古賀弘規

古賀弘規

マガジン

  • 小説 コーチ物語

    コーチングのコーチ、羽賀純一。 彼のもとには多くのクライアントがやってくる。 この物語は、羽賀コーチによってクライアントがどのように成長し、羽ばたいていくのかをクライアントの視点から描いた物語である。 現役のコーチングのコーチが描く、人生のエッセンスが詰まった小説です。

  • 幸せな男女関係

    このマガジンでは、毎回幸せな男女関係を築くための考え方についてお届けします。 これから彼氏、彼女を作ろうと思っている方、すでにパートナーはいるけれど、もっと仲良くなりたいと思っている方におすすめの情報です。

  • Cafe Shelly

    魔法のコーヒー・シェリーブレンドを淹れてくれる喫茶店、カフェ・シェリーを舞台とした物語です。 主人公は訪れるお客様。今回はどんなお客様が訪れるのかな?

最近の記事

コーチ物語 クライアント32「恋、それとも愛」その4

「こんにちは。お茶菓子持って来たよ。すぐにお茶を淹れるね」  そう言ってエプロン姿の女性は、キッチンの前に立ちお茶の準備を始めた。 「あ、あの人は舞衣さんといって下のお花屋さんをやっているんです。ボクのところにお客さんが来たら、こうやってお茶を淹れてくれるんですよ。舞衣さんの淹れたお茶は絶品ですから、ぜひ飲んでください」  へぇ、あの人が恵子の務めているお店の人か。思ったより若いんでびっくりした。なるほど、恵子はこの羽賀さんと舞衣さんをなんとかしてくっつけたいと思っているんだ

    • コーチ物語 クライアント32「恋、それとも愛」その3

      「この前話した羽賀さんがいいよって言ってくれました。 できれば今日の午後時間がとれませんか?」  私は今日は特に何も予定が入っていない。ゆうとも五時までにお迎えに行けばいいのでわりとゆっくり話ができそうだ。 「じゃぁ、午後一時からいいですか?」  メールを送信。程なくして「了解」という返事。  ここでふぅっとため息。このまえ、恵子と話したことを思い出した。私はシュウと一緒になりたいのか。そう聞かれればそこまでの気持ちはない。ただ恋がしたかった。また燃え上がるような恋が。その気

      • コーチ物語 クライアント32「恋、それとも愛」その2

        「そうだったんだ。まさか、おとなしそうなあなたがそんなことを……」  恵子はさすがに驚いた様子。けれど、私の言葉を冷静に、淡々と受け止めてくれたおかげで、私も気持ちがスッキリしてきた。 「それで、優子はどうしようと思っているの?」 「うん、もう終わらなきゃとは思ってる。でも、その一歩がどうしても踏み出せないの。あんなに優しい人はいままでいなかった。だから……」  言いながらシュウの笑顔が浮かんできた。シュウの一言一言が私にとってはうれしかった。心ときめく恋がこんなにも楽しいも

        • コーチ物語 クライアント32「恋、それとも愛」その1

           もう終わりにしよう。そう思ってスマホに向かう。そしてメールを打つ。 「さようなら」  この五文字を打って、そして送信ボタンに手をかける。けれど画面に指が触れる寸前で止まってしまう。  これを押せば終わる。なのにそれができない。もう終わらなければいけないのに。もうこの恋を終わらせなければいけないのに。  ここであの人を思い出してしまう。あの優しい笑顔、そしてぬくもり、私にかけてくれた言葉。さらにはベッドで私に教えてくれたあの感覚。全てが鮮明に思い出される。  結局、今日もメー

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        • 小説 コーチ物語
          315本
        • 幸せな男女関係
          45本
        • Cafe Shelly
          1本

        記事

          幸せな男女関係「相手の機嫌をとろうとするな、自分の機嫌を良くしよう」

          カップルになると、相手のご機嫌というのがとても気になりますよね。 特に夫婦となると、相手の機嫌がよければ家庭内の雰囲気はよくなるし、逆に機嫌が悪ければ家庭内はギスギスしたものになります。 だから、私達はつい「相手の機嫌を良くしよう」としてしまいがちです。 相手に気を使い、なんとか笑顔でいてもらおうといろいろな努力をしている人も多いことでしょう。 ところが、これが本末転倒になってしまうこともあります。 どういうことなのか? 相手の機嫌ばかり気にしてしまい、疲弊して自分の機

