辻敦(書籍編集)

出版社勤務。写真や本に関係することを書きます。編集担当作に、幡野広志『うまくてダメな写真とヘタだけどいい写真』、平野レミ『私のまんまで生きてきた。』、サーバー作/村上春樹訳『世界で最後の花』、宮嵜守史『ラジオじゃないと届かない』、益田ミリ『小さいわたし』など。

辻敦(書籍編集)

出版社勤務。写真や本に関係することを書きます。編集担当作に、幡野広志『うまくてダメな写真とヘタだけどいい写真』、平野レミ『私のまんまで生きてきた。』、サーバー作/村上春樹訳『世界で最後の花』、宮嵜守史『ラジオじゃないと届かない』、益田ミリ『小さいわたし』など。

マガジン

  • 1000字と1枚

    1000字と1枚の写真で、身のまわりのことを力を抜いて書いていきます。書くことについて、文章についての理解を深められたらいいなと思っています。月1〜2回程度更新予定。いまのとこほぼ週1 更新です。

  • 編集担当本・編集の仕事・本のこと

    ぼくが編集担当した本のことを中心に、編集の仕事や本に関わることについて書いた記事まとめました。

  • 写真をはじめました!

    幡野広志さんの「写真の撮り方」の本を編集させていただくことになったことがきっかけで、2023年2月から写真をはじめました。幡野さんの写真ワークショップ「いい写真は誰でも撮れる」のお手伝いもしています。写真初心者として経験したことを書いていきたいと思います。

  • 個人的なこと

    編集や写真以外の個人的なことを書いていきます。書く練習として。

最近の記事

  • 固定された記事

写真をはじめて1年がたって「何気ない日常」なんてないとわかりました。

出版社で働いている辻敦と申します。ぼくは写真家・幡野広志さん編集担当をしていて、『うまくてダメな写真とヘタだけどいい写真』という本を幡野さんと一緒につくりました。写真を撮る前に知っておいてほしいことから、写真の撮り方、RAW現像の方法まで、幡野さんが写真についてはじめて書いた本です。 ぼくは完全な写真シロウトです。本のお話をいただいたときは、ぼくが幡野さんの写真の本を作ってよいのだろうか、そんな気持ちもありました。でもむしろ、写真をやっていないからこそ、ぼくにお願いしたいと

    • 「だれにでもわかる言葉で、たいていのことはできる」【1000字と1枚】

      これは糸井重里さんの言葉です。大学4年生のときに兄がこの言葉を収録している『ボールのような言葉』をプレゼントしてくれました。文庫のこのページには当時よく噛んでいたキシリトールガムのボトルに入っている緑の紙を付箋がわりにして貼ってあります。 「そうか、かんたんな言葉でなんでもできるんだ。」 シンプルに当時のぼくのからだにその言葉はすうーっと浸透していきました。そこから文章の書き方が少しずつ変わっていった気がします。なるべくむずかしいことはせず、かんたんな言葉で書くことを心が

      • 「痛いとこ突かれた」的なくやしさ 【1000字と1枚】

        「辻くんは元気が取り柄じゃん」 ひさしぶりに会ったぜんぜんちがう部署のエラい人に言われました。トイレの中で横並びになりながら。ぼくは「そうですかねえ」とへらへら返事をして、手を洗って自分の席に戻りました。 スリープ状態のパソコンにパスワードを入れていると、さっきトイレで会ったエラい人の顔が、頭に浮かんできました。頭の中でエラい人はこっちを向いてにこにこしながら 「辻くんは元気が取り柄じゃん」 と言っていました。 なんだろう。なんだか、ちょっと嫌かもしれない。「取り柄

        • ぼくが近くで感じていた平野レミさんの魅力を伝えたい【1000字と1枚】

          平野レミさんの言葉集『私のまんまで生きてきた。』が11/13に発売となります。レミさんの著作やインタビューから100の言葉と文章を厳選して1冊にするものです。レミさんの魅力が詰まったとってもいい本になりました! こういう本ではイレギュラーですが、思うところがありプルーフをつくりました。プルーフとはゲラを本の形にして、書店員さんに事前に読んでいただくためのものです。 プルーフと一緒に手紙を書いてお送りしました。どういう気持ちでこの本をつくったかお伝えできるかなと思ったので、

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        写真をはじめて1年がたって「何気ない日常」なんてないとわかりました。

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        • 1000字と1枚
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        • 編集担当本・編集の仕事・本のこと
          12本
        • 写真をはじめました!
          15本
        • 個人的なこと
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        記事

