見出し画像

2012年の本屋大賞

「全国書店員が選んだいちばん!売りたい本」のキャッチコピーで、今やすっかりおなじみになった本屋大賞。2012年の大賞は、三浦しをんさんの『舟を編む』(光文社)でした。辞書の編纂という一見地味な舞台設定が、ここまで厚く、もとい熱く心躍るエンタテイメントになってしまうなんて、本当に驚きです。言葉を紡ぎ、辞書を編んでいく主人公。その真摯で「まじめ」な姿に共鳴し、協力を惜しまない人々。老若男女問わず、言葉を愛する全ての人に、原作だけではなくコミックもアニメも映画も自信を持ってオススメできます。
2/18(日)からNHKのドラマも始まるので、こちらも楽しみです。

さて本屋大賞ですが、面白いのは1位だけではありません。ノミネートされた10作は、どれも外れなし!その中からオススメをピックアップします。まずは3位・大島真寿美さんの『ピエタ』(ポプラ社)。18世紀のヴェネツィアで、作曲家のヴィヴァルディに合奏・合唱の指導を受けていた孤児たち。と書くとハードルが高そうに見えますが、最初の取っ付きにくさを乗り越えれば、後は美しい旋律のようなストーリーに身を任せるだけ。楽譜にまつわる「謎」が明かされた時の驚きと感動は、言葉では言い表せません。個人的な一押しです。

次は5位の小川洋子さん『人質の朗読会』(中央公論新社)。衝撃的な序章にまず打ちのめされますが、だからこそ、その後に語られる穏やかで少し不思議な物語を、愛おしく感じます。

最後にご紹介するのは、本屋大賞とは外れますが、小川洋子さんが原作を手掛けたマンガ『最果てアーケード』全2巻(有永イネ:講談社)。大切な誰かを亡くした悲しみを、忘れるのでもなくごまかすのでもなく、きちんと向き合い、しっかりと抱き留めておくこと。小川洋子さんのファンで『人質の朗読会』を読んだ方なら、絶対に読んでほしい作品です。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集