KaoRu IsjDha

1980年生まれ、2002年よりチェコ在住。絵描き、その他ワラジ数足。ポートフォリオ https://kaoruishida.com noteの連載から生まれた小説の本はhttps://dinoru.booth.pm で販売中

KaoRu IsjDha

1980年生まれ、2002年よりチェコ在住。絵描き、その他ワラジ数足。ポートフォリオ https://kaoruishida.com noteの連載から生まれた小説の本はhttps://dinoru.booth.pm で販売中

マガジン

  • その名はカフカ V

    長編小説『その名はカフカ』収納箱その⑤です。その④はこちら→https://note.com/dinor1980/m/m3bce3df2f830

  • 『その名はカフカ』の紙の本

    長編小説『その名はカフカ』が紙の本になりました。本を作るにあたっての諸々についての拙記事やご紹介いただいた御記事を納めています。

  • 墨で鳥-水墨画練習帳

    水墨画、特に鳥の絵の記事の収納マガジンです。

  • ワタクシゴト漫画集

    筆者が主人公の四コマ漫画や、筆者の分身である浦島Ru太郎とカメさんの漫画が集めてあります。

  • ワタクシゴト雑記集

    自分自身の日常・非日常、他のマガジンには分類できなさそうな日記的なものを放り込んでいるマガジン

最近の記事

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その名はカフカ・総目次

2023年一月にnoteで連載を始めた長編小説『その名はカフカ』。 時にはnote内でこの小説を私の代名詞的に使ってくださる方もいらっしゃるのは本当に有り難いことです。 しかしここまで長くなったところで、これから新たに「読んでみよう!」と思ってくださる方々にはかなり不案内な状態になっていることに、ふと気が付きました(「連載した分は本にしたから本を買ってくれ!」という発言は乱暴ですね←かなり本音っぽい笑)。 そこで、単に連載をまとめた各部ごとのマガジンを並べるだけのものになり

    • その名はカフカ Inverze 19

      その名はカフカ Inverze 18 2015年1月ロズニャヴァ  ロズニャヴァはコシツェから七十キロメートルほど西にある小さな街で、なだらかな山々に囲まれる盆地にある。街から見れば周囲の山もさして高いようには見えないが、ロズニャヴァ自体が海抜三百メートル以上の高地にある。そのロズニャヴァの街の西、スロヴェンスキー・クラスの東の端に位置する山の中に、ヴェロニカは最後の銃器を隠していた。  一月の下旬ではまだ日が落ちるのも早く、午後から山に入るのは無理だろうと男が言うので、

      • 工作員、文フリ東京39にてウミネコに便乗する。

        このイラストを描くに当たって改めてウミネコという鳥を検索してみましたら、ニシコクマルガラスに負けず劣らず人相悪…じゃなかった、鳥相が引き締まった方々で恍惚といたしました。 はい、くだらない前置きはいいから本題に行け、ですね。 本記事は2024年12月1日(日)開催の文学フリマ東京39にて出店されるウミネコ制作委員会さんの応援&宣伝記事でございます。 ブース番号は「さ-39,40」とのことで、語呂合わせは「さ-さく,よお」で、「笹供養」でいかがでしょう!? ……う~ん、今

        • その名はカフカ Inverze 18

          その名はカフカ Inverze 17 2015年1月ブダペスト  玄関のドアを開ける前に、ペーテルは今一度ドアの左手にある姿見で新しいウィッグの座り具合を確かめた。身長まで偽ることはできないが、長い黒髪よりこのオレンジのボブのほうが小柄に見える気がするし、顔も幾分か丸みを帯びて見える。きっと同じ建物の住人にも変装した姿でこの部屋に出入りしているのを見られているのだろうが、差し詰めここに住む大学生は女にだらしがないんだとでも思っているのだろう。  先週テンゲルを訪ねた時は入

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        その名はカフカ・総目次

        マガジン

        • その名はカフカ V
          20本
        • 『その名はカフカ』の紙の本
          21本
        • 墨で鳥-水墨画練習帳
          28本
        • ワタクシゴト漫画集
          40本
        • ワタクシゴト雑記集
          14本
        • 創作についての覚え書き
          43本

