くみこ

行政書士下尾文書作成事務所を運営しています。主に内容証明、契約書、示談書等の文書を作成…

くみこ

行政書士下尾文書作成事務所を運営しています。主に内容証明、契約書、示談書等の文書を作成しています。 そして、14才の時から憧れ、追い続けていた作家の夢を、手製本で花開かせています。 人の喜ぶ仕事をしたいです。

マガジン

  • 体験記 〜摂食障害の果てに〜

  • 宇宙のコンビニ

    この広い宇宙のどこかに必ずあって、いつでも誰でもすぐに行けるけれど、なかなか誰も行けない、この世でたった一つきりの珍しいものを売っているお店の物語です。

  • 不当解雇について

    不当解雇について、詳しく書いています。

  • 行政書士の事件簿

最近の記事

宇宙のコンビニ

『空気がきれる剣』 『空気がきれる剣』で空気を切ると、別の次元が現れる。もし、君が何かに追われ、逃げ場を失くしたら、その空間に逃げ込めば良い。相手から君の姿は見えない。危険が去ったら、速やかにその空間から出ることをお勧めする。なぜなら、剣で切り開いた空気の傷は、時間と共に閉じてしまうからだ。中に閉じ込められてしまわないよう、ご注意。  宇宙のコンビニに、騎士がやって来た。 「こちらに、よく切れる剣はありますかな?」  騎士がよく通る大きな声で尋ねた。 「いらっしゃいませ、

    • 体験記 〜摂食障害の果てに〜(43)

      腰の痛み  腰の痛みが酷いので、主治医の先生に、痛み止めをお願いしました。でも、痛み止めの点滴は、二種類試したけれど、全く効きませんでした。とてもよく効く注射がある、と、研修医の先生と看護師さんから聞き、お願いしました。でも、主治医の先生は、絶対に許して下さいませんでした。『禁中』という注射なのだそうですが、依存症になるから駄目だ、というのです。 「ならないので、一度でいいから、打って下さい。」  痛みは一日中、続きます。どんなに頼んでも、決して打ってもらえませんでした。

      • 体験記 〜摂食障害の果てに〜(42)

        リハビリ  二ヶ月近く寝たきり生活をしてきた私は、棒人形でした。手も足も全くと言っていいほど動かせなくなってしまったのです。動かせなくなっていくのは、たった一日のことが言えません。朝、引き寄せられた足が、夕方には、もう動かせなくなっていました。それに気づいた時は、非常に驚きました。一週間程で、寝返りが打てなくなりました。筋肉は、使わなくなると、一気に衰えます。  リハビリの先生が来る、と主治医の先生から聞いたのは、三月下旬頃だったと思います。 (へえ~。私にもリハビリをさせ

        • 宇宙のコンビニ

          『へんしん絵の具』  顔にヒゲの絵を描いても、本当には生えてこない。けれど、『へんしん絵の具』で、変身したいものと同じ色に体を塗ったら、本当に変身できる。元に戻りたい時は、塗った絵の具を洗い流すだけ。  ただし、注意したいのは、ナスやキュウリなど、手足がないものに変身すると、自力で元に戻れなくなる。その場合は、変身前に、友達によくよく頼んでおくと良いかもしれない。  宇宙のコンビニに、小ネズミがやって来た。すんすん、鼻を鳴らし、 「どうやらここには、怖いものはいないようだ

        宇宙のコンビニ

        マガジン

        • 体験記 〜摂食障害の果てに〜
          39本
        • 宇宙のコンビニ
          14本
        • 不当解雇について
          1本
        • 行政書士の事件簿
          1本

        記事

          体験記 〜摂食障害の果てに〜(41)

