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宇宙のコンビニ

『たから島ドクロ』

 宝の地図を手がかりに、宝物を探しに行く。探り当て、箱を開けたら、もぬけのカラ。むなしい疲れだけが残る。ーーといった結果は、世界に山とある。だがしかし、この『たから島ドクロ』を使えば、宝がぎっしり詰まった箱のありかを正確に教えてくれる。ハズレなしの当たりくじを引けるわけだ。道に迷うこともない。宝までの道のりが、光によって示され、最も短距離で辿り着ける。これさえあれば、君は宝物の王者になれるだろう。

『たから島ドクロ』

 イモムシが一匹、宇宙のコンビニにやって来た。全身金色の毛に包まれ、緑に光る目で私を見ている。
「いらっしゃいませ。何をお求めでしょう?」
 私は、宇宙のコンビニの店長。小さなお客様を店の台に乗せて差し上げる。
「ワタシは、黄金を食べるんです。」
 イモムシが言った。
「最近の金貨は、混ざり物が多くていけない。大昔の金貨は、純金で、極上のチョコのように深くコクのある味わいでした。」
 その味を思い出すように、イモムシは顎を撫でさすっていたが、
「チョコレートの味なんて、イモムシにわかるのか、とお思いでしょう? いや、ワタシはチョコも好きなのですが、味わう機会が滅多にないだけなんです。なにせ金貨を探すのに忙しくって、そちらまで手が回らないんです。」
 ペラペラとイモムシは、小さいながら大きな声でよく喋る。
「チョコも金貨も溶けるところは全くよく似ている。ワタシはこの口の中で、両方ともよくよく溶かして飲み込む。固いものは消化しにくいのでね。」
 おほん、と咳払いし、
「さて、本題に戻そう。ワタシは純金の詰まった宝箱を探している。聞けば、世界には、大昔の金貨がまだ相当に残っているという。少数の仲間たちと、方々探し回っているが、一向、見つからない。もし、見つかったら、仲間を呼び寄せ、共に分け合いたい。どうか、手を貸してはくれまいか?」
 イモムシは、円らな瞳で、じっとこちらを見ている。その瞳に嘘偽りはなく、健気なひたむきさが伝わってきた。
「こちらへどうぞ。きっとあなたを助けるものが見つかるでしょう。」
「そうこなくっちゃ。」
 イモムシは目をパチパチさせ、私についてくる。私は、イモムシを店の奥の林へ案内した。
 イモムシは、林の前に立つと、
「探し応えがありますな。百日かかるかもしれない。」
 と、言った。
「その気になれば、あくびする間かもしれません。」
 私が言うと、イモムシは、素早く、その目当ての物を探しに、林へ入って行った。そして、十数える間に、
「コイツだ! 店長、コイツに違いない!」
 はしゃいだ叫びを上げつつ、林の中から現れた。自分の何倍もあるドクロに体当たりしながら、転がして私の足元までやって来る。
 私はそのドクロを拾い上げると、
「これは『たから島ドクロ』。宝の在りかを指し示し、道のりを教えてくれる。決して迷うことなく、最短の距離で宝にたどり着けます。」
「よしきた、今すぐもらおう!」
 イモムシは、身をよじらせ、おしりから黄金のフンを出した。
「こいつは純金製だ。とっておいてくれたまえ。」
 私は、ハンケチで丁寧に黄金のフンを包み取った。
「では、代金として、頂いておきます。」
 イモムシはドクロの目に這い上り、
「いざ、宝島へ!」
 と、叫んだ。
 ドクロは、光の道筋を一本、はるか未来へ向けて放った。
「見えた! あそこに黄金がある!」
 ドクロは、その光の道を滑るように進み出した。
 道中、イモムシが仲間に向かって呼びかける。次々、ドクロに仲間が乗り込んできた。
「さあ、目指せ! ワレラが楽園へ!」
 黄金の夢は尽きることなく、イモムシたちを誘うのであった。
                        (おわり)


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