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書籍紹介

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本(マンガを除く)を紹介した記事をまとめました。
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記事一覧

最高。以上。『シャーロック・ホームズ対伊藤博文』

最高の歴史ミステリに出会ってしまいました。

……いや、そもそもそんなに歴史ミステリ読まないので、これは言い過ぎかもしれません。とにかく先日、タイトル(のみ)に惹かれて手に取ったミステリが最高に面白かったのです。それがこちら。『シャーロック・ホームズ対伊藤博文』です。

この作品、タイトルがタイトルだけに、ふざけてるのかと思いきや、かなり重厚なミステリ作品でした。内容としては幼少期のシャーロック・

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ファンタジー×本格ミステリ

今回は、ファンタジーの世界観と本格ミステリを融合させた意欲的なミステリ小説を2作、紹介します。
本格ミステリとは、読者に探偵が持つ手がかりを全て明らかにするタイプのミステリー小説のことで、物語としての面白さに加えて読者自身が推理して犯人を当てる謎解きクイズ的な楽しみ方ができます。
そこに、我々の生きる世界には存在しない魔法や魔道具などのファンタジー要素が入ってくる。つまり読者は魔法の存在をあらかじ

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世界を変えた「箱」の話

どうも。今回紹介する本は『コンテナ物語』です。

何ヶ月か前にひろゆきとかが紹介してて、話題になってた本です。けっこうページ数多くて読むのに時間がかかってしまいました。

コンテナの発明が世界の流通を根底から変えてしまったことを明らかにしつつ、企業家や会社や港や労働者が、その変化にどう対応したか(もしくは振り回された挙句に没落したか)をかなりしっかりと書いた本です。
とにかくいろんな登場人物が出て

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全然宇宙に飛び立たないゴリゴリの宇宙SF

今回は僕が一番好きなSF小説を紹介します。SFの名作ランキングなどでよく上位に来るので知ってる人も多いかもしれません。『星を継ぐもの』です。

この作品、めちゃくちゃ名作でとても面白かったんですが、初めて読んだとき結構意外だったんですよね。「いや、いつまで地球におるんじゃい」と。

物語は月面で「宇宙服をまとった5万年前の人間の死体」が発見されるところから始まります。細かいストーリーは書きませんが

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十三世紀のハローワーク

今回紹介する本は『十三世紀のハローワーク』です。タイトルは村上龍の『13歳のハローワーク』のパロディですね。この本、一言で表すと、中世(ヨーロッパに限りません)の時代の職業紹介本です。

本のテイスト自体は、中世の職業をゲームキャラ風のイラストとともに、ゲームの設定資料風に紹介するという、大変ポップなものです。強さのチャートとか、固有スキルとかゲームっぽい設定が職業ごとに考えてあって、その説明の文

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存在しない動物の図鑑

今回紹介するのはイラスト集『CREATURES 山村れぇ作品集』です。作者の山村れぇさんは、この世に存在しない想像上の動物(クリーチャー)を中心に描かれるイラストレーターさんです。この本はそういった動物がひたすら出てくる動物図鑑のようになっています。

僕はコミックマーケットに行くと必ずクリーチャーとかドラゴンのイラストのエリアを見に行くんですが、そこであまりのクオリティの高さに衝撃を受けた作品が

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生物学者が幻のうなぎを求めてアフリカで大冒険する話

どうも、記事タイトルがなかなかカオスな感じになっていますが、今回紹介する本の内容を要約すると、このようにならざるを得ないのです。今回紹介する本は『アフリカにょろり旅』です。

この本は生物学者でウナギの研究が専門の青山潤氏のエッセイで、2007年に講談社エッセイ賞も受賞しています。

ウナギという魚は実は謎につつまれた魚で、例えば我々が食べているニホンウナギの産卵がどこで行われているのかも長年分か

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「ダメ」だけど面白い建築のガイドブック

今回は『メイド・イン・トーキョー』という本を紹介します。この本は東京の建築物、それも著名な建築家が造った一般に「良い」とされる建築物ではなく、建築学やデザインの観点からは評価されない、むしろ「ダメ」な建築について扱った本です。

東京という都市が急激に成長していく中で機能や効率を重視した結果生まれた、本来隣り合わないもの同士が隣り合ったり、珍妙な形をしていたりする建物たち。この本ではそんな建物に少

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会計クイズが楽しい

ちょっと前から「企業の決算書とか読めるようになったら面白そうだな」と漠然と感じていたのですが、そういう本をついこの前見つけました。『世界一楽しい決算書の読み方』という本です。

作者の大手町のランダムウォーカーさんは、以前からTwitterで「会計クイズ」という企画をしていた人で、この本はその会計クイズを解きながら決算書の基本的な内容を学べるようになっています。ちなみにイラストはTwitterで有

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通史として「オカルト」が分かる

現在「オカルト」と呼ばれているジャンルには、超能力やらムー大陸やらアトランティスやらUFOやら爬虫類型宇宙人やら、一見関係の無い色々なモノが含まれていて、結局のところ「オカルト」が何を指すのか、よく分からなくなっています。

そんなよく分からない「オカルト」を、オカルティストでない研究者が、ひとつなぎの歴史として客観的に紹介しているのが大田俊寛『現代オカルトの根源 ー霊性進化論の光と闇』です。

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サカナとヤクザ

たまたタイトルがヤバい本の紹介です。

違法薬物などについての議論で「個人で楽しむだけなんだから別にいいだろ」という主張に対し、必ずされる「ヤクザの資金源になるからダメ」という反論がありますが、この本を読むと明日からそれが言えなくなってしまいます。

タイトルからも分かりますが、この本は、日本の漁業や水産物市場が、実はヤクザの大きな資金源になっているということを、現場への取材などから明らかにした本

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死にゆくアップル社(死ななかった)に向けた弔辞を読む

※オススメ本として紹介しようとした『アップル ー世界を変えた天才たちの20年ー』という本について、すでに4年前に別のブログで紹介していました。これはその記事を一部書き直したものです。

今回紹介する本は『アップル ー世界を変えた天才たちの20年ー』。アップルとはもちろんあの、iPhoneとかマックブックとかで有名なアップル社です。この本はそのアップル社の創業から、出版当時の1998年までを膨大な記

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オタク、歴史の証言集

実は自分は80年代〜90年代、日本のオタク黎明期のコンテンツ業界についてとても興味があって、ここ数年ちまちま調べているのですが、その過程で見つけた本をいくつか紹介します。主に同好の士への情報共有として。

岡田斗司夫『遺言』ガイナックス元社長、通称オタキング岡田斗司夫の自伝的エッセイです。学生時代のSFファンとしての活動や庵野秀明らとの出会い、アニメ会社ガイナックス設立から退社までの流れが語られて

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名前しか知らない「〜ショック」の意味がわかる

今回は世界経済についての本の紹介です。「〜ショック」「〜危機」と名付けられるような経済史上の大事件がいくつかありますが、名前はなんとなく知っていても事件の内容はよく分からない、というものが多いのではないでしょうか。そのような経済史上の大事件を分かりやすくまとめた本が『12大事件でよむ現代金融入門』です。

解説されている事件は、年代順に

ニクソン・ショック
中南米の累積債務問題
プラザ合意
ブラ

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