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わたしの本棚

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#文藝春秋

わたしの本棚153夜~「旅をする木」

わたしの本棚153夜~「旅をする木」

とにかくスケールが大きいエッセイでした。アラスカを舞台にして、自然、仕事、仲間、生き方・・・どれもスケールが大きく、哲学的な思考もあって、面白く読みました。上質の珈琲を飲んだときのような心地の良い読後感で、ページをめくるのが惜しくなる、終わってほしくない、ずーっと読んでいたい気持ちになるエッセイ集でした。

☆「旅をする木」 星野道夫著 文藝春秋 1500円+税

 文藝春秋11月号の巻頭エッセイ

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わたしの本棚149夜~「夜に星を放つ」

わたしの本棚149夜~「夜に星を放つ」

 芥川賞は文藝春秋で、直木賞はオール読物で、選評を参考にしながら読むのですが、今年は、近所のママ友さんが、「夜に星を放つ」を直木賞発表時に購入して読み終わり、早々に貸してくれました。読書家の彼女からは、「いい話だけど、短編集で、直木賞としては物足りないかな」というメッセージつきでした。

☆「夜に星を放つ」 窪美澄著  文藝春秋 1400円+税

 連作ではなく、独立した5編の短編集です。コロナ禍

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わたしの本棚128夜~「嫌われた監督」

わたしの本棚128夜~「嫌われた監督」

 凄い本でした。落合監督の言動に、筆者の鈴木氏だけでなく、読んでいる方まで少し緊張してしまうというか。野球をそんなに知らなくても、中日ドラゴンズの選手に詳しくなくとも、各章に人間ドラマがあり、組織のなかの個人の捉え方の考察につながり、面白かったです。落合監督の言葉は、人間の観方、生き方への格言でもありました。

☆嫌われた監督「落合博満は中日をどう変えたのか」鈴木忠平著 文藝春秋

2090円

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わたしの本棚119夜~「彼岸花が咲く島」

わたしの本棚119夜~「彼岸花が咲く島」

 昨年韓国映画「マルモイ」を観て、母国語を変えられた人たちの悲痛な叫びを知り、今年、日本統治下の台湾でも日本語の強要があったこと知りました。そして、今回の芥川賞受賞作。二ホン語、女語が入り混じり、女性の統治と島全体が共同体のような架空の島を舞台にしたこの小説。読み応えありました。今回、文藝春秋9月号は、芥川賞2作品の全文掲載、選評もあってお得でした。

☆「彼岸花が咲く島」 李琴峰著 文藝春秋9月

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わたしの本棚116夜~「知的ヒントの見つけ方」

わたしの本棚116夜~「知的ヒントの見つけ方」

 立花隆氏が亡くなってから、追悼特集がテレビやネット、雑誌、本などのメデイアであり、近くの本屋さんや図書館も追悼コーナーが設けられています。そんなか、手に取った1冊です。文藝春秋の巻頭を飾った随筆(2014年8月号から2017年12月号)、特集記事と別のメデイアに頼まれて話をした記事をまとめた構成になっていました。

☆知的ヒントの見つけ方 立花隆著 文藝春秋 文春新書 920円+税

 「知の巨

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わたしの本棚109夜~「在宅ひとり死のススメ」

わたしの本棚109夜~「在宅ひとり死のススメ」

 今年は、在宅死に関する書籍、映画が話題になっています。長尾和宏先生の「痛くない死に方」(高橋伴明監督で映画化)、南杏子先生の「いのちの停車場」(成島出監督で映画化)どちらも医師の立場から在宅死の在り方、終末医療のあり方を問う作品で、読みごたえ、観ごたえありました。どんどん高齢化社会になっていく日本では避けては通れない問題です。そして、おひとりさまの立場から、上野千鶴子先生が書かれたのが「在宅ひと

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わたしの本棚98夜~「なんで家族を続けるの?」

わたしの本棚98夜~「なんで家族を続けるの?」

 面白かったです。樹木希林と内田裕也の娘として、家族団らんを知らずに育った内田也哉子。両親の不和で、巨大なブラックホールを抱えて思春期を過ごした中野信子。両親が仲良く、子どもがふたりぐらいいる、というのを理想の家族とする日本の、家族の模範形態。異議あり。いろんな家族のあり方を問う、多様な家族形態のなかでの幸せの追求、自身の家族をセキララに語るふたりの対談集です。

