詩集 鯨のような雨
電波
文脈が走つて
薙ぎ倒した
エレキテルの閃きは
空気を震わせる
波の音
打生
体のダルみが強い
部屋の光
えいやっさえいやっさ
川の流れに身を任せ
血流がどくどくと通い
今宵わたくしは消えかけの魂を
奮い立たせ
脳の働きが鈍く
朦朧とした意識で
スマホに
『生きたい』と打ち込む
消えてゆく死
生で溢れている!
描かれた死が消えた
どこへいった
あれ程までに充満していた死が!
泉のように湧き出てきた死が
枯渇した
黄泉の国へのゆき方が分からなくなってしまった
死が迷子だ!
死よ、どこへいった!
死にたい死にたい死にたい
あの呪いはなんだったのか?
もしや死は……
夜の宴
落日がおえつする
おえつする理由がない
夜がはじまるのだぞ!
よろこべ!
わたしたちの時間だ
ゆらゆら街を闊歩しよう
すり抜けすり抜け
寝静まった街で誰にも聞こえない声で宴がはじまる
わたしたちは騒ぎに騒いだ
警察だって分からない
人間達が起き出す頃わたしたちはすーっと掻き消える
白夜
白夜かと思った
iPhoneのカメラが撮った写真は
不思議だ
天国のような靄のかかった
白が漂い
夜を明るくする
川原でパリピが騒いでる
闇の音が白い
みなが寝静まった頃わたしは起き出す
真夜中の静けさがわたしを活動的にさせ
わたしの時間が始まる
昼は煩すぎます!
耳が痛い
脳が騒がしい
気ばかり張って疲れる
夜がとろけだして音が消える
昼がもっと静かであればいいのに
白い光がすべての音を吸収しわたしは目覚める
真夜中の輝き
真夜中の深海魚の目は爛々と輝いている
深夜の輝きは
創作に火を灯す
燃え出した創造力は
無限の宇宙を出力し
海は底から光り出し燃え盛り
赤と黄の混じり合った橙色の輝きが
海面にまで光を到達させ眩しく真夜中を輝かせる
桜の巨木
犬か吠えている
猫が通りかかった
暗闇に聳え立つ桜の巨木
美しさに圧倒され
聲を失った
走る車のライトに桜が照らされ
銀に輝く
闇は深まり
桜が光る
辺りは静まり返り
沈と桜の巨木が佇むばかり
グレージュ頭
ぼんやりがキマっている
視界はうすもやでグレージュ
パンダの白黒が羨ましい
わめき散らしたい程の睡気に襲われてバッキバキの眼でスマホを凝視している
ここはどこ? わたしはだれ?
記憶喪失になりながら街を彷徨っている
頭がチカチカする
今にも夢の世界へ弾け飛びそうだ!!
噴出する明日
墓が白く踊っている
一定のテンポで悲しみが襲いかかって
ふとした瞬間に雷が弾ける
飛んできた弾丸は頭を撃ち抜き
ふらふらしたステップで明日を見る
明日は何色か?
ピンクとグレー
どっちにしろ淡い
薄ぼんやりした毎日を睡気眼で
真っ直ぐ見据えた明日へと
駆けるように草がぼうぼう
消えそうに
消しゴムで消えない文字が永久にふたつの赤と青のインクが混ざり合ってマーブル状になっている
まだ赤い部分と青い部分と混ざり合った紫になっている部分が面妖にぬらぬらしている
記憶のようだ
泉が湧き出ている
小さな人の形をした水がわらわらと
飛行機雲が長く白が濃い
黒い鳥の影が
鯨のような雨
鯨のような雨が降つている
泣いているのはたれだらうか
灰色が支配する町の
ぽつねんと佇むプレハブ小屋の一室で
静寂と昼飯を喰う
飯は冷たい
こころも冷たい
鯨の巨きさにのみ安心する
神の行い
飴色の川が氾濫している
鳥が五羽飛んでいる
踏み止まつた心は腑抜け
もし星が輝いたのなら
遅かれ速かれ消える運命なのだ
間違つたことはしていない
運命には逆らえない
だが運命はどうとでもなる
天から神様が覗いていて
行いを見、吟味してる
神は白紙に戻しやがつた!!
十五億キロ離れた星
土星をおもう
二階のベランダから
風がひと吹きし顔をなぜた
ふっと笑った
蒸し暑い空気
ところどころ空に雲
担々麺がたべたい
もうすぐ死ぬのかな
土星人たちはなにをたべるのだろう
まさか地球人ではないよな
土星はここから十五億キロ
あんなとこにはなにもいやしないよ
世界の終わりを見届けたいからという理由でただ生きている人
屋根が消えました
暴風が吹き飛ばし空に赤
レンガは積み上げられ
砂を一握りさらさら掌からすべらせました
消えたのは心もです
遠からず消滅する世界
世界の終わりを見届けたいから生きているだけです
なにを諦めなにを得る
珈琲に影が落ちた
深い湖から出で現れたミルク
甘く苦い生活に慣れ親しんで
耐え忍ぶ
しあわせのために
なにを諦め
なにを得る
エイリアンも吃驚の選択
珈琲豆を買うのをやめよう
あなたのもの
手に入らなかったものがある
すべては巡り合わせ
それはあなたのものではなかったのだ
手に入ったものがある
すべては巡り合わせ
それはあなたのものだったのだ
見いだされるとき
永久のコバルトブルーが燃え盛っている
二人はそらを睨みつけた
形相はおだやかであるが
今にも泣き出しそうなあんばいで
鏡がぱりんと弾けた
緑色の液体が流れ出し
空気が酸化し重量を感じた
かがやきの中から悩みが抽出され
常に保留状態
見いだされるときは見いだされるのだ!
夏休み
夏の流れがとんでもなくはやく
睡っていた時が暴れ出した
旅人は鯨に乗り
宇宙へいった
深々とお辞儀をして
故郷を出た
期待に胸膨らませて
揚々旅だった
旅人は期待以上の収穫を得
一回り大きくなって帰ってきた
嗚呼
夢が終わった
明日からサラリーマンだ
世界の回転
たぶん泣いている
まったく泣いていないのに
世界の回転がこわくて
こわさは滲む
うっすらとくっきりと
ふかふかの深みにはまり
ちょっぴり眠る
ちょっぴりが冬眠だった
目覚めると
ぼさぼさの毛で
記憶喪失になりながら
あたらしい世界の回転に
廻らせて頂く
回転軸はわたくしであります