手紙の味は神の味
手紙の味は神の味がします。
現代ではすこぶる旨いことを神というらしいですね。例えば、「このオムライス、マジ神!」のように……
わたくしは手紙をよく書きます。食べはしません。ゴートではないのですから……。しかしながら手紙はよく書きます。わたくしの手紙を読んでくださった方が、「この手紙、マジ神!」といってくれたら嬉しいですね。
神ということはすこぶる旨いということですから、わたくしの手紙もすこぶる「上手い」ということなのでしょう。ありがとうございます。
ところでわたくしを、誰ですか?とお思いでしょうか……はい、わたくしはゴッドです。神です。ゴートではありません。手紙は食べません。手紙を書きます。神が手紙を書きます。
神の書いた手紙を「マジ神!」といわれましても、わたくし、神ですから……当たり前ですから……神が書いた手紙なのですから……上手いに決まっています……旨いかは知りません……食べませんから……ゴートではないのですから……
いや、でも……わたくしがゴートだとして、紙を食べるとしたら、なに味だったら嬉しいのでしょうか? プレーンは紙の味でしょうか? 紙に味はあるのでしょうか? ティッシュを食べたことがあります。味はしませんでした。オエっとなってしまいました。わたくしはゴートに向いてないようです。ゴートなら紙を旨いと思うのでしょうか?「この紙、マジ神!」っていうのでしょうか……、紙が神……!
神が紙喰って「神!」っていう……
いやはや……、なにをいうているのでしょうか……
紙が旨い訳がないじゃありませんか。紙は神ではありません……紙は紙です。わたくしは紙です。旨くありません。神ではないので手紙も上手くありません。
手紙の上手さで味は変わるのでしょうか?……。上手い程旨いのでしょうか? 旨いというのか、味の種類が手紙の数だけあるということでしょうか? おそらくそうでしょう。ゴートは手紙を食べますが人間は食べません。しかし読みます。文章を味わうといういい方もあります。あながち間違っていないのかもしれません。人間も手紙を食べます。この手紙は甘いとか辛いとかしょっぱいとか苦いとか旨いとかありますよね。これらは大枠の味で、まあ食べ物と一緒で完全に同じ味の食べ物はなく、それぞれ微妙に異なった味がします。手紙の味とは面白いものです。
嬉しい手紙、悲しい手紙、イライラする手紙、喜ばしい手紙などなど感情を動かされます。感情と味覚は繋がっているのかもしれません。どうでしょうか? 嬉しい楽しいときは旨いのでしょうか? 悲しいイライラするときは不味いのでしょうか? いやどうでしょう? 分かりません……
手紙の旨さはなにで決まるのか? おそらくではありますが、心が動くかどうか、なのではないでしょうか?
例えば、記念日に貰う手紙など、心を動かされます。泣いてしまいます。心から相手を想い紡がれた文章は心を動かします。心が心を動かすのです。心で書かれた手紙は心を繋ぎます。心の繋がりが大切なのです。
手紙というものはなかなか難しいものですが心で書きたいものです。しかしなかなか難しい。やはり相手を想う思いやりが大切ですね。自分よがりではいけません。文章が得意な人程自分のことを書いてしまいがちです。気をつけましょう。自分よがりにならず相手のことを想って書きましょう。どんなに下手な文章でも心のこもっている文章の方がわたくしはよいと思います。よいというのは「好い」です。好きなのです。好きという気持ちは強い。「好き」は尊いのです。
旨いというのは好きということなのかもしれません。上手いけど好きではないということもあります。旨いけど好きではないは余り聞きません。好きな味ってのは旨いのです。神です。てことは好きは神です。
好きな人はいますか?
いるのでしたらその人は神なのかもしれません。神はいい過ぎでしょうか? 余り神格化してしまってもいけません。でも恋愛していたときのことを思い出してください。好きな人は神ではありませんでしたか? わたくしは好きな人は神でした。もうどうしようもなく神でした。その人を目の前にするとどうしていいものか、もうきょどきょどしてしまってろくに喋ることもできませんでした。
好きという気持ちを忘れたくないものです。神だったあの人の記憶は永遠なのです。恋に恋い焦がれたあの頃の日々。神だと思ってた人がわたくしのことも神だと思ってくれていた。神同士だった訳です。
わたくしはもういても立ってもいられず、愛の手紙を書きまくりました。もう内容は神神神と神連発で、絶対に見られてはいけない内容でございます。見られたら恥ずかし過ぎて死にますね。
お相手の神にも手紙を頂きました。もう大興奮でありました。手紙というものはいいものです。わたくしはお相手の神の手紙を食べました。「マジ神!」と叫びました! 心と心が通じ合ったのですね。奇跡です。
最後になりますが、実は、こちらの文章は今読んでくださっているあなたへの手紙なのであります。どうでしょうか? 神でしたか? 神であって頂きたい。「マジ神!」でしたらもうなにもいうことはありません。感謝の気持ちで一杯です。心が通じ合ったということです。
しかし、いやはや奢りは禁物です。過信してはいけません。好みも千差万別。わたくしの手紙が届かないという方もいるでしょう。
わたくしは神ではなく紙です。
紙の書く手紙は旨くありませんよね……
いやはや……いやはや……
あなたへ 神より 2021.6.19