☆「なんで家族をつづけるの?」内

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わたしの本棚96夜~「ナイルパーチの女子会」

わたしの本棚96夜~「ナイルパーチの女子会」

 ママ友さんから薦められて読みましたが、わたしには熱量の大きい本でした。読みやすい文章で、スラスラと一気に読めますが、女性同士の悪口を言うのを聞いている感覚もあって、読んでる最中は、少々疲れてしまいました。それでもラストは希望ともとれ、ちょっとほっこりでした。

 水川あさみ主演でテレビ東京でドラマ化もされて、放映中とのこと。今月は、岨手監督「あのこは貴族」も観ました。どちらも、女性の友人、分断、

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わたしの本棚94夜~「満月珈琲店の星詠み」

わたしの本棚94夜~「満月珈琲店の星詠み」

 「読書の秋2020」で気になっていた課題図書です。京阪沿線沿いと京都市街が小説の舞台になっており、わたしの生活圏であることもあって、手にとりました。2000年代に流行ったケータイ小説を思わせるような、改行が多く、WEBのような、さくさくと読める文章でした。

   画像はApple bookさんのを借りました。 

 あとがきを読むと、SNS世代ならではの小説。占星術好きな作者がSNSで西洋占星

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わたしの本棚89夜~「推し、燃ゆ」

わたしの本棚89夜~「推し、燃ゆ」

 画像は朝日新聞のasahi.comからダウンロードしました。今回、芥川賞受賞作であり、文藝春秋3月号を購入して、選評と一緒に読みました。

 面白かったです。アイドルとは違って、「推し」というもの。現代のオタク文化にも広がるような感じで、一気に読みました。わたし自身、「推し」がおらず、ここまで思える対象があるのは、ある面、うらやましく思いながら読み進めました。

☆「推し、燃ゆ」 宇佐見りん著 

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わたしの本棚85夜~「女帝 小池百合子」

わたしの本棚85夜~「女帝 小池百合子」

 すごい本でした。読み終えて、むなしさを感じてしまいました。ここまで書くか、と。女性が働くこと、働いて権力をのぼりつめるのは大変なことです。わたし自身は、小池百合子さんに対して、ブラウン管の中での作られた顔しか知らないせいか、そんなに嫌悪感はなかったです。むしろ、女性初が続く人なので、応援していました。コロナ禍でも毎日、東京の状態をメデイアに伝え、正月も返上して知事の仕事をされている姿に、発言内容

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わたしの本棚17夜~「ファーストラヴ」

わたしの本棚17夜~「ファーストラヴ」

 子どもは親を選べない。完璧な親などいない。子どものためと思ってのことが深い傷になってしまうことがあったり、親の価値観が子どもを傷つけたり。傷つけられた子どもたちの慟哭を思うとき、切なさと哀しみとそれでも生きていかなくてはならないどうしょうもなさを思いました。

☆ファーストラブ 島本理生著(文藝春秋)1600円+税 

父親を刺殺した女子大生環奈、両親から心に深い傷を受けて育った臨床心理士の主人

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わたしの本棚13夜~「少年と犬」

わたしの本棚13夜~「少年と犬」

芥川賞と直木賞作品は、発表されると読みます。大阪女性文芸賞の下読みに関わっていることもあり、毎回、選評も読むようにしています。プロの選考を学べます。だから、受賞作品が「文藝春秋」や「オール読物」に全文掲載してくれると一度に両方読めてありがたく、嬉しいです。「少年と犬」は、今年下半期の直木賞作品でした。

☆「少年と犬」 馳星周著 文藝春秋 1600円+税

 馳星周氏の作品は、「不夜城」シリーズと

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わたしの本棚1夜~「夏物語」

わたしの本棚1夜~「夏物語」

 今日から、読んだ本で心に残っているものを書き留めていこうと思います。原則として今年読んだ本で近年発売のもの。怠けものなので、縛りで毎日書きます。(続けられるかな・・・)

☆「夏物語」川上未映子著、文藝春秋 1980円+税

 面白かったです。物語の主題はAID(非配偶者間人工授精)の話なんだけれど、それ以上に不謹慎かもしれないですが、明るい貧乏のエピソードが素晴らしかった。主人公夏子さんは大阪

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