あんなにたのしかった写真が、たのしくなくなったとき。
写真をはじめてちょうど1年が経ったころ、なんだか写真が撮れなくなりました。それまでは超ノリノリで写真を撮っていたのに。あんなにたのしかったのに。
カメラは毎日持っています。会社に行くときも、ちょっと出かけるときも。でも、なんだか撮れない。撮ろうという気持ちにならない。撮る枚数がぐんと減りました。今年、2024年2月から3月ごろのことです。
仕事でやらなきゃいけないことはまあまあたくさんあった。体調も風邪気味のことが多かった。写真が撮れないのはそのせいかと思ったけど、たぶんちがう。『うまくてダメな写真とヘタだけどいい写真』の中で幡野さんが書いていた「ダニングクルーガー効果」ってやつ?とも思ったけど、これもきっとちがう。どうしてだろう。写真が嫌いになったわけではないし。
およそ月イチのペースで収録のお手伝いをしている幡野広志さんのラジオ「写真家のひとりごと」(stand.fm ※配信は週イチ)で、幡野さんにおもいきって相談することにしました。「さいきん写真が撮れなくなってきて……」と正直にお伝えました。
「それは誰しもかならずくると思います。辻さんは1年間写真を撮り続けてきて、いま若干の飽きがきている状態。だから、遠くへ行きましょう。」と幡野さんはすぐにアドバイスをしてくれました。(上にリンクを貼った「たまには写真集を買ってみよう」の回でこのアドバイスが聴けます。よろしければお聴きください。)
そうか、遠くに行けばいいのか。
12月のはじめに妻と青森へ旅行したものの、そこから3月までは旅行はもちろん、ちょっと遠くに出かけることもぜんぜんしてなかったとそこで気がつきました。
なんともナイスタイミングなことに、ちょうど3月の終わりに鎌倉に行く予定がありました。会社を辞めた先輩が小さい出版レーベルを立ち上げて、その第1作目の絵本『りんごりらっぱんつ』の個展に、会社の別の先輩と一緒に遊びに行く約束をしていたのです。先輩は家族4人で行くよとのこと。
すてきな個展を見たあと、そのまま先輩家族と一緒に鎌倉の海に行きました。海なんてめちゃくちゃひさしぶりです。海ってふしぎですね。ちらっと見えただけで単純に気持ちが高揚します。ひさしぶりに見たからなおさらテンションがあがります。
展示会場で話しかけたときはそっけない対応だった先輩の長男も、海を見て同じようにテンションがあがっています。その勢いでぼくともどんどん打ち解けてきました。彼と貝殻を探したり、カニいるかなと会話したりして遊びながら写真を撮りました。それがほんとにめちゃくちゃたのしかった。ひさしぶりに純粋にたのしい気持ちで写真が撮れました。夢中で撮れました。
そのあと、家に帰ってその写真を現像していると、そのときのたのしさがよみがえってくる。たのしい気持ちで撮ったからか、この日の写真は自分でもよい感じに見えてくる。現像もめちゃくちゃたのしかった。そこからまた写真がたのしくなりました。「遠くに行く」というシンプルすぎる幡野さんのアドバイスでしたが、ぼくには効果てきめんでした。
写真を撮れなかったときは人にカメラを向けることもぜんぜんしてなかった。でも鎌倉の海で先輩家族の写真を撮ってから、あらためて人を撮ることはたのしいなあとしみじみ思いました。
あくまで個人的な体験ですが、もしぼくと同じように写真が撮れなくなっている人がいたら、ちょっと遠くに行ってみてください。きっと写真を撮りたい気持ちがまたわいてきますから。きっとまた写真っていいなあと思えますよ。
【お知らせ】
★幡野広志さんの『うまくてダメな写真とヘタだけどいい写真』ぞくぞく重版中!
幡野さんが「できれば触れたくなかった」という、写真についてはじめて書いた本。大好評のワークショップをベースに幡野広志さんが渾身の書き下ろし。初心者の方にぜひ読んでいただきたい1冊です。幡野さんの写真も多数。カバーとそれぞれの章トビラのイラストはヨシタケシンスケさんです。
★幡野広志さんのエッセイ『息子が生まれた日から、雨の日が好きになった。』も好評発売中!
家族のこと、病気のこと、写真のこと、旅行のこと……1枚の写真とともに綴る、日常に寄り添った51のエッセイ。古賀史健さんとのロング対談も収録。「写真の読み方」がわかる本。対談では写真と言葉の関係もよくわかります。
★幡野さんのワークショップ「いい写真は誰でも撮れる」はまだまだ続いています!
and recipe のHP(https://andrecipe.tokyo/store/5256/)や幡野広志さんのTwitterをチェックしてみてください。順次開催される予定です。心からおすすめです!