地方の商いでヒントになる本
景気が上向いているというニュースを見ても、残念ながら実感がありません。地方に住んでいるからか、少子高齢化や人口減少といった話題の方が気になるからかもしれません。
平川克美『「消費」をやめる』(ミシマ社)は、ビジネスの第一線で活躍してきた著者が、顔が見える小さな商いの大切さを語った本です。成長し続けなければ維持できない今の世の中は、色んなところで無理が生じています。それを変えるためには、「無駄なものを買わないという選択肢」を大切にすること、そして働き方から変えていくことが必要なのだと思います。
高齢化=衰退ではないという議論を展開して賛否両論を巻き起こし、ベストセラーとなったのが藻谷浩介角『里山資本主義』(川oneテーマ新書)です。地域の中でお金を循環させながら、付加価値を見出して外とのつながりを作っていく。具体的な事例も豊富に紹介されいるので、地方の強みが実感できます。
「地方」で「経済」となると、やはり農業が思い浮かびます。酪農家である実家の実態を赤裸々につづったコミックエッセイが、人気漫画家・荒川弘『百姓貴族』(1~8巻 新書館)。酪農家の大変さをユーモラスに描いていますが、野菜の味ではなく見た目がきれいなものを選ぶ消費者への不満もチクリと。
そもそも「商い」って何だろう。つい考えてしまうこの疑問。髙田郁の時代小説『銀二貫』(幻冬舎時代小説文庫)を読んで、すとんと腑に落ちました。大坂の寒天問屋の主・和助は、訳あって仇討で父を亡くした武士の息子を救う。松吉と名を改めた少年は、料理人嘉平(かへい)と愛娘真帆(まほ)ら、情の深い人たちに支えられ、沢山の試練を乗り越えていく。商いとは誰かの思いを次の人へ伝えていくこと。答えはシンプルですが、時代小説としても恋愛小説としても、もちろん商売にまつわるお話としても、何度読んでも落涙必至の傑作です!