不登校先生 (47)
「ととろんのおじちゃん、またね。」
「じゃあ、ととろんさんまた夏休みの間に顔見に来ますね。」
たてなくんとたてなくんの息子君は、
自宅の部屋の中に荷物を運びこむところまで付き合ってくれて、
帰って行った。本当にありがとう。
運び込まれた荷物を見る。隣の部屋の半分3畳ほどを占めている。
本当に、沢山あったなぁ。しみじみと眺める。
あの時使ったもの、あの時楽しんだもの、ほぼ毎日使っていたもの、
どの道具も、4か月離れただけでも、ずいぶん懐かしさを感じる。
とはいえ・・・教室に置いていても、山に感じた道具たち。
こうして自分の部屋に入れてみると・・・とんでもない量だ。
退職で一つ、大事な人とのかかわりあいで一つ、荷物の持ち帰りで一つ、
気持ちがストン、ストン、ストン、と軽くなれたこの状態のうちに。
まずは片づけよう。
収納スペースの押し入れを整理して、下半分を空っぽにしてから、
部屋で山になっている荷物をいったん開けて、
段ボールなどに詰めなおして、奥から入れていく。
しばらくは使わないと思うので、どんどん片付けていく。
押入れの奥の方から、詰めるように詰めるように、片づけていくが、
部屋の中の荷物は、なかなか減っている感じがない。
こういう、膨大な量をさばくときに大切にしていることがある。
1・あきらめない。
2・考えない。
3・意識を切らさない。
とてつもない量のものを片付けるとき、自分が何度も失敗して、
その結果自分に言い聞かせることにしている3つのことだ。
まず、あきらめない。
「疲れれた。もうやめた。」と頭によぎっても、手は動かす。
一度手を止めてしまったら、次動こうとするときの心の燃料は倍になる。
次に、考えない。
あれから開けて、とかあれとこれはまとめられそうだからと考えすぎると、
考えることに気を取られて手が止まる。とにかく手に取ったものから、
片づけていく。振り分けていく。見た目には途中の状態が、
最初より散らかっている状況になることもなるが、とにかく手を動かす。
三つ目は、意識を切らさない。
トイレに行きたくなる、途中でのどが渇いて、給水したくなる。
その時にはどうしても手が止まる。けど、意識を切らさない。
水を飲みながらも次に手を付けるもののことに意識を向ける。
トイレに移動中も、次は、何をどうするかを想像する。
そうすることで、ふと振り返ると、ずいぶん片付いた、という状態になる。
だけどそこで最初に戻る。終わるまではあきらめない。
一息入れても次、次。
目の前にある荷物を開けては梱包して、開けては梱包して、
押入れの中に積み込んでいく。
18時、夏の夕暮れにはまだまだ早い、
西日がオレンジに差し込んでいた部屋の中は、
気付けば、電気の蛍光色で、照らされて、
外は真っ暗な22時になっていた。
1時間に一度ほど水を飲みながら、コツコツコツコツ。
とにかく片づいた。部屋の半分を占めていた荷物は、
すべて押し入れの中に。
「お疲れ様。」
押入れを閉めながら、道具たちに向けてそう呟いた。
↓次話
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