「センスがない」を言い訳にしないために
絵心がない。克服するための努力は全くせず、上手くなることを諦めて数十年経つので、絵が描ける人は無条件で尊敬する。
圧倒的な画力を誇るマンガ家、藤原カムイさんの創作の秘密を解き明かす『プロのマンガテクニック 異世界ファンタジーの描き方』(玄光社)。
初期の作品から代表作『ロトの紋章』や近作まで、作品世界に合わせて様々な技法を駆使していることが分かる。もちろん描き方だけではなく、演出やストーリーの組み立て方も語られているので、かつて夢中で読んだ『雷火』や『犬狼伝説』を読み直したくなった。
今も学び続け「まだまだやっていないコトが沢山ある」と言い切る姿勢は、まさにプロフェッショナル。
国内外で活躍する現代美術家の牡丹靖佳さんが、絵だけではなくストーリーも手掛けたのが『ルソンバンの大奇術』(福音館書店)。
たった一度の失敗で全てを失った稀代のマジシャン、ルソンバン。カフェや公園の片隅で糊口をしのぐ生活を続けていたが、1人の少年と1匹ののら犬と出会い、マジックへの情熱を徐々に取り戻していく。牡丹さんの絵柄にぴったりの、ワクワクとドキドキのつまった冒険。
児童向けのお話だけど、挫折を味わった男が小さな友人と出会うことで変化していく姿は、良質なヨーロッパの映画を思わせる。どことなくつながりを感じさせる絵本「おうさまのおひっこし」(福音館書店)も合わせてどうぞ。
店頭に掲示するPOPやポスターを作るのも仕事。絵心だけでなくデザインのセンスもなかったので、伝えたいことが本当に伝わっているのか不安だった。
でも「センスがない」と言っているだけでは何も始まらないので、困ったときはロビン・ウィリアムスさんの『ノンデザイナーズ・デザインブック』(マイナビ出版)を読み返す。
コントラスト・反復・整列・近接を4つの基本原則に、どうすればわかりやすく伝えられるかを解説。流行り廃りの激しいデザインの世界で、版を重ねて20年以上売れ続けているロングセラー。
仕事で役に立つのはもちろん、普段目にするポスターやフライヤーのどこが優れているかが分かるようになった。
年をとっても学ぶことは大切だと、教えてもらった本だ。