タカキヨシナガ

SHEEPSHEEP BOOKSの店主。 何か書きます。 https://linktr.ee/SHEEPSHEEPBOOKS https://twitter.com/takaki_ysng

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マガジン

  • Korean-indies/R&B/jazz オススメ

    Korean-indies / R&B / hiphop / jazzの新譜を中心にオススメしています。

最近の記事

『無言のつとめ』823(はつみ)さんインタビュー

当店(SHEEPSHEEP BOOKS)にて、7/24~8/4の期間で原画展を開催した823(はつみ)さんへのインタビューを行いました。 作品の背景や実際に本を作るプロセスから、8/10・11に行われた「「黒っぽい 灰色っぽい犬の名は 夜に消えた あの子が決めた」の脚本についてなど、多岐にわたる内容です。 823さんの作品世界を理解したい、表現したい、本を作りたい、そんな方々のヒントになればと思います。 *有料設定にしていますが、記事自体は課金なしで最後までお読みいただけま

¥300
    • 「センスがない」を言い訳にしないために

      絵心がない。克服するための努力は全くせず、上手くなることを諦めて数十年経つので、絵が描ける人は無条件で尊敬する。 圧倒的な画力を誇るマンガ家、藤原カムイさんの創作の秘密を解き明かす『プロのマンガテクニック 異世界ファンタジーの描き方』(玄光社)。 初期の作品から代表作『ロトの紋章』や近作まで、作品世界に合わせて様々な技法を駆使していることが分かる。もちろん描き方だけではなく、演出やストーリーの組み立て方も語られているので、かつて夢中で読んだ『雷火』や『犬狼伝説』を読み直した

      • ゆたかさのしてん

        地元レペゼン。普段はバラバラに活動しながら、プロジェクトが立ち上がればサッと集まる仲間たち。才能あふれる生意気な若者を引っ張り上げる。偉大な先達を担ぎ出す。キッズも大人も同じステージで真剣勝負。ヒップホップの話?いや、『ゆたかさのしてん』(今井出版)の話だ。 著者の木田悟史さんは、日本財団の鳥取事務所所長として、色々な場所に出かけ、たくさんの人と言葉を交わす。関東出身である外側の視点と、対話から得られた内側の視点の両方から、地方で暮らす意味を問いかける。 農業を起点にした味

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        • 羊と鋼の森

          お気に入りの曲を選ぶ。曲順もじっくり考える。誰かにプレゼントするときは、奮発してノーマルじゃなくてハイポジに。スマホに何百曲も放り込むようになった今から振り返ると、とても手間が掛かるやり方。でも、音楽に向き合う気持ちは今よりもずっと真剣だったなと、『日本カセットテープ大全』(辰巳出版)を読んで思い出しました。メーカーや工場への取材も読み応えがあり、カセットテープのデザインの変遷も、時代の移り変わりが感じられます。ちなみに、演歌を好む方にとっては、カセットテープはまだまだ現役で

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        • Korean-indies/R&B/jazz オススメ
          5本

        記事

          東京

          「好きにしたらいいよ」と親から常々言われていたので、大学進学か就職のタイミングで東京に出ることも考えた。しかし実際は神戸の大学に4年通い、特に理由もなく地元に戻った。今の生活に不満も後悔もないけれど、もし東京に出ていたら…と思うことはある。 90年代が語られることが増えたのは、良い意味でも悪い意味でも、振り返る対象になったからなのだろう。渋谷直角さんの『世界の夜は僕のもの』(扶桑社)には、東京の「あの頃の空気感」が描かれていて、その場所にいなかったにも関わらず、読むとヒリヒ

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          Do the right thing in USA

          映画『Do the right thing』ラスト近くの暴動シーン。主要な舞台であるイタリア人のピザ屋が破壊され、火が放たれた。次のターゲットは、ピザ屋の向かいにある韓国人の雑貨店。店主が拙い英語で「オレ白人じゃない!オレ黒人!君たちと同じだ!」と必死に訴えかける。「お前が黒人?ふざけるなよ」と更に険悪な雰囲気になるが、「やめておこう」と一人の男性がその場をおさめた。友好のあかしとして差し伸べた店主の手を、黒人たちが握り返すことはなかった。 韓国人店主はなぜ「同じだ!」と言え

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          食べる・歴史・志ん生

          (2019年1月執筆) 単身赴任を始めてそろそろ2年、節約のためになるべく自炊を心がけているが、レパートリーはさほど増えていない。同じようなものばかりでバランスが取れていないので、お腹まわりが年相応に成長している。 成長に見合った栄養が取れる給食という仕組みってよく出来てるよな…と手に取ったのが藤原辰史『給食の歴史』(岩波新書)。 貧困児童の救済という目的で、戦前から少しずつ給食という仕組みは整えられていったが、その背景には常に戦争があった。総力戦においては、子供も重要な後方

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          非常時に、本と本屋ができるかもしれないこと

          非常事態が起きた時に最優先されるべきなのは、もちろん衣食住に関わることです。そして、次にくるのが心のケアだと思います。本や雑誌がそこでどんな役割を果たせるのかを、頭の片隅に置きながら日々仕事をしています。 鎌倉幸子『走れ!移動図書館』(ちくまプリマー新書)は、東日本大震災直後に立ち上げられた移動図書館プロジェクトについての活動記録です。もらうのでもなく購入するのでもなく、「借りる」という行動を選ぶ理由。それは、借りた本を返す・期限という約束を守る・みんなで使うものは大切に扱