           やがて、窓の外が、うっすらと明るんできて、看護師さんが、血糖値を計りに廻ってきました。出た値は、五八でした。血糖値は、七〇mg/dl以下になると、低血糖とされます。通常、私が点滴をしている時の値は、百から百二十くらいです。看護師さんが大急ぎで、ブドウ糖を注射器で注入してくれました。見たことのない大きな注射器で、二本注入しました。私は、口からも糖分を入れた方が、早く効くと思ったので、ぶどうジュースをコップに注いでもらい、飲みました。丁度、家族が、ぶどうジュースを買って来てくれ

          体験記 〜摂食障害の果てに〜(41)

          宇宙のコンビニ

          『鬼の足』  ひとの嫌がることをして、喜ぶものがいる。苦しんだり、悲しむ顔を見るのが、嬉しくって仕方ない。鬼の心を持つと、しだいに体をおかされ、自分ではどうしようもなくなってしまうから、恐ろしい。こんな心は、『鬼の足』で踏み潰し、きれいさっぱり消してしまうことができる。  鬼の消えた後は、空気すら清々しく感じられるだろう。  シスターが、宇宙のコンビニにやってきた。体がカーテンのように透け、瞳は星のきらめきを帯びていた。 「わたしは、『良心』です。」  シスターは、ひどく

          宇宙のコンビニ

          宇宙のコンビニ

          『おまつりうちわ』  お祭りの日には、おいしいものに楽しい音楽。愉快に踊って、嫌なことも悲しい気分も忘れてしまう。  この『おまつりうちわ』であおげば、気分高まり、お祭り気分。怒り狂った暴君も、ケラケラ笑って、踊り出す。  気分が沈んだ時には、うってつけの代物。ただし、この『おまつりうちわ』、あおぎすぎると、ゲタゲタ笑いが止まらなくなり、踊りをやめられなくなってしまう。くれぐれも、やり過ぎないよう、ご注意。    テストで連続3回、0点を取った子供が宇宙のコンビニにやって

          宇宙のコンビニ

          体験記 〜摂食障害の果てに〜(40)

          首のCVから液が漏れる  肺の水抜き用の管(ドレーン)を抜いた後、体調が崩れてしまいましたが、三日経って、良くなってきた日のことです。昼に小さな点滴をしたら、首のCVの辺りがピリピリと痛く感じました。こんなことは初めてです。看護師さんにその事を伝えると、タオルを首に当ててくれました。点滴が終わってタオルを取ると、端っこがわずか濡れています。奇妙な気がしました。濡らすものなんてありません。  夕飯の後、歯磨きが終わってから、小さな点滴が追加されました。私は、二十四時間高栄養の

          体験記 〜摂食障害の果てに〜(40)

          宇宙のコンビニ

          『たから島ドクロ』  宝の地図を手がかりに、宝物を探しに行く。探り当て、箱を開けたら、もぬけのカラ。むなしい疲れだけが残る。ーーといった結果は、世界に山とある。だがしかし、この『たから島ドクロ』を使えば、宝がぎっしり詰まった箱のありかを正確に教えてくれる。ハズレなしの当たりくじを引けるわけだ。道に迷うこともない。宝までの道のりが、光によって示され、最も短距離で辿り着ける。これさえあれば、君は宝物の王者になれるだろう。  イモムシが一匹、宇宙のコンビニにやって来た。全身金色

          宇宙のコンビニ

          体験記 〜摂食障害の果てに〜(39)

          吐き気  入院する前から吐き気が続き、二ヶ月近く経っても治らないので、主治医の先生が、MRIで調べる、と言い出しました。  入院直前は、「低ナトリウム血症による吐き気」と、病院の先生から診断され、ナトリウムの点滴を行なっていましたが、点滴も飲み薬も全く効き目はありませんでした。中央病院に入院してから、吐き気は軽減しましたが、時々、ひどくなり、悩まされていました。  造影剤を使うので、同意書にサインを求められました。研修医の女の先生に、 「自分で書けますか? ご家族の方に代わ

          体験記 〜摂食障害の果てに〜(39)

