【ショートショート】 ワタシたちが生きるように
「何でも言って」と彼女が笑って、
「じゃあ、金木犀の匂いを包んで」
と、彼がリクエストを出しました。
白紙のワタシを一枚剥がして、彼女がこっそり何かを塗り付けます。そして、折りたたまれたワタシは彼女のポケットに入りました。
こんばんは。ワタシは原稿用紙です。
表紙に目があって、十二ぺージ目に心があります。
天のりから剥がされても、一枚一枚、意識を共有できます。なんだかプラナリアみたいでしょう? もう何年も、彼女のクローゼットに住んでいました。
「誰にも共感されない小説を書く