小説 花の意志 第3話 b. 離脱
わたしは黒ずくめの女から逃れ、元来た道を走った。
返り血を吸ったワンピースが酷く重い。肌に纏わりつく気持ち悪さを堪えながら、町へ戻った。
日はもう傾きかけていた。
町は不自然に静かだった。まるで人が消えてしまったみたいに。
すぐにでも誰かに助けを求めたかったのだけれど、誰ともすれ違うことなく、そのまま家に辿り着いた。
家のドアノブに手をかけた時、いつもとは違う空気を感じた。
誰かが家の中に居る――。
息を潜めて静かにドアを開けると、其処には思いがけず懐かしい後ろ姿が在った