          非常時に、本と本屋ができるかもしれないこと

          地方の商いでヒントになる本

          景気が上向いているというニュースを見ても、残念ながら実感がありません。地方に住んでいるからか、少子高齢化や人口減少といった話題の方が気になるからかもしれません。 平川克美『「消費」をやめる』(ミシマ社)は、ビジネスの第一線で活躍してきた著者が、顔が見える小さな商いの大切さを語った本です。成長し続けなければ維持できない今の世の中は、色んなところで無理が生じています。それを変えるためには、「無駄なものを買わないという選択肢」を大切にすること、そして働き方から変えていくことが必要な

          地方の商いでヒントになる本

          2012年の本屋大賞

          「全国書店員が選んだいちばん!売りたい本」のキャッチコピーで、今やすっかりおなじみになった本屋大賞。2012年の大賞は、三浦しをんさんの『舟を編む』(光文社)でした。辞書の編纂という一見地味な舞台設定が、ここまで厚く、もとい熱く心躍るエンタテイメントになってしまうなんて、本当に驚きです。言葉を紡ぎ、辞書を編んでいく主人公。その真摯で「まじめ」な姿に共鳴し、協力を惜しまない人々。老若男女問わず、言葉を愛する全ての人に、原作だけではなくコミックもアニメも映画も自信を持ってオススメ

          2012年の本屋大賞

          じんわり暖かくなる本

          穂高明さんの『月のうた』(ポプラ文庫)は、病気で母を亡くした主人公の民子、継母となった宏子、実母の親友・祥子、父親の亮太が、それぞれの視点で語る家族の物語。ストーリーが進むに連れ、心に閉じ込めていた思いが明かされ、今まで見えなかった相手の優しさや強さに気づいていく。民子に、真摯に前を向いて生きることを教えたおばあちゃんがまた、かっこいい。 読書家として知られるお笑い芸人、ピース又吉直樹さんの、本にまつわるエッセイ集『第2図書係補佐』(幻冬舎文庫)。紹介されている本も渋くてお

          じんわり暖かくなる本

          見る/知る

          人間が外界から得る情報の8~9割は視覚に頼っている、らしい。メガネを外すのは風呂に入る時だけなので、自分の肌感覚としてもこの説は正しい気がしていた。 伊藤亜紗さんの『 目の見えない人は世界をどう見ているのか』(光文社新書)を手に取り、何枚ウロコが張り付いていたんだろう!?と、何も見えていなかった自分の感覚の鈍さに驚く。 例えば空に浮かぶ月。見える人には円形だが、見えない人には球体としてイメージされる。見える人にとっては、絵本などで「まあるいおつきさま」として幼いころから刷り

          今村翔吾 『じんかん』(講談社)

           仕えた主人を殺し、将軍を暗殺し、東大寺の大仏殿を焼き払う。「人がなせぬ大悪を一生のうちに三つもやってのけた男」と、あの織田信長に言わしめた極悪人・松永久秀。 その久秀が謀反を起こしたことを伝えに来たのは、小姓の狩野又九郎。信長に激昂されることを覚悟していた。しかし「奴は進めようとしているのだ」と穏やかにつぶやいた後、久秀の来歴を語り始める…。 とまどう又九郎に、信長は何を伝えようとしているのか。  幼いころに父を殺され母を失い、仲間を失い続けたことで、神仏を一切信じなくなっ

          今村翔吾 『じんかん』(講談社)

          新しい技術との出会いと戸惑いと(2018年1月)

          学生時代に使っていたのは、持ち運ぶには重すぎる兄からのおさがりのノートパソコンだった。卒論の保存先はフロッピーディスク。電話回線がつながるまでの長い時間をボンヤリと待った。ハイレベルな議論が交わされているパソコン通信の掲示板に参加する勇気など、もちろんない。インターネット以前の話だ。 今ならスマートフォンで大概のことができるようになった。じゃあその次は? これからの30年を示唆するのが『インターネットの次に来るもの』(ケヴィン・ケリー著 服部桂 訳 NHK出版)だ。人もモノも

          新しい技術との出会いと戸惑いと(2018年1月)

          ジャズ・アンバサダーズ 「アメリカ」の音楽外交史

          時代を追うごとにより自由な表現形態を追求し、演奏者個人の創造性を重視する「自由の国アメリカ」を象徴する音楽、ジャズ。第二次世界大戦後、「自由」を宣伝し国内の人種問題に対する負のイメージを払拭するため、アメリカはジャズミュージシャンを「ジャズ大使」として積極的に世界各国に派遣します。しかし、その思惑通りには行きません。ジャズのもう一つの側面である「抵抗の音楽」が、国境と人種を超えて影響を与え合う様子を浮き彫りにした斎藤嘉臣氏の『ジャズ・アンバサダーズ』(講談社選書メチエ)は、ま

          ジャズ・アンバサダーズ 「アメリカ」の音楽外交史

          残響/ハーレム/本屋/JAZZ (2016年3月)

          私たちの生活にも大きな影響を及ぼすであろう、アメリカの大統領選挙。立候補者たちがしのぎを削っています。国内外に多くの不安を抱えるアメリカという大国が「壁を築く」のか「壁を壊す」のか、日々のニュースに注目しています。 中村寛さんが『残響のハーレム』(共和国)で描いたのは、9.11直後のニューヨーク・ハーレム地区で暮らす黒人のムスリム(イスラム教徒)たち。現在も黒人への差別と暴力があり、またアフリカ系アメリカ人と、近年アフリカから移住してきた人たちとの間には、同じムスリムであっ

          残響/ハーレム/本屋/JAZZ (2016年3月)