赤木青緑

小説家、詩人。不条理のハードパンチャー。わたくしなりの小説と詩を遣らせて頂きます。noteに作品を載せています。BFC5,6一次通過。第5回阿波しらさぎ文学賞一次選考通過。

赤木青緑

小説家、詩人。不条理のハードパンチャー。わたくしなりの小説と詩を遣らせて頂きます。noteに作品を載せています。BFC5,6一次通過。第5回阿波しらさぎ文学賞一次選考通過。

最近の記事

詩集 鯨のような雨

電波 文脈が走つて 薙ぎ倒した エレキテルの閃きは 空気を震わせる 波の音 打生 体のダルみが強い 部屋の光 えいやっさえいやっさ 川の流れに身を任せ 血流がどくどくと通い 今宵わたくしは消えかけの魂を 奮い立たせ 脳の働きが鈍く 朦朧とした意識で スマホに 『生きたい』と打ち込む 消えてゆく死 生で溢れている! 描かれた死が消えた どこへいった あれ程までに充満していた死が! 泉のように湧き出てきた死が 枯渇した 黄泉の国へのゆき方が分からなくなってしまった 死が

    • BFC6における深澤うろこのつかみの効能

       深澤うろこにつかまれている。  一次通過の知らせを見たとき『あそこで鳩が燃えています』に目を惹きつけられた。そして怯えた。凄いタイトルだなと思った。良いタイトルだと思い、「良いタイトルですね」とメッセージを送ろうと思ったが、良い?良いとはまた違う、と思い直しメッセージを送るのはやめた。良いが怖ろしいと思ったからだ。  タイトルのつかみで小説の内容も期待値が上がっていた。内容も期待外れのものではなかった。あそこで鳩が燃えています、というそのままのことを書いているのだが、それは

      • BFC6決勝作品感想

        深澤うろこ「プールの記憶」。プールに強制的に入れられるのは勿論喩えで、えぐい程意図的な筒抜けの勿論戦争の事で、変化球の皮を被った真っ直ぐで、大学生が160キロの情熱火の玉ストレートをど真ん中に投げ込むようなもので、バッターは全く動けず見逃し三振で途方に暮れベンチに戻るしかない! 藤崎ほつま「静かなるもの」。日々のありがたみに感謝している。平穏無事な毎日。些細な厄介事もあるが、ささやかな出会いなどが、まろやかにしてくれる。老人のような心静かな落ち着きが、しかし生きてゆくという

        • 手紙の味は神の味

           手紙の味は神の味がします。  現代ではすこぶる旨いことを神というらしいですね。例えば、「このオムライス、マジ神!」のように……  わたくしは手紙をよく書きます。食べはしません。ゴートではないのですから……。しかしながら手紙はよく書きます。わたくしの手紙を読んでくださった方が、「この手紙、マジ神!」といってくれたら嬉しいですね。  神ということはすこぶる旨いということですから、わたくしの手紙もすこぶる「上手い」ということなのでしょう。ありがとうございます。  ところでわたくし

          たたみかけるように雨が降っている

          蠢く心臓が鼻から飛び出して のっぴきならない未来が待ち受けている 波動はさらさらしており 肝心な眼が見えない 見通しの明るい明日が向こうからやってくる訳ではなく 暗闇を探り廻り掘り当てた道に見える明かりが わずかばかり白を感知し 辿って行けば 山と海が動き出す 変わらない話は 大勢の耳に浸透し みな双子となり、分かり合える しゃらくさい 天空から地面が落ちてくる 降り注いだ砂は雨のように降り イエローのパラソルの下グリーンティーを呑む 草の香りが鼻腔を掠め異物感を感じた 心

          たたみかけるように雨が降っている

          BFC6一回戦全作感想

          中川マルカ「あいはむ」。命の連鎖は、喰うこと、まぐわうこと、繋いでゆくことの営み。人工的に命をつくること、自然に命をつくること、どちらでも命はつくられるが、自然の摂理に則ってゆく方が、雪が先か海が先か、どちらにしても、人智を超えたところであって、もう成り行きなのではないか。 深澤うろこ「あそこで鳩が燃えています」。鳩が燃えていようが、誰も助けない、見物して、あーだこーだいっている。どうでもいい他人のことをいっている。飯を喰いお喋りしている。鳩は燃えている。これが日本か。どう

          BFC6一回戦全作感想

          どちらの道を選んでも私には幸福が訪れる(BFC6一次通過作)

          なまあたたかい血が流れており 照射されたひかりは青く 風が吹き 泣き止んだ赤子が 笑った くたびれた男が ふとしたはずみに あれが欲しい といった においが立ち籠め 黄色いにおいは甘やかで 希望のにおいでもあった まだ老いてはいない いくつになっても赤子のようなものだ こころが 軽い 風船のようにふわふわ飛んでゆく 正体を失った こころは確かである 犬が吠えた 大空へこだました 音は七色にひかり 公園でこどもたちがたわむれている声が反射する 通りがかった 老いた男はほほ

          どちらの道を選んでも私には幸福が訪れる(BFC6一次通過作)

          日記

           七時にアラームが鳴りなんの抵抗もなくスクッと起きました。睡いは睡いです。でもここで起きなきゃ誰が起きる。私です。ここで起きるのは私です。私だから起きれるのです。  一番最初にトイレにゆきます。用を足し、手を洗います。そして冷たい水で顔を洗います。眼が悪いのでコンタクトレンズを入れます。よく見えるようになりました。これで大丈夫です。電動歯ブラシで歯磨き粉を少しつけて歯磨きします。歯磨きの時間は短いです。しっかり磨きましょう。  毎日体重計に乗り体重を計りアプリに数字を入力しま

          迷宮だがや!

