小説 花の意志 序話
其処は砂漠の上に建つ国。
年々、嵩を増す砂を前に、人々は上へ上へと階層状に街を造っていた。
古い街並みは砂に呑まれ、それを土台に更に上へ新しい街を建ててゆく。
そして上の街で出た廃棄物は下へと棄て、下の街は砂と灰に塗れて廃れていった。
人々は下の街を"下界"と呼び、対して上の街を"上界"と呼んで、区別していた。
其の国の人々は淘汰されようとしていた。
砂漠化の波に加え、奇病が蔓延し始め、人々は差別し合うようになっていた。
抑圧された環境が人々を過激にし、ついに暴力がその国を呑み込んだ。
混沌として先が見えない――。
これはそんな世の中で生きようとした、或る姉妹の物語。
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