くさくあれ
この書物にはにおいというものがない。よい書物にはにおいというものがあり、芳醇な薫りがただよってくるものである。しかしながらこの書物といったらまったくにおいというものがせず、くさみさえなく、むしゅうなのである。書物においてむしゅう程つまらないものはない。それであるならばせめてくさくあって欲しかった。かぐわしい薫りがないにせよくさくてもよいのでにおって欲しかった。まだくさい方がマシである。なにかしらのにおいが欲しかった。
いっそのこととんでもないくさみでもいいからにおって欲しかった。においがあることが重要なのである。むしゅうは本当にいけない。よい書物程におうのである。この書物といったらにおいがなさ過ぎる。このような書物など存在する価値がない。書物をつくることの凄さは理解している。書物を書くということは如何程の労力がかかっていることか。その人の全力がこめられているものだ。しかしだ。しかしこの書物といったらくさくもない!いいにおいとまでゆかなくても、くさくあってくれ!せめて!くさく!この書物はくさくもない!なぜくさくないのだ!くさくしやがれ!
すみません。取り乱しました。余りものむしゅうにキレてしまいました。いけませんね。しかしくさくもない。まったくにおわない。そのような書物が存在してよいのでしょうか。書物をしたためるときにしかと確認をして頂きたい。においを必ず嗅いでくれ。どれ程におうかが良書のバロメーターなのであるから。においチェックをしてから出版してくれ。
確かに高級珈琲の薫りはなかなか難しいかもしれない。なかなかにおいというものを出すには、天性のセンスとたゆまぬ努力が必要であろう。まあ簡単ではない。しかしくさくするのは簡単ではないか。ほっておけばくさくなるものである。くさくないということは手入れをしているということである。洗っているということである。くさみを消しているとしか考えられない。くさみは消さなくてよいのである。くさみはにおいを纏わすことができ、においが書物のよさであるのだから。くささを活かして欲しい。くさみを消すな!くさみがあなたの強みなのだから。
書物をしたためるのであるならばにおわせてください。においを意識してください。良書は必ずにおいます。においこそがよい書物の証明である。よい書物というのは隠そうとしてもにおってくるものだ。芳醇な薫りがむわっと鼻腔をつき噎せる程のものもある。
だがこの書物といったらむしゅう。くさくないよりマシだと思っていませんか。とんだ間違いです。書物においてはむしゅうはなんのよさもない。清潔感?んなもん書物にはいらない。清潔感のある書物というのはむしゅうではなくミントの薫りがすんだよ。分かるか。ミントだよ。
あなたの書物はまったくにおわない。ストレートにいってあげよう。つまらない。そう。つまらないのです。読む価値なし。ふつう過ぎなの。だったら無茶苦茶でもいいからぶちかましてくれよ。なんでもいいからさ。はっちゃけてよ。ただ上手いだけの平均的な書物なんだよ。そんな書物は溢れすぎていていらない。におわせてくれよ。くさくてもいいから。くさくあってくれよ。納豆目指してくれよ。むしゅうの書物なんて納豆以下なんだよ!あなたの書物は納豆以下!
もっとくさい書物を書いてください。よろしくお願いいたします。