[詩] 春の陽気

春の陽気に煽られて
ゆらりと蠢く青年が一人。

春というだけで幸せになれるほど
僕は子供じゃないが
陽気に惑わされずに済むほど
僕は大人ではない。

日差しが
確かな重量をもって
僕にもたれかかっている。
微かに滲んだ汗を媒体にして
他の季節の記憶を思い出そうとした。

卯月の大気は気まぐれで
僕の身体を渇いた風で冷やしたかと思えば
翌日には
汗腺の機能を試したりする。

あの寒い日々は
何故か遠い昔のことのようで
あの暑い日々は
実体のない未来のようだ

「春はもっと穏やかなはずなのにな。」

季節は変わった。不自然なほどに。




寒くなったり,暑くなったり。なかなか気温が安定しない日々が続いている。

外に出て「寒い」と思うことや「暑い」と思うことは,最近の体験であり,確かな実感を伴っているのだけれど,夏や冬の激しい寒暖は実感の欠いた遠い記憶のように思える。

蝉の声,雪の白さ。

それらを思い出すのは簡単な事ではない。という詩。

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