          宇宙のコンビニ

          『空飛ぶ金魚』  コイが空を飛べば鯉のぼりだが、キンギョが空を飛べば、『空とぶ金魚』になる。  この『空とぶ金魚』の特別なところは、自分が空を飛べるだけでなく、他の魚も空を飛べるようにできるところにある。  他の魚が空を飛びたいと願っているかどうかは、聞いてみなければわからない。が、海より広い空を飛べたなら、気分爽快かもしれない。  宇宙のコンビニに一人の少年がやって来た。手にパンのかけらを持ち、あちらこちらを見回している。 「いらっしゃいませ、何をお探しでしょう?」 

          宇宙のコンビニ

          体験記 〜摂食障害の果てに〜(38)

          変化  ある朝、ふと、いつもより気分が良く感じられました。そこで、ずっと気になっていた自由帳に、何か書いてやろう、という気が、むくむく湧き上がってきました。 (すぐそこに、ノートがあるのに、私が書こうとしなければ、永遠に書けない。)  家族に、折り紙とあやとり用の毛糸と自由帳を持ってきてくれるよう、頼んであったのです。それらは、自分でリハビリに使うつもりでした。母は、気を効かせて、私が小学生の頃使っていたクーピーペンシルのセットと、小さい塗り絵帳、手帳も持って来てくれていま

          体験記 〜摂食障害の果てに〜(38)

          宇宙のコンビニ

          『高速シューズ』  速く走れることは素敵だ。ぐんぐん風を追い越し、向こうに見えていた景色が後ろにさがっていく。気分爽快、汗も心地よい。  この『高速シューズ』を履けば、どんなに走るのが苦手な人も、目にも止まらぬ速さで駆け抜けることができる。  速すぎて、目標を見失わないよう、ご注意。  マラソン選手が、宇宙のコンビニにやってきた。肩で息をし、 「もっともっと速く走れるようになりたいのです。」  と、言った。 「いらっしゃいませ、お客様。すでに十分速いではありませんか?」

          宇宙のコンビニ

          体験記 ~摂食障害の果てに~(37)

           処置が終わって、しばらく経ち、看護師さんに、体の向きを変えてもらった時のことです。左を下に寝たら、コホン、と小さく咳が出ました。それから、コホコホ、咳が止まらなくなり、右に向けてもらうと、ピタリと止まりました。尾てい骨と腰が痛くなり、左に向けてもらうと、又咳が出ました。それはまるで、噛み砕いたピーナッツの破片が肺の中で踊っているように、又は、小さな扇風機が、壊れたプロペラを小刻みに回すように、とめどなく、肺から溢れ出てくるのです。  夕方になり、父と母が面会に来てくれました

          体験記 ~摂食障害の果てに~(37)

          宇宙のコンビニ

          『魔女のステッキ』  願い事がありすぎて、ひとつやふたつ叶っただけでは足りない人には、『魔女のステッキ』が、うってつけだ。どんな願い事も、たちどころに叶えてくれる。庭を花園に変えることも、山をアイスクリームに変えることも、思いのまま。ゴキブリを金貨に変えることだってできる。  しかし、ひとたびこの『魔女のステッキ』を握った者は、ステッキと運命を共にする。ステッキが折れれば、持ち主の体も、パッキリ折れてしまう。物は丁寧に扱い、乱暴に扱わないこと。自分と同じに大切にしてほしい。

          宇宙のコンビニ

          体験記 〜摂食障害の果てに〜(36)

           肺の水が減ってきたので、肺につながった管(ドレーン)を外すことになりました。麻酔をすると言われても、緊張します。時間が三時と決まって、部屋を移動せず、行うことになりました。  時間がきました。介助の看護師さんが選ばれ、主治医の先生と、研修医の若い先生が、男女二人きました。私は主治医の先生が行なってくれるとものと安心していたのに、研修医の女の先生が行うことになりました。 (大丈夫かな?)  不安になりました。まるで、実験台です。でも、こうやって経験を積み、一人前の立派なお医者

          体験記 〜摂食障害の果てに〜(36)