マガジンのカバー画像

my favorite movie

39
好きな映画を自由に語ろ
運営しているクリエイター

記事一覧

映画『BABY/BROKER』 〜人がフッと鼻を鳴らさなくなる時〜

映画『BABY/BROKER』 〜人がフッと鼻を鳴らさなくなる時〜

相手の言葉を受けた時に、フッと鼻を鳴らして軽い笑みを浮かべることが誰しもあるだろう。鼻が鳴った後の笑い方によって意味に強弱はあれど、否定であることに変わりはない。だからこそ、された方は当然あまり良い気持ちはしない。した方は、「あなたにわかるわけはない」とか、「知ったふうなことを言って」とか壁を作ってることを自覚しているかもしれないのだから。

鼻を鳴らされた後、冷静になって考えた時にこんなことを思

もっとみる
映画『ノマドランド』〜私も漂流してるのかも〜

映画『ノマドランド』〜私も漂流してるのかも〜

Ashさんのレビューを読んで未見だった『ノマドランド』を見たくなり、アマプラで鑑賞した。Ashさんありがとうございます。

この話、私にとってはデラシネの物語に映った。「だれも漂流者になりたくてなったのではない」と言われる方がいるかも知らんが、自分でその生き方を選んだのであれば話が変わってくる。ドロップアウトしたと自覚している者には卑屈さが見え隠れするが、自分でそれを選んだ者には誇りが見える。主人

もっとみる
『ツインピークス リミテッド』 メビウスの輪のように始まりも終わりもない物語だったのね

『ツインピークス リミテッド』 メビウスの輪のように始まりも終わりもない物語だったのね

そもそも、上の記事読んで、たまらなく「ツインピークス」を最初から見たくなり、DVDをBOXで揃えて見始めた。

2017年には全くアンテナに引っかかることなくスルーしてたのだけれど、プライムビデオの広告により知ることができた。感謝!2017年と言えば、トランプ政権が発足したり、もりかけ問題が賑わってた年ですわ。私は職場の花壇を整備したり、園芸ボランティアグループの発足を促したりしてる年だった。地域

もっとみる

『ツインピークス リターンズ』を見始めた。前作とその味わいが明らかに違っている。クーパーとともに25年後の世界に次元を飛び越えて連れてこられたような気持ちになってる。自分自身は変わっていないのに、周りが全て変化したような。これこそ浦島体験なのか?笑
共同体の世界から分断の世界へ

『ツインピークス』 Every family has a skeleton in the cupboard. 狭い世界の中に閉じ込められた善と悪の物語

『ツインピークス』 Every family has a skeleton in the cupboard. 狭い世界の中に閉じ込められた善と悪の物語

久しぶりに『ツインピークス』を通しで観た。TSUTAYAレンタルの最盛期に観たので25年以上も前の話。通しで24時間以上らしいけど、中毒性がある作品なので最後まで飽きなかった。流石!デビッド・リンチ。ツインピークスという狭隘な街の閉じられた世界の中で蠢く善と悪。善よりも悪が跋扈している世界。際どい話のオンパレードであるが、誰のこともとことんまで憎めないように描かれている。ローラ・パーマーの遺体が発

もっとみる
ルックバックしてみた。誰でもそのひと固有の物語を生きている。

ルックバックしてみた。誰でもそのひと固有の物語を生きている。

まさにルックバックだったよ!

背中を追い続ける、追われ続ける、光と影みたいにかけがえのないものの話だったね。京本が言ってたように、1人でも生きられるし作品は創れるんだろうけど、お互いの存在が唯一無二過ぎて良かったわ

、と娘からメールが来た。

二人では見に行けなかったけれど、その後に見て感想をくれた。

ちょっと原作も読んでみようという気になったので、アマゾンをポチッとして漫画を購入した。

もっとみる
連れづれシネマ 水金地火木土天アーメン♪

連れづれシネマ 水金地火木土天アーメン♪

娘にこれ良いらしいよ♪とラインしたら爆速で、「見たかったやつ!」と返ってきたので一緒に『きみの色』を観た。

Perfumeファン(テクノ・ポップ好き)で、「けいおん」も好きな娘はあたりまえにチェックしてたらしい。

こんなストーリー

劇場の出口で開口一番「今年観た映画でいちばん良かったわ」と娘。

「何が刺さったの」と聴くと、きみの他人への気遣いと自分のしたいことの心の葛藤のリアルさだと言った

もっとみる
映画「岸辺の旅」 自殺したゴーストはかく語りき

映画「岸辺の旅」 自殺したゴーストはかく語りき

「ドレミファ娘の血は騒ぐ」以来の黒沢清監督の作品鑑賞。

失踪した夫が、普通の人間のようなゴーストになって戻ってきた。そして、失踪していた3年間の軌跡を夫婦一緒にたどる。待ち受けていたものは…。

拠り所を失って虚ろに生きている妻(ミズキ)を演じる深津絵里がとても良い。この妻の目線から映画は展開していく。この世から逃げ出した夫(ユウスケ)を演じる浅野忠信も良い。ふたりともずっとエネルギーが薄い。裸