          ¥100〜
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          幸せな男女関係「相手の機嫌をとろうとするな、自分の機嫌を良くしよう」

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          コーチ物語 クライアント31「命あるもの、だから」その8

           さらにもっと驚いたことが。石垣先生の車の助手席から降りてきた人。とてもきれいな女性。しろいワンピースに長い髪。ちょっときゃしゃな体つきだけど、笑顔がとても素敵。 「わぁ、この子ね」  そう言ってその女性はおばあちゃんが抱っこしている子犬ちゃんを抱きかかえた。子犬ちゃん、最初はクンクン匂いをかいでいたけれど。そのうちその女性の鼻をペロペロと舐め始めた。もう慣れた様子だ。 「石垣先生、どうして?」 「はは、あらためて進藤に紹介しよう。私の婚約者の由美恵さんだ」 「こ、婚約者!?

          コーチ物語 クライアント31「命あるもの、だから」その8

          コーチ物語 クライアント31「命あるもの、だから」その7

           そうして数日が過ぎて、私にとってはこの夏忘れられない最大の出来事が起こることになる。この出来事は本当は望んでいたことだけれど、でも心の奥では避けたいところだった。その出来事とは……。 「由香、飼い主見つかったわよ」  山下さんの施設から帰ってきて、私はお母さんからその言葉を耳にした。一瞬喜んだ顔。でもその後すぐに私は複雑な気持ちが湧いてきた。 「そっか、もう子犬ちゃんと会えなくなるのか……」  新しい飼い主に慣れてもらうために。里親となった家庭に馴染んでもらうために。私は子

          コーチ物語 クライアント31「命あるもの、だから」その7

          コーチ物語 クライアント31「命あるもの、だから」その6

           夏休み。私は部活をやっていない。だから基本的に昼間はとても時間が空いている。  去年は友達とたくさん遊んで、ちゃんと課外授業も受けて、それなりの夏休みを過ごせた。けれど、振り返ると「何かをやった」という充実感はそこにはなかった。  けれど今年は違う。 「行ってきます」  私はまず最初に、羽賀さんの事務所に向かう。そしてそこで子犬ちゃんをあずかる。昼間は羽賀さんもアシスタントのミクさんも忙しいから。そして子犬ちゃんを自転車のカゴに乗せて、山の方に向かう。行き先は山下さんの動物

          コーチ物語 クライアント31「命あるもの、だから」その6

          コーチ物語 クライアント31「命あるもの、だから」その5

           石垣先生とお母さん、二人の姿を目にしてたじろぐ私。そしたら羽賀さんが私にこんなことを言ってくれた。 「由香ちゃん、ボクが二人を呼んだんだよ。余計なおせっかいだったかもしれないけど、ボクからも先生やご両親に現実を知ってもらいたいと思ってね」  羽賀さんが二人を……でも、二人とも私にそんなこと一言も言わなかったのに。よく来てくれたなって思った。 「こちらが山下さん。今は捨てられた動物たちの命を救いたくて、こうやって動物たちの保護施設を自分でつくって、運営している方なんだよ」  

          コーチ物語 クライアント31「命あるもの、だから」その5

          コーチ物語 クライアント31「命あるもの、だから」その4

           その日から私の生活は一変した。どうやったら子犬ちゃんを救えるのか。子犬ちゃんだけではない。保健所に保護された犬、捨てられた動物たちをどうやったら救うことができるのか。私の頭のなかはそれ一色になってしまった。  まずは犬達を保護している山下さんに会いに行かなきゃ。そこでどんなことをしているのか、どんな気持ちでその活動をやっているのか。それを知ることが大事だな。  そんなとき、一通のメールが。羽賀さんのところのミクさんからだ。 「山下さんのブログがあるから、これを読んでみるとい