        記事

          墨でステラーカケス/墨と顔彩

          つい数日前「暫く『墨で鳥』単独の記事が書けそうにない」などと書き走ったくせに、興奮冷めやらぬうちにお披露目したいものが出来てしまったので、「墨で鳥」を綴っております。 今朝、ネットをフラついておりましたら北アメリカに生息する「ステラーカケス(英名:Steller's Jay)」という、何ともイカしたヘアスタイルでイカした色合いの鳥に出会いまして、それなら今日は墨絵教室のお手本も用意することだし、と描いてみることにしました。 このステラーカケス、頭部から翼の上部くらいまでは

          墨でステラーカケス/墨と顔彩

          その名はカフカ Inverze 17

          その名はカフカ Inverze 16 2015年1月ウィーン  ヴァレンティンがウィーン市内にも部屋を持っていて、調度品は全てカーロイの会社の製品を揃えているとサシャが耳にしたのは最近のことだ。サシャはそのヴァレンティンの所有するマンションの応接間の窓辺に立ち、改めて部屋全体を見回してみた。確かにアダムが「洒落込みすぎている」と評価を下すのも分かる気がする。どうあれ今カーロイは自分の一番好きなことを仕事にしていて、それで成功しているのだから、親友に何と評価されようと知った

          その名はカフカ Inverze 17

          秋にしたためる「秋だ」という散らし書き

           数日前に日本にお住まいの方に「日本は秋を素っ飛ばして冬が来た感じなのですね」などという書き出しでメールを差し上げた。翌朝、車道に沿って並べてあるリサイクルボックスに向かったところ、ボックスの口の部分が凍って固まっていて私の分別ゴミを受け入れてくれなかった。冬の到来は他人事ではなかったらしい。パソコンを立ち上げたら-2℃と表示されていた。  六月に描いた水彩画で「いかにも秋」な絵が一枚あって、noteで公開するのは小説の挿絵に使えばいいか、と思っていたら秋に始めた連載は正月

          秋にしたためる「秋だ」という散らし書き

          その名はカフカ Inverze 16

          その名はカフカ Inverze 15 2015年1月コシツェ  スロヴァキアで二番目に人口が多い街であるコシツェはヴェロニカの出身地から最も近い都市で、先月は本物の身分証明書の再発行を申請するために久しぶりに訪れた。有効期限がとっくに切れていたのに更新もせず紛失届けも出していなかったことを役所の窓口で叱られはしたものの、手続きはあっさりと完了した。だから昨日ヴェロニカがコシツェに再び向かう理由としてエミルに「お役所でいろいろ確認を取られるから」と言ったのは嘘だった。しかし

          その名はカフカ Inverze 16

          浦島、海の客人と『はやて(全)』完成祝いに宴を催す。

          はい!ということでワタクシ浦島Ru太郎、またしてもイルカの技意句さんを拙宅にご招待いたしました! こちらの一月の記事ではウミネコ童話集に収録されるgeekさん著の「はやて」に挿絵を描かせていただいた際の制作に関する諸々をご紹介したのですが、今回は、なんと! あの「はやて」が約六倍の長さになってウミネコ制作委員会発行のウミネコmini文庫『はやて(全)』の姿で誕生しました! 前出のgeekさんの告知記事にもありますように、mini文庫化に当たって、童話集に向けて描いた三枚

          浦島、海の客人と『はやて(全)』完成祝いに宴を催す。

          長兵衛に西黒丸鴉/裏打ち報告2024年10月

          先日最終回を迎えた穂音さんの『長夜の長兵衛』七十二候シリーズにて 再び拙水墨画を扉絵に使っていただくという栄誉に預かりました。 本記事ではこの最終回第五十四候「楓蔦黄(もみじつたきばむ)」に拙画を使っていただくまでの流れとその制作、そして作品の裏打ちまでをご紹介したいと思います。 穂音さんの長兵衛シリーズの魅力は何と言っても制限された字数でありながらどこまでも深く味わいのある読み応え。その長兵衛のための絵の制作裏話なのだから多くは語るまい……とカッコつけたいところなのです

