【連載】RYUKYU SOUL, HUMAN SOUL #17 ひめゆりの塔②
こんにちは。今週もお読みいただきありがとうございます。前回は一人旅の2日目に訪れたひめゆりの塔で考えた、戦跡を訪れて初めて気づくことのできる傷の深さについて綴りました。今回は、ひめゆりの塔の隣に建てられたひめゆり平和祈念資料館で感じたことを書いていきます。
<ひめゆりの塔②>
まず資料館に入ってすぐのところには、沖縄戦が始まる1年前の彼女たちの集合写真が大きく展示されていました。
そして中に入っていくと、彼女たちがどのような経緯で学徒隊として動員されるようになったのかを説明する展示がありました。この展示は沖縄戦が始まる前の彼女たちの学校生活に関する説明から始まっていて、そこには彼女たちの学校行事の写真や学校生活で使われていたもの、教科書の内容などが展示されていました。
この展示を見るまで正直私は彼女たちのことを、生まれた時から軍国主義社会の中で生きてきてそれ以外の平和な世界を知らない少女たちだと勝手に思っていました。しかし、彼女たちは沖縄戦が始まるまでは私たちと大して変わらない学校教育を受け、スポーツや友達との時間を楽しみ、私たちと大して変わらない平和な学校生活を送っていたのです。
そこにいた彼女たちは自分と何も変わらない、普通の10代の少女たちだったのです。そんなことを考えた時、彼女たちの体験したことを自分ごとに置き換えて感じることが少し難しくなくなりました。
そして戦争が始まると、彼女たちを取り巻く教育環境はガラッと変わります。軍国教育の最大の教えは、戦争における国の勝利のために自らの命を捧げることにありました。この洗脳とも呼ばれる教育が一般の市民を戦場に送り、少女たちを学徒隊として動員させ、その先に待っているのは死とそれが生む怒りや憎しみです。この教育を通して思いやりを持つ純粋な少女たちの心は奪われ、洗脳された軍国少女として、やがて学徒隊として動員されていきました。
学徒隊として動員された壕の中の陸軍病院の労働環境は最悪で、患者だけでなく共に動員された友人が様々なかたちで死んでいく姿を日常的に目にすることになりました。そして攻撃から逃げる時には足の悪い患者や友人を見殺しにするしかなかったり、救いようのない患者には黙って青酸カリの混ざったミルクを飲ませて死なせる手を打ったり、10代の少女たちにとってそんなことが日常になってしまいました。
国のために命を捧げることの誇りや日本が勝っているというような嘘の情報を軍国教育によって教えられていた彼女たちは、動員された先で友人の命が奪われていくのを見て初めてその矛盾に気づいたのかもしれません。でも気づいた時にはもう遅く、権力を持たない少女たちには国の命令に従う以外何もできなかったのだと思います。
兵士や友人の死んでいく姿を毎日目にし、どんなに命がけで働いても最も残酷な現実だけを突きつけられ、人間としての尊厳を奪われる苦しさ。でもその状況を無力な自分ではどうにも出来ないことが更に苦しい。どうして自分と全く同じような少女たちが、その時代の沖縄に生まれたという理由だけでそのような苦しみを強いられなければいけないのか。現代も生まれた場所だけで運命が決まってしまう世界であるのなら、これから自分や自分の友人や家族が同じ苦しみを味わう可能性もゼロではないのではないか。
彼女たちの苦しさを思えば、彼女たちの平和な日常や自由を奪った当時の軍国教育や国家権力に対して、そして現代においても同じようなことをしようとしている世界中のあらゆる権力に対して、深く永い憎しみや怒りが湧きます。
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