![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/143351003/rectangle_large_type_2_62b1198bfb906b17540acc4a4bb575dc.png?width=1200)
ゆたかさのしてん
地元レペゼン。普段はバラバラに活動しながら、プロジェクトが立ち上がればサッと集まる仲間たち。才能あふれる生意気な若者を引っ張り上げる。偉大な先達を担ぎ出す。キッズも大人も同じステージで真剣勝負。ヒップホップの話?いや、『ゆたかさのしてん』(今井出版)の話だ。
著者の木田悟史さんは、日本財団の鳥取事務所所長として、色々な場所に出かけ、たくさんの人と言葉を交わす。関東出身である外側の視点と、対話から得られた内側の視点の両方から、地方で暮らす意味を問いかける。
農業を起点にした味噌麴(こうじ)づくり。山とともに生きるための林業。建築を通じてまちづくりにかかわる。街と暮らしを、街中で動きながら考える。育った場所で「楽しむ」をデザインする。狭い範囲だからできる、圧倒的地域密着型テレビ。自分のための場所は、周りの人にとっても大切な居場所。子供たちが自分で決める過程を大切にするポニー牧場。
この本で取り上げられている人たちの活動内容も、地域とのかかわり方も様々だ。だが読み進めていくと、共通点が見えてくる。表紙を飾る笑顔の写真が物語っているように、自分の人生を楽しむことに決めた人たち、という点だ。
「安定していないのが自然である(第1章の藤原さん)」ことをひとまずは受け止めて、ここを起点に次の道を模索する。並大抵の苦労ではないが、「自分の責任で自分が楽しいと思うことをやる(第2章の大谷さん)」から続けられる。「自分に嘘をつかず、後悔しない方を選ぶ(第5章の古田さん)」からまわりからも信頼される。
学びを楽しむ点も共通している。性別も年齢も関係なく、お互いから学び教え合う。その土地の歴史を知る、つまりその土地の時間と場所と人のつながりを知ることは、地域で活動するうえで絶対に必要だし、そうすることで「ここで暮らす意味」も導き出される。そしてそれは、「自分の生活がどう歴史や社会にコミットしていくかを体現すること(第7章の水田さん)」へと繋がっていく。
また、地元出身の人たちが、進学や就職などで一度は外の世界を経験していることにも触れておこう。内側から主観的に、外側から客観的に。どちらも必要な視点だ。
一方で、本書で取り上げられている人たちの活動に、興味はあってもなかなか飛び込めないのも事実。では何ができるか?それは「選ぶ」ことだ。地域にとってプラスになるものや場所。少し値は張るけど、せっかくならこの人から、この店で買う。毎日は無理でも、より良い選択を少しずつ積み重ねていけば、消費者である私たちは地域のゆたかさを支える点になれるはずだ。
ここから先は
¥ 300
Amazonギフトカード5,000円分が当たる
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?