          長兵衛に西黒丸鴉/裏打ち報告2024年10月

          その名はカフカ Inverze 15

          その名はカフカ Inverze 14 2015年1月リンツ  本名など名乗っても何の得もないし、この業界では誰も相手の名前を本名だと思っていやしない。オーストリアにやって来て自分の組織を作ることになった際、何かを名乗らなければいけないが後々後悔しないような格好の付いた名前を考え出すセンスもない、と少し悩んで「与格」を意味する文法用語の「Dativ」を自分の名前に選んだ。何となく、何でも与えてもらえる人間になれそうな気がした。嫌ならいつでも変えられると思っていたが、一度名前

          その名はカフカ Inverze 15

          その名はカフカ Inverze 14

          その名はカフカ Inverze 13 2015年1月ヘーヴィーズ  きっとテンゲルとの出会いは偶然ではないのだろう、とラーヂャは思う。「まともな人生」を送っていた頃も随分と我がままに自分のこだわりを最優先して仕事をする技師だったが、第二の人生を歩み始めてからは、自分の世界には自分しかいなかった。相手は自分にとって有益か否か。他者と関わる時、重要なのはそれだけになった。しかし、人というのはそれだけでは生きていけないように運命づけられているのではないか。何か、一人の人間という

          その名はカフカ Inverze 14

          その名はカフカ Inverze 13

          その名はカフカ Inverze 12 2015年1月ドイツ・オーストリア国境  どうせなら目的地のリンツまで送って行くように手配してくれても良かったのではないか、と思いながらレンカはドイツとオーストリアの国境付近でヴァレンティンの部下が運転する車を降りた。ケルンで別れる前にヴァレンティンは「次の動きは国境に迎えに来る車の運転手が把握している。楽しんできたまえ」と笑いながら言った。  車を降りた場所は十一月にイリヤ・ドリャンと何らかの関わりがあると思われる一味に姿を目撃され

          その名はカフカ Inverze 13

          その名はカフカ Inverze 12

          その名はカフカ Inverze 11 2015年1月ワルシャワ  国立オペラ劇場の裏を抜けサスキ公園に入ると、カズィは待ち合わせ場所に指定された噴水を目指した。サスキ公園はカズィの勤める防衛大学からは公共交通機関を乗り継いで三十分以上かかるワルシャワの中心部にあり、この後も仕事に戻らなくてはならない身としては正直好ましい会合場所とは言えなかったが、相手がこの街に慣れていないとなると分かりやすい観光名所を指定されても仕方がない気もした。  冬は観光客も少なく、この日は雨や雪

          その名はカフカ Inverze 12

          珈琲のかほり運ぶは秋の饗

          本記事はらべあろ企画『Autumoon』の参加記事です。 今回はリレー式で参加者の間でバトンを投げ合う(ん?渡し方は丁寧に、ですね)イベントとなっています。 どうもこの秋、想定外に忙しくさせていただいておりまして(その割に小説書いとるやん、という突っ込みもいつも通りですね、あれは連載開始前に相当なストックがあったのでございます)図々しくも「バトン一回だけなら参加できます」などと注文を付けてしまい、ラベンダーさんとAlohaさんのお心遣いで第一走者を務めさせていただくこととな

          珈琲のかほり運ぶは秋の饗

          その名はカフカ Inverze 11

          その名はカフカ Inverze 10 2015年1月プラハ  小雨の降る中、エミルは二ヶ月ぶりに実家の庭先に車を止めた。まさか年末になってあんな寒波が来るとは十一月の時点では全く予想していなかった。おかげで一番強力な防寒着はすべて実家に置きっぱなしだ。一月中旬に差し掛かって気温は上がってきたが、まだ冬は長い。この後どうなるか分からない。実家に置いてある物は諦めて必要な物は買い足していこうと思いながらこの二ヶ月生活してきたが、今更極寒用の防寒着を買い直すのかと考えると躊躇し

          その名はカフカ Inverze 11