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わたしの本棚17夜~「ファーストラヴ」

 子どもは親を選べない。完璧な親などいない。子どものためと思ってのことが深い傷になってしまうことがあったり、親の価値観が子どもを傷つけたり。傷つけられた子どもたちの慟哭を思うとき、切なさと哀しみとそれでも生きていかなくてはならないどうしょうもなさを思いました。

☆ファーストラブ 島本理生著(文藝春秋)1600円+税 

父親を刺殺した女子大生環奈、両親から心に深い傷を受けて育った臨床心理士の主人公由紀、ネグレクトの母親に殺されかけた弁護士迦葉、三つの家族それぞれの親がしてしまったことは、子どもにとって、罪深いことでした。
親の間違った価値観の下で育った子どもは、どこに救いを求めるのでしょうか。といった重いテーマが根底にあり、容姿端麗ゆえに、いつも性の対象としか見られなかった環奈という女子大生の父親刺殺という救いの方法。

「動機はそちらで見つけてください」といって世間を挑発し、父親を刺殺した容疑で逮捕された環奈の過去を辿る由紀と迦葉。環奈と面会を重ねるうちに、自分たちの過去の傷とも向き合うことにもなります。環奈は本当に父親を殺したのだろうか、というミステリーの調べの中、裁判で明らかにされる

事実に、哀切とやるせなさを感じてしまいました。疾走感あふれる展開は、一気に読ませます。堤幸彦監督、北川悦吏子主演で映画化され、来年(2021年)公開されるそうで、それもまた楽しみな作品です。直木賞受賞作品。

#読書の秋2020 #ファーストラヴ #島本理生 #文藝春秋 #直木賞 #堤幸彦 #北川悦吏子



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