          「写真に必要なのは少しの手間と勇気」の意味がわかった気がしました。【1000字と1枚】

          『うまくてダメな写真とヘタだけどいい写真』の「おわりに」で幡野広志さんはこう書いています。 この「少しの手間と勇気」の意味が、この前なんとなくわかった気がしました。 先日、平野レミさんの言葉集『私のまんまで生きてきた。』を無事、校了しました(レミさんの魅力が凝縮された本です。ぜひ読んでください!)。「校了」とはかんたんに言うと、本にするための準備がすべて整って、これで印刷製本してOKです、となることです。校了日は本作りのプレッシャーから解き放たれて、とても達成感がある。め

          「写真に必要なのは少しの手間と勇気」の意味がわかった気がしました。【1000字と1枚】

          幡野広志さんと、はじめて会った日 【1000字と1枚】

          引っ越しが終わって本棚の整理をしていたとき、幡野広志さんの『写真集』というタイトルの写真集をひさしぶりに手にとりました。開くと、見返しに幡野さんのサインと猫のイラストが書いてある。サインをもらったのは5年前のほぼ日tobichiの展示。ぼくはそこではじめて幡野さんと会ったんです。 2019年2月23日の土曜日。ぼくは病院から帰るところでした。吉祥寺駅に向かうバスの中でTwitterを見ていたら幡野さんの展示の情報が出てきた。展示はその日がちょうど初日。その足でtobichi

          幡野広志さんと、はじめて会った日 【1000字と1枚】

          ぼくには変なクセがある。 【1000字と1枚】

          ぼくには変なクセがあります。 それに気づいたのは大学1年生の6月ごろでした。体育とドイツ語のクラスが同じだった大学の友だちがひとり暮らしをする湘南台の家に泊まらせてもらったときのことです。シャワーを浴びて、頭を拭きながら出てきたら、友だちに「おまえなんかしゃべってなかった?」と言われました。 え? しゃべってたんです。しゃべってたんですよ。シャワーを浴びながらひとりで。でもしゃべってる意識はないんです。この、意識はないけど不意にしゃべってしまう、というのがぼくの変なクセ

          ぼくには変なクセがある。 【1000字と1枚】

          小3男子を泣かせる「帰ってきたドラえもん」【1000字と1枚】

          ぼくがはじめて泣いた映画は「帰ってきたドラえもん」です。 小学校3年生のとき、千葉の京成ローザという映画館に父親と兄と3人で朝から出かけました。映画はめちゃくちゃ人気で、ぼくたちは立ち見(!)でした。スクリーンに向かって左側の壁沿いに3人並んで。 ケンカするのび太とジャイアン。がんばるのび太が健気なんです。のび太はドラえもんがだいすきで、ドラえもんものび太がだいすきなんだなあと、ストレートに伝わってきました。 ぼくは泣きました。しっかりはっきりと泣きました。鼻水もでまし

          小3男子を泣かせる「帰ってきたドラえもん」【1000字と1枚】

          力を抜いて身のまわりのことを書いて投稿していくマガジンをつくりました。 【1000字と1枚】

          いいエッセイってなんでしょうか? 会社の編集部内の勉強会で、ぼくが話す機会をいただきました。内容は、エッセイの編集とぼくの編集の仕事についてでした。 ぼくがこれまでにつくった本はまだ少ないし、ずっと編集者だったわけじゃないから編集歴も短い。「勉強会、辻さんにお願いしたいんですけど……」と言われたときは、まだぼくが話す立場にないだろという気持ちがありました。だから、ぼくには早いです、と言ってお断りしました。でも、ちょっと時間が経ってからまた「そろそろどうですか?」とお願いさ

          力を抜いて身のまわりのことを書いて投稿していくマガジンをつくりました。 【1000字と1枚】

          引っ越しは、知恵と機転と経験がつまったクリエイティブな仕事でした。

          吉祥寺は、地元・千葉市稲毛の次に長く住んだ街になりました。ぼくは社会人2年目からひとり暮らしをはじめて、新高円寺に2年、西荻窪に2年、吉祥寺に5年と、どんどん東京の中央線沿線の奥のほうへと引っ越してきました。西荻窪に住んでいたときも住所はギリギリ武蔵野市だったので、武蔵野市民歴は7年になります。 吉祥寺には結婚(と契約更新)を機に引っ越しました。でもべつにぼくは吉祥寺に住みたかったわけじゃありません。それまで住んでいた西荻窪がすごく好きで、そのまま西荻窪でちがう物件を探して

          引っ越しは、知恵と機転と経験がつまったクリエイティブな仕事でした。

          モノクロ写真はダメなのか?

