(短編小説)ヨーグルト、ベーグル、メープルはため息を逃がさない
「殺し屋がここへやってくる」
妻が子供の世話をやめた。
私は自分の子供の名前をまだ思い出せない。
確か、マイケルだか、ヨーグルトだか、ベーグルだか、メープルか、それ以外の何かだったはずだが所詮役割をもたない由来からとった名前だった気がする。
おそらく4歳を迎えたであろう息子に今改めて名前を付けなおすとするなら何にするだろう。誰に似たのか間の抜けた表情で、柔らかい朝の陽光を一身に浴びながら、私の妻の、母という手と愛情に満ちた張りぼてを享受している息子の名前は『1973』年に