           地下街はよく迷宮だといわれる。名古屋の地下街も数ある迷宮の内のひとつに数えられるだろう。 「ここは何処だ?わたしは誰だ?」 「いや、織田さん、名古屋の地下街ですよ」と豊臣。「記憶喪失にならんといてくださいよ」 「こんなもん、記憶喪失にもなるやろ」徳川がいった。 「いやいやなりませんって」豊臣がいう。「名古屋の地下街きたらコンパルゆかないけませんって」  三人はあっちいったりこっちいったり迷宮を彷徨っていると『コンパル』の文字が眼に入った。 「ここは何処だ?わたしは誰だ?」

          迷宮だがや!

          本のさんぽみち

           秋に近づくと本のさんぽみちのことを思う。少し冷やっとした心地よい空気が肌にぴりっと刺さる。秋の匂いが鼻腔を突く。本の匂いと共に。少し古ぼけた懐かしい商店街では個性豊かな本屋さんが小さな店を開く。  商店街は昔からあるお店、新しいお店が混在しレトロモダンな風景を形成している。  名古屋駅側から円頓寺商店街へ向かうとひっそりとした雰囲気から入ってゆき、落ち着いた気持ちでどんどん進んでゆくと、金ぴかの像がある横断歩道に開け、そこを渡ると一気に人も増え賑やかになる。本好きな人々で溢

          本のさんぽみち

          告白

           若林くんははやく逃げたかった。だって臭かったからだ。異様に臭い。ちょっと鼻がやられてひん曲がるくらいだ。どうしようもない臭さだった。  しかしこの臭さがどこから漂ってきているのかは分からなかった。いや、嘘だ。分かっている。若林くんのティーシャツからだった。それは明確だった。  ティーシャツが臭いことは知っていたが、いや、大丈夫じゃね、と思って着ていた。小林さんに指摘されるまでは……。ティーシャツの臭さは実際大丈夫ではなかったのだ。みんな臭いと思っていたけれど、指摘できなかっ

          鼻の長い動物

          異様に鼻の長い動物がいる。なぜ鼻がそんなに長いのだろうと思う。鼻が長いって我々からしてみればとても滑稽だ。鼻が長くていいことあるのかな。もしやウケ狙いか。笑かそうとしてるのか。皆を笑顔にできるのは素晴らしい。我々も鼻を伸ばそう。我々の間で鼻を長くする整形が流行った。笑顔で溢れた。

          鼻の長い動物

          長さ大会

          長さを競う大会があるという。なんの長さを競うかは明確にされてはいない。出場者は各々の自信のある長さを携え参加してくる。なんの長さか分からないので競いようがないけれど皆自信がある。一センチの者とと十メートルの者が競い合った。一センチの方が勝った。単純に長ければいい訳でもないらしい。

          戦争反対

          長きにわたる戦争が終わった。人々は喜んだ。一方悔しがる者がいた。彼らは戦争ビジネスで儲けていた。彼らの生活は終わった。それでよかった。戦争というものはビジネスではない。命である。ビジネスは命ではない。ビジネスなどなくなってもよい。かわりはいくらでもある。命にかえはない。戦争反対。

          どうしようもなくなっている人を救う

          毎月あいつがやってくる 否応なしにやってくる あいつの存在を忘れてはいけない あいつは怖ろしい とんでもない痛みを与えてくる 死ぬ程の痛みを 死ぬ覚悟で受け止めなければならない いつもあいつの存在を忘れている あいつがこないときがどれ程らくか らくさに慣れてしまっている らくが当たり前だかららくじゃないときがとんでもなくしんどい あいつの存在を忘れている あいつがきたとき 地獄を見る 思い出させられる あいつの痛みを あいつは破壊者だ すべてを壊す あいつの存在を忘れてい

          どうしようもなくなっている人を救う

          くさくあれ

           この書物にはにおいというものがない。よい書物にはにおいというものがあり、芳醇な薫りがただよってくるものである。しかしながらこの書物といったらまったくにおいというものがせず、くさみさえなく、むしゅうなのである。書物においてむしゅう程つまらないものはない。それであるならばせめてくさくあって欲しかった。かぐわしい薫りがないにせよくさくてもよいのでにおって欲しかった。まだくさい方がマシである。なにかしらのにおいが欲しかった。  いっそのこととんでもないくさみでもいいからにおって欲し

          くさくあれ