『ナップサック』
小学生の荷物は多い。
大人でもウンザリするくらい重いランドセルを背負って、毎朝出発する。
改めて思うと、あんなに小さな身体で毎日大変だなぁと思う。
そんな重いランドセルがあるにも関わらず、日によってはどうしても入りきらない荷物が出てくる。
そんなとき重宝するのがナップサックだ。
わたしも小学生の頃は、ナップサックをランドセルの上から背負って登校したものである。
が、そのナップサック、なんともダサくて嫌だった。
綿の入ったキルティング生地でできており、消防車やパトカーの柄が入った手作り感満載のもので、小さいながらに嫌だった覚えがある。
そんな記憶があったためか、妻から6歳息子の小学校入学前にナップサックの件を相談されたとき、
「え?ナップサック!?いやー、ダサいよー」
のような軽い感じで答えてしまった。
近くにいる息子も、
「そうだよー、ナップサックなんてダサいよー」
と同調していたのを覚えている。
かくして、妻は得意のネットサーフィンで茶色と黒のツートンカラーのオシャレなナップサックを見つけ、これならどう?と見せてきた。
正直、自分のイメージにあるナップサックとは別次元のものだった。
妻よ、ナップサックよ、ごめん。
ダサいなんて言って。
これなら息子も背負って行ってくれると感じた。
だが、しかし。
息子の感想は相変わらず「えー、ナップサックダサいよー」なのだ。
荷物がランドセルに入りきらない時だけでいいから、背負って行って。
そう妻は息子に言うものの、ダサい、嫌だと言って聞かない息子。
その話題が出るたびに、自分の胃がキリキリと痛む。
あー、なんて軽々しく発言してしまったんだ、俺は。…バカバカ!!
自分を罵るものの、息子のイメージは変わらない。
そして今日。
体操着を持って行く日となり、ランドセルに入りきらない荷物量だったため、ついにナップサックの出番となった。
結果はやはり
なのだ。
けっきょく、手提げカバンに体操着を詰め込んで、妻が激怒しながら息子を送っていった。
…
妻の選んだナップサックはオシャレでかっこいい。
それは何度も息子に伝えた。
でも、息子は嫌がった。
今朝、息子が言った言い分の中に、「ナップサック背負ってる子全然いないよ」というものがあった。
わたしが学生の頃、他の子と違うものを身につけていると、なんとなく恥ずかしかった。
例えば靴なんかもそうだ。
新しい靴を買ってもらうのは嬉しいんだけど、初めて履いていくとなるとドキドキしてしまい、買ってもらってもしばらくは今までの靴を履いて登校していた記憶がある。
もしかするとそんな感じなのかもしれない。
…いや、違うか。
息子がナップサックを毛嫌いしてしまったのは、ほぼ間違いなく自分のせいだ。
先入観を植え付けてしまった。
以後、軽はずみな言動には気をつけようと思った。
…
そんなことを考えていると、先ほど妻からLINEが入り、「みんなナップサック背負っていた。ちゃんと息子を説得せよ」と言う内容の連絡があった。
はい。承知いたしました。
今日帰ったら、ナップサックを背負う利点や、妻の選んだナップサックがいかにカッコ良いかについてプレゼンさせてもらいます。
妻よ、ほんっっっとごめんなさい!