのカバー画像

思い出すこと

52
子供の頃の思い出や、過去の記憶を、随筆風にまとめています。
運営しているクリエイター

2024年7月の記事一覧

苦いジャスミンティー

 私は窓際のテーブルに腰かけた。店内はこじんまりとしているが、さっぱりと明るくてさりげな…

こと
3か月前
1

秋祭り

 子供の頃は近所の小さな神社で催す秋祭りを毎年楽しみにしていた。私は親にお小遣いをもらっ…

こと
3か月前
1

在所

 海沿いの長いトンネルを二つ抜けると母の在所である。子供の時分、私たち家族は父の運転する…

こと
3か月前
1

パグ

 実家では長らくパグ犬を飼っていました。カケルというオスが最初に来ました。次にアカリとい…

こと
3か月前
2

モモ

 私が二十歳のころに実家へやって来たチワワは、モモと名付けられて十四年間生きました。魚の…

こと
3か月前
1

クリスマス会

 小学校低学年のころだったでしょうか、子供会の主催するクリスマス会に参加したことがありま…

こと
3か月前

波音

 自転車のかごへカメラを入れて、夏の盛りを海まで漕いだ。若かりし日、お小遣いをはたいて高価なデジタルカメラを買ったばかり僕は、しばしば近所を写真家気取りで出歩いた。山のふもとを彷徨うこともあれば、街中をブラつくこともあった。その日は、海へ向かった。  地元の海岸には寂れた小さな港町がある。碁盤目のような路地に薄汚れた民家がひしめき合っている。真っ赤に錆びた鉄材が捨ててあったり、鬱蒼とした雑草だらけの空き地があった。狭い路地の先には防風林の松並木が見える。その向こうから波音が

西洋人形

 子供のとき、ある婦人の家へひとりでお邪魔をした。その婦人が誰だったのか、なんの目的で訪…

こと
4か月前
2

ベランダの微笑み

 中学生のとき美術担当の大変若い女の先生がいた。小柄で色が白く、無口な人で、笑っていると…

こと
4か月前
2

山路

 昼どきに近所のパン屋へ出かけた。パンを買えるだけのお金をポケットに入れて、スニーカーを…

こと
4か月前
4

立食パーテー

 縁があって毎年十二月に開かれる、とあるパーティーに毎回参加していた。半分は義理だった。…

こと
4か月前
7

手紙

1.  突然E子さんから手紙が届いた。E子さんは中学生のときのクラスメイトだ。卒業してか…

こと
4か月前
1

ハセマネ

 高校生のときはファーストフードでアルバイトをしていました。はじめてのバイト経験でした。…

こと
4か月前
3

卓球部テンマツ記

 高校の時は卓球部でした。なぜ卓球部を選んだかというと、中学のときに卓球部だったからです。中学では熱心に部活に打ち込んでいました。高校ではどんな雰囲気なのかわからなかったけれど、他にやれそうな運動もないので無難に卓球を選びました。  私が入部した当初はなぜか三年生がいませんでした。二年生が最上級でした。中学に比べるとずいぶんラフな雰囲気でした。問題は先代が卒業して私たちの代になってからです。部員の数が少ない上にまとまりがなく、活動はほとんどなくなってしまいました。そもそも顧