          コーチ物語 クライアント31「命あるもの、だから」その4

          コーチ物語 クライアント31「命あるもの、だから」その3

          「こんにちはー」  私は恐る恐る、羽賀さんの事務所の扉を開いた。もしかしたら子犬ちゃんを預かってもらったのが迷惑だったかもしれない。  だが、扉を開けると笑い声が。そしてそこには数人の人の姿があった。さらに驚いたのが、その人達の中心にいるのが…… 「子犬ちゃん!」  私の声にみんなが反応。一番反応したのがあの子犬ちゃんである。子犬ちゃんは私の方に一目散に駆け寄ってくる。その目はとてもキラキラしていて、思わず抱きしめたくなる。 「由香ちゃん、いらっしゃい」  羽賀さんがにこやか

          コーチ物語 クライアント31「命あるもの、だから」その3

          コーチ物語 クライアント31「命あるもの、だから」その2

          「あ、あの……」  恐る恐る、背の高い男性に声をかける。 「ん、どうしたんだい?」  見ると、その男性の腕に抱かれていたのは…… 「あーっ!」  思わず声を上げてしまった。なんと、あの、まだ名前もつけられていない白い子犬がその男性に抱かれているじゃない。 「あ、この犬? ボクがジョギングしていたら見つけちゃって。どうやら捨て犬みたいなんだけど。この犬のこと、知ってるの?」  私は一瞬迷った。本当のことを言おうか。しかし、私が捨てたって思われるのがなんだか嫌だった。けれど、この

          コーチ物語 クライアント31「命あるもの、だから」その2

          幸せな男女関係「共通項は30%、秘密は70%がちょうどいい」

          カップルになったら、なんでも打ち明けられる関係になりたい。 これは誰もが思うことでしょう。 特に夫婦になったら、お互いになんでも知っておきたいと思うもの。 実はこれ、大きな間違いなんです。 すべてのことをパートナーに知られてしまうと、どんな気持ちになるでしょう? 「自分にはプライベートがないのか!」 「わたしのの自由を返せ!」 なんてこと、言われそうですね。 いくらカップルになっても、そして夫婦になって一緒の生活をおくるようになっても、人に知られたくないことは出てくるも

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          幸せな男女関係「共通項は30%、秘密は70%がちょうどいい」

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          コーチ物語 クライアント31「命あるもの、だから」その1

          「ごめんね、ごめんね……」  雨の中、私はなんどもそう言いながらダンボールの箱を川の橋の下に置いた。そして、後ろを振り返らないようにかけ出した。 「クゥ〜ン、クゥ〜ン」  まだあどけないその鳴き声が耳に響く。それを耳にする度に涙が溢れ出る。けれど、あの子とはもう一緒にはいられない。たった二日間だったけれど、とても楽しかった。でも……  家に帰り着くと、お母さんが真っ先に聞いてくる。 「由香、ちゃんと捨ててきた?」  私は無言でうなずく。 「高校生にもなって、できることとできな

          コーチ物語 クライアント31「命あるもの、だから」その1

          コーチ物語 クライアント30「ハイヒールをはいて」その8

          「ご、ごめんなさい」  私は慌てて涙を拭う。リーダーがこんな姿を見せるなんて、恥ずかしい。  けれど、私の姿を見て羽賀さんがこんな言葉を。 「三枝さん、このメンバーはみなさん、あなたを心から迎え入れてくれる人たちですよ。だから、安心して今の気持ちを伝えてみませんか?」  安心して。思えば私は今まで戦場で戦ってきた。ビジネスという名の、営業という名の。そこでは気を抜くと、すぐに敵であるライバル会社から撃たれてしまう。いや、撃つのはライバル会社だけではない、内部の他の男性社員から

          コーチ物語 クライアント30「ハイヒールをはいて」その8

          コーチ物語 クライアント30「ハイヒールをはいて」その7

          「おっはよーございまーす!」  元気な声で宮原さんがやってきた。それにしても、すごい格好だな。超ミニスカートで若さ満点って感じ。私にはさすがにあの格好はできないなぁ。  ここはボーリング場。今日はWプロジェクトメンバーの懇親会。その第一弾として、ここでボウリングからスタートする。  すでに私と飯島さんは会場についていた。まだ来ていないのは桐山さん。そしてもう一人、この懇親会を企画した羽賀さんも来ていない。まぁ、待ち合わせ時間まであと五分ほどあるからなぁ。  私は飯島さんの方を

          コーチ物語 クライアント30「ハイヒールをはいて」その7