もっとみる
映画『ニューヨーク眺めのいい部屋売ります』 特に予定のない日曜の午後におすすめ

映画『ニューヨーク眺めのいい部屋売ります』 特に予定のない日曜の午後におすすめ

「10年ひと昔」というのだから、40年という歳月は随分と社会のルールや世相を変えてしまう。しかしながら、表面的な変化があっても、その深いところではあまり変わってないのではないか?とも思う。

『最悪のことを思いながら、最善のことを祈る』というのが、主人公アレックスのモットー。共感できる生き方。

その彼が家を売る決意をしてから数日間で忘れていたものに気づくという物語。

モーガン・フリーマンとダイ

もっとみる
映画『未来世紀ブラジル』 私の中に潜むブラジル

映画『未来世紀ブラジル』 私の中に潜むブラジル

学生時代にT先輩と一緒に見た映画。なかなか才気がある人で遊びでイラストを描いたりドラマの脚本を書いたりしてた。三つほど年上だったが、良く飲んで喋った。ビデオの機材を借りて、馬鹿げたドラマを一緒に作ったのも懐かしい思い出。タイトルは『マニラ二号』。如何わしさが満載だわ。彼の影響でモンティ・パイソンも観るようになって、ナンセンスなユーモアに笑い転げていた。

思えば、我々の若かりし頃は全共闘のような熱

もっとみる
映画『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』

映画『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』

初回は、映画館で、二度目はアマプラで、今回もアマプラで鑑賞。

昨年はこの時期、戦争映画特集を自分でピックして観ていた。『野火』『キャタピラー』『ダンケルク』『硫黄島からの手紙』『プライベート・ライアン』『フルメタルジャケット』『ハクソー・リッジ』
どの映画でも、人びとが軽々と踏みにじられる様が描かれている。私は僥倖にもそのような現場に遭遇せずに生きてきた。最近は何故か、以前よりも映画であるとわか

もっとみる
映画『ルックバック』 何かに誘われるような

映画『ルックバック』 何かに誘われるような

ユーチューブ見てたら盛んにオススメしてきた映画が『ルックバック』。なんか惹かれるな、と思ってたら話題作に、と思ってたら、一日に二回上映になってる。そろそろ終わりそうだな、と娘を誘ったけれども都合が合わずに結局ひとりで鑑賞。

『ルックバック』タイトルが良い。タイトルだけで妄想が進む。

未来に向かって進んでる今はすぐに過去になる。あの時こうしておけば良かったのに、と悔やんでいる今もすぐに過去になる

もっとみる
映画『ビッグフィッシュ』 物語は、人に永遠の生命を与える

映画『ビッグフィッシュ』 物語は、人に永遠の生命を与える

近所のGEOを時々覗いては、DVDのセル品を5枚1000円で購入している。昔見てもう一度見たいと思うものと見逃していたものを漁るのが楽しみ。

今回の掘り出し物は、ティム・バートン監督の『ビッグフィッシュ』

映画好きには、今さらな20年前の作品だけれど。私にとっては、初見。見逃さずに良かった。

生きれば生きるほど、現実の過酷さや全ての人に平等に優しいわけではない世界の現実に晒され、誰しもが少し

もっとみる
映画「さざなみ」 人の心はやわらかくて壊れやすい。すべてを正直に話さなくても…。

映画「さざなみ」 人の心はやわらかくて壊れやすい。すべてを正直に話さなくても…。

『さざなみ』塩辛い映画だった。

人生の晩秋を迎えて、45年も寄り添ってくれた妻に全てをさらけ出さずとも良いのになあ。きっと話さないほうが良いこともあるのだろう。

ジェフよ、いくら愛する妻とはいえ、相手の全てを知ることは不可能だし、自分のすべてを同じように理解してもらうことは不可能に決まってるじゃあないか。

人は何らかの秘密を抱えて生きていくもの。そんな話は墓場まで持っていってくれ。

長年連

もっとみる