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ぼくのポエム

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自分で書いた詩をまとめました。 過去作も含みます。 下書き的な側面もあります。 最後の方にその詩を書いた経緯なども載っています
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#散歩

【詩】 深夜奇行

街で暮らす

夢の演出家たちは

手軽に感動できる寝物語を探し求める。

せわしない親指の往復運動の末に見つけた

輝かしい文字列。

そこに吸い寄せられた群衆の一部になることで

どこか満たされた気になって

「私も幸せだ」と

自分に言い聞かせて眠りにつく。

今宵もいい夢を見られるように。

僕も躍起になって美談を探す。

しかし不思議と目は冴えて

仕方ないから

少し街を歩くことにした。

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【詩?】 僕の愛する『牧野ヶ池緑地』!!

【詩?】 僕の愛する『牧野ヶ池緑地』!!

僕の近所には緑地がある。
江戸時代に灌漑用に作られた人工池と,それを覆い隠すように茂る雑木林から成るその地を,人は『牧野ヶ池緑地』と呼んでいる。

僕の住んでいる名古屋市名東区は都会と言い切るにはやや味気ない部分がある。しかし,容易く喧騒を遠ざけることができるほど慎ましい街でもない。
だからこそ,手っ取り早く自然を感じることが出来るその場所が昔から好きだった。

アスファルトの浮いた遊歩道を歩く。

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[詩] 春の陽気

春の陽気に煽られて
ゆらりと蠢く青年が一人。

春というだけで幸せになれるほど
僕は子供じゃないが
陽気に惑わされずに済むほど
僕は大人ではない。

日差しが
確かな重量をもって
僕にもたれかかっている。
微かに滲んだ汗を媒体にして
他の季節の記憶を思い出そうとした。

卯月の大気は気まぐれで
僕の身体を渇いた風で冷やしたかと思えば
翌日には
汗腺の機能を試したりする。

あの寒い日々は
何故か遠

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[詩] 夜の色

雨粒が
光を反射して
街は白い膜に包まれた。

やがて大気が落ち着ついて
街が雨と闇で黒く染まった頃
僕は外に出た。

夜は毎度訪れる。
それは確かな事だ。

昼間の豊かな色彩を,闇が黒く塗りつぶす。
人気のない雑木林で,淡々と歩みを進める僕の身体も輪郭を失い,やがて闇と一体化する。

街灯は,殆ど無い。
手に持っている小さなLEDライトで足元を照らす。

照らした地面だけが,明け方の色を取り戻す

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【詩】 季節めく、、、

最近日常が崩れている
昨日が今日で,今日が明日。
時計は時を刻む。暦は日々を区画する。
それらの明確な境界が,日常の骨格である。

しかし僕はそれに従わない。
布団に入り,意識を手放すその瞬間までが,僕の「今日」である。
布団から出て,部屋の明かりを点けてからが僕の「明日」である。
時計,暦,ニュースキャスターの声,排気音,日光,
僕はそれらに従わない。

コロナウイルスの流行で僕らの日常は停滞し

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[詩] 柔らかな堆積

[詩] 柔らかな堆積

奔放な光の縁に
流れた涙の軌跡を見た。

背中に春風の圧力を感じ
それを頼りに僕は歩く。

会話を飾り立てることが苦手な僕は
俯瞰で眺めることでどうにかその場に留まろうとした。
湧き出た感情の綺麗な部分だけを掬い上げて
彼等の作品と交換した。
醜い残骸は小さな部屋にしまっておいて、たまにこうして見返したりする。

草木が風に煽られてザワザワと身を寄せ合っている
荒々しく響くその音色は
静寂をより確

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