【詩】 深夜奇行
街で暮らす
夢の演出家たちは
手軽に感動できる寝物語を探し求める。
せわしない親指の往復運動の末に見つけた
輝かしい文字列。
そこに吸い寄せられた群衆の一部になることで
どこか満たされた気になって
「私も幸せだ」と
自分に言い聞かせて眠りにつく。
今宵もいい夢を見られるように。
僕も躍起になって美談を探す。
しかし不思議と目は冴えて
仕方ないから
少し街を歩くことにした。
そこで僕は
慎ましい光に照らされた
寂しい命の影を見た。
ゴミを漁る野良猫も
薄汚れた街灯にすがる蛾も
静寂の中で身を寄せ合う雑草も
狂ったように点滅する信号機も
きっと、元々は僕のような孤独な人間だったのだ。
僕には僕の孤独があって
それは無生物でも同じだろう。
言語すら
種族すら
生命すら
超越する深い哀しみ
孤独ゆえに求めあう
そんな風なことを
ある有名な詩人が言っていたのを思い出す。
僕もこの
香り立つ出合いに誘われて
夜の街を歩いているのだ。
今宵はいい夢を見られるように。
奇行と紀行をかけています。(大嘘)
散歩は好きですが、趣味と呼べるほどではありません。
深夜の宛のない散歩(徘徊といった方が適当かもしてない)も東京に来てからはしていません。
作中で言っている「有名な詩」は谷川俊太郎さんの『二十億光年の孤独』です。
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