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不登校先生

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2021年の春に「うつ病」になりました。 15年間小学校の講師として働き、 この年もそのまま働くだろうと思っていた時に 突然自分にやってきた「うつ病、退職、療養の日々」について、…
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#退職

不登校先生 (1)

不登校先生 (1)

・・・・まもなく、貨物列車が通過します

      黄色い線の内側にお入りください・・・・

まもなく、貨物列車が通過します・・・・・

    ・・・黄色い線の内側にお入りください・・・

沈み始めた夕焼けの色が、貨物列車の赤色と重なる美しさで、

「もう思い残すこともないな、この駅に」

そんな思いが湧いてきて、体がどう動いていたか、覚えていない。

赤が紅になって、目の前一面が真っ赤になり

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不登校先生 (39)

不登校先生 (39)

退職の手続き、自分で全部進めていくのは初めてだ。

退職の意向を伝えてから、7月に入り、一週間ほどした頃、

校長先生より連絡が入った。

「ととろん先生、お加減はどうですか?先日ととろん先生の意向を聞いたうえで調べて分かったことをお伝えしようと思って連絡差し上げました。」

「ありがとうございます。よろしくお願いします。」

「はい、まず、先日私にお伝えしてくださったとおりに、病休期間ののちは、

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不登校先生 (40)

不登校先生 (40)

・退職の理由について記入してください。

『今年度、異動となり○○小学校勤務となりました。異動後の4月10日、帰宅途中に貨物列車に飛び込もうとしてしまいました。異動先の職場でのストレスで心が限界を超えてると判断し、翌日赴任校の校長に相談のうえ、4月12日に心療内科に診察に行きました。うつ病との診断が下り、翌4月13日より、病休を取得の上、自宅にて投薬と療養で回復に努めてまいりました。しかし、病休も

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不登校先生 (41)

不登校先生 (41)

7月末日、退職の日。その日は土曜日だった。

もう一つのイベントが、その日のスケジュールには入っていた。

あーさんの結婚式。

あーさんは、昨年度、別の学校で一年間、同学年を受け持った相棒だ。

僕より一回りも若いが、しっかりしていててきぱき仕事をするあーさんは、

久しぶりに出会った、子どもに対する熱量も同じくらいの、

先生という仕事に全力で取り組む、素敵な人だ。

あーさんは、僕が病休にな

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不登校先生 (42)

不登校先生 (42)

「いらっしゃいませ!3番へどうぞ!

カットのオーダーの券を買うと、その音に反応して威勢の良い案内の声。

もう10年以上お世話になっている、1000円カットの理髪店。

いつも短髪もしくは丸刈りでお願いするけれど、

ここで顔そりと洗髪までしてもらうのが、一番気持ちがいい。

オールで1800円。月に一度は髪を切りたい気持ちになる僕には、

ありがたい値段とサービスのお店だ。

だが今回は4か月

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不登校先生 (43)

不登校先生 (43)

時間はあーさんの結婚式の週の週初めにもどり、

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ととろん先生ですか?退職願、本日受け取りました。

 手続きはこちらで進めますので、引き続き療養されてくださいね。」

校長先生から、退職願を受け取ったことの連絡が入る。

「ありがとうございます、よろしくお願いします。」

療養に専念、【休む】事がこんなにも大変な事だったのだと

痛感させられてきた

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不登校先生 (44)

不登校先生 (44)

7月31日土曜日。

真夏の暑さが世界を包んでいるような晴天の夏日に、

礼服のスーツと、白のネクタイ。

今日は、あーさんの結婚式と披露宴だ。

あーさんは、本当に奇麗で。幸せそうで。

職場で相棒の時のあーさんの顔しか見ていなかった僕は、

「あーさんは、そっかまだ20代の女の子だったんよね。」

相棒としてのしっかり者で、頼もしいあーさんの印象が当たり前すぎて、

夫さんと一緒に式を挙げる彼

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不登校先生 (45)

不登校先生 (45)

「ではいきましょうか、ととろんさん。」

たてなくんが車で家まで来てくれた。

8月1日。日曜日。無職になった初日。

校長先生と打ち合わせて決めた今日、元職場に残った荷物を取りに行く。

荷物の量はどれくらいだっただろうか。

たてなくんの、車には、息子君もついてきてくれている。

後部座席を全部、まっ平にできるファミリータイプの車で。

果たして運べるかどうか。それぐらいの荷物だ。

僕は車を

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不登校先生 (46)

不登校先生 (46)

「荷物は、もともと置いてあった教室から廊下にまとめておきました。

 あと、ととろん先生の退職について、昨日付で辞令書が出ているので

 お渡ししますね。」

辞令書を受け取ると、初めて正式にもらったその内容は

【退職について承認する。】

という簡単なものだった。

「ありがとうございます。」

受け取ると、たてなくんと、たてなくんの息子君と3人で、

荷物を車に運び込む。自分で考えていたより

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不登校先生 (47)

不登校先生 (47)

「ととろんのおじちゃん、またね。」

「じゃあ、ととろんさんまた夏休みの間に顔見に来ますね。」

たてなくんとたてなくんの息子君は、

自宅の部屋の中に荷物を運びこむところまで付き合ってくれて、

帰って行った。本当にありがとう。

運び込まれた荷物を見る。隣の部屋の半分3畳ほどを占めている。

本当に、沢山あったなぁ。しみじみと眺める。

あの時使ったもの、あの時楽しんだもの、ほぼ毎日使っていた

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不登校先生 (48)

不登校先生 (48)

「ととろん先生、お加減大丈夫ですか?」

そんな連絡があったのは、退職の数日前。7年前に受け持って、

卒業して送り出した教え子のSちゃんからだった。

毎年暑中見舞いと年賀状を受け持った教え子には送らせてもらっている。

その時に、何かあった時に思い出したならと連絡先も載せているのだが、

このSちゃんは、本当に、賢く、そして前向きな子で、

卒業した後も、中学校で生徒会長をしたり、高校生になっ

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不登校先生 (49)

不登校先生 (49)

うつの状態で退職する。

はっきりと、退職を決めた時から、頭に居座り続けている問題。

やはり生活のためのお金の問題だ。

非正規で15年、ここまで給料で貯金などはできたことはない。

先月までの給与と、夏の賞与だけが、今の手持ちの全財産。

月末までに引き落とされるものが引き落され、

このまま何もしないでおくとあと2か月、持たない。

まずは、自分の状態で出来ることを一つずつ、抜かりなく。

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不登校先生 (50)

不登校先生 (50)

駅を降りて、ハローワークまで歩く。

これまでも、二、三度、この道は通った。

いつもこの道を通るときは、気持ちが暗い。

だけど今日は、以前よりは少しだけ前向きに。

療養しながら、きちんと生活に不安がないように。するために。

その準備だから、と自分に繰り返し言い聞かせて。

陸橋を超えればハローワークだ。もうすぐの所まで来たその時、

着信が入る。登録していない番号だ。

「・・・・・はい、

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不登校先生 (51)

不登校先生 (51)

・・・・・・市役所の方から教えてもらった電話番号にかける。

「すみません、傷病手当の申請についてお伺いしたいのですが。」

「はい、傷病手当ですね。こちらの保険に加入されてから、12か月以上たたれていますか?」

「そうだと思います。」

「確認いたしますので、お名前と生年月日をお願いします。」

名前と生年月日を伝える。

「・・・ととろんさんは、3年前までは加入していますが、その後は協会けん

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