          34歳にもなると、いままで参加した結婚式の数なんて覚えていません。参加するのが珍しかった最初のほうこそ結婚式自体を楽しんだり、ご両親への手紙の朗読に涙ぐんだりしていましたが、最近は小さい同窓会のように、そこで久しぶりに会う友だちと話すことのほうをだんぜん楽しみにしています。 この前も友だちの結婚式がありました。式をあげる友だちにはほんとうに申し訳ないけど、正直、催し物などは流し見しつつ、写真は適度に撮って、しゃべって笑っていました。 家に帰って、撮った写真をパソコンに入れ

          モノクロ写真はダメなのか?

          もう、おじさんだ、と自覚した7月25日のバレーボール

          右足のふくらはぎ内側の上のほうに、ちょうどゴルフボールのような、しっかりと重みのある小さい硬いボールのようなものが後ろからボテッと当たった感覚がありました。瞬間的に「痛っ!」と声が出ました。 振り返ったらそこには何もないし、誰もいない。目線を元に戻すと、一緒にバレーボールをしていたイラストレーターのわかるさんと目が合いました。わかるさんはすごく驚いた顔をしていました。 え、何が起きた? あそうか。ぼくたぶん肉離れしたんだ。7月25日、木曜日、東武練馬の出版権法保健組合の

          もう、おじさんだ、と自覚した7月25日のバレーボール

          写真と素直さ 〜2024年の前半をふりかえる〜

          「誰かにインスパイアされてると思われるのがいちばん恥ずかしいことやぞ」 チュートリアルの漫才の中に、徳井さんのこんなセリフがあったと記憶しています。細かいところは忘れてしまいましたが、「これって〇〇のマネしてるよね」とか「あれって〇〇の影響をぜったい受けてるよね」と指摘されるのは芸人として恥ずかしい、という趣旨だったと思います。 当時高校生のぼくはYouTubeを見ながらつよく共感しました。誰かのマネなんてしない! オリジナルがだいじだよな!と。でも今はちがいます。いいな

          写真と素直さ 〜2024年の前半をふりかえる〜

          文章がたいしてうまくないぼくみたいなやつには、写真ほど頼りになるものはない。

          このまえ、うれしいことがありました! これはとてもうれしかったです。過去のnoteにも書きましたが、ぼくは幡野広志さんに教えてもらった写真のことをぼくの経験を通して発信していきたいと思っています。 「幡野広志さんのワークショップで教わったことや本に書いてあることを素直に実践してみると、写真がたのしくなりますよ、だってそれ実践してるぼくは写真たのしいですから」ということを伝えていきたいわけです。 だから冒頭で紹介したポストは、ほんとうにうれしい反応でした。わりと夢中でXや

          文章がたいしてうまくないぼくみたいなやつには、写真ほど頼りになるものはない。

          あんなにたのしかった写真が、たのしくなくなったとき。

          写真をはじめてちょうど1年が経ったころ、なんだか写真が撮れなくなりました。それまでは超ノリノリで写真を撮っていたのに。あんなにたのしかったのに。 カメラは毎日持っています。会社に行くときも、ちょっと出かけるときも。でも、なんだか撮れない。撮ろうという気持ちにならない。撮る枚数がぐんと減りました。今年、2024年2月から3月ごろのことです。 仕事でやらなきゃいけないことはまあまあたくさんあった。体調も風邪気味のことが多かった。写真が撮れないのはそのせいかと思ったけど、たぶん

          あんなにたのしかった写真が、たのしくなくなったとき。

          被写体への敬意をぜったいに忘れない。人だけじゃなく、猫にも、モノにも。

          写真を撮るのってめちゃくちゃ楽しいですよね。ぼくみたいに写真をはじめたばっかりの人はなおさらそうなんじゃないかと想像します。あちこちにカメラを向けて、自分の撮りたい気持ちに素直にシャッターをどんどん切っていくわけです。まさに前のめりな感じで。 でもこのときぜったいに忘れちゃいけないのは、「被写体への敬意」です。 これはワークショップ「いい写真は誰でも撮れる」で幡野広志さんがおっしゃっていたことです。 この「被写体への敬意」の話をはじめて聞いたとき、すごく恥ずかしい気持ち

          被写体への敬意をぜったいに忘れない。人だけじゃなく、猫にも、モノにも。