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Tale_Laboratory
2021年9月30日 11:17
「今日の成果を報告せよ!」天を衝く高い高層ビルが立ち並ぶ区画の中に、偶然のようにポッカリと開いた四角い空間。周りの建物のせいで日の光りはほとんど当たらないが、それが逆に彼らにとっては好都合だった。昼間から薄暗く、表の世界から切り離されたようなその小さな広場は、秘密基地としてうってつけだったのだ。ここを使用しているメンバーは3人と一体。10歳一人と9歳の男女が一人ずつ、9歳の女の子が所有してい
2021年9月29日 11:18
どこまでも果てしなく広がる荒野。青い空と赤茶けた大地が地平線で交ざり合っている。そして鳥の目から見たら、その荒野には「傷」があった。南北に掛けて、とてつもなく大きな割れ目が大地を走っていた。その穴は底が見えないほど深く、一番幅が広い所では、そこに街が一つ入ってしまうほどであった。その大地の裂け目は、大昔の天変地異によってできたという説や、それより遥か昔、巨大な善き神と悪しき神との戦いでで
2021年9月28日 11:05
どうも、いらっしゃいませ。今日ここに来るのは初めてですよね?ああ、楽にしてください。えっと、予約の情報を見たところ、今日はずいぶんと遠い所から来てくださったみたいですね。では改めて、当店へお越しいただきありがとうございます。ご予約内容は、今の性格を変えたいとのことでしたね。いつも優柔不断で、いざという時に自分で判断が出せず、結局周りの意見に流されるだけで、それなのに後からそれを後悔する、と。
2021年9月27日 10:31
街の中央で歓声が上がっていた。その大きな喜びの声の中心にいるのは一人の若者。彼は、この地方を根城にして周辺に住む人々に長い間脅威を振りまいていた黒竜を先日倒したのだ。今はそんな彼を英雄と称える人々が道を埋め尽くしている。人々の歓声に持ち上げられて、その若者は自分の持っている剣を高々と天に掲げた。一層湧き上がる歓喜の声。その観衆の中に一人、眼鏡を掛けた笑顔の男が立っていた。だが、彼の笑
2021年9月26日 14:23
「つまんないなあ~」窓を伝う雨水を見ながら一人の少女がつぶやいた。部屋の中は綺麗に整えられており、本や人形、その他彼女の遊び道具になりそうなものは豊富にあった。しかし彼女は飽きていた。外に出たがっていた。もう300年、この家から出ていない。吸血鬼の彼女は、300年と少し前に、ちょっとした『いたずら』を起こしたことでここに閉じ込められてしまった。吸血鬼は流れる水を渡ることができない。決
2021年9月25日 12:20
2135年。地球人類、初めて地球外知的生命体との接触に成功。初の接触は地球よりも遥かに文明の進んだ星の生命体で、温和で友好的だったのが運が良かった。その後、そのアイミス星との交流により地球の科学技術も急速に進化を遂げる。2187年。ワープ技術の開発に地球独自で成功を収める。2210年にはアイミス星以外の外星人との交流も深まり、交流星は50を超えていた。その後も、接触と交流、対立と融和を繰
2021年9月24日 11:09
一隻の船が進んで行く。風を帆に受け悠々と。だがその船が進む足元に水は無い。あるのは、延々と続く砂である。ここは砂の海、砂海が広がる世界。太陽の光りを受けて、黄金色に輝く砂が場所ごとに異なる流砂となって世界中を周っている。船はその流砂に乗って移動するための手段であり、人々は砂と共に生きている。砂海の中は強烈な流砂だけでなく、その中で生きている生物もおり、中には狂暴なやつもいるため砂海を渡る
2021年9月23日 10:58
天界は清らかな所である。そう考える人間は数多い。しかし実体はそういうわけではない。天界に住んでいる者たちにも心はある。心があるということは、そこに善もあれば悪もある。だが地上に住む人間たちと同じように、天界に住む者たちも、特別善でもなければ悪でもないのである。善か悪か、どちらかに振れている存在がよく目立つというだけなのだ。だから、白と光がイメージの天界にもドス黒いスペースは存在するので
2021年9月22日 14:12
「おー、動いてる!動いてるぞ!」「ああ、もう遅いですから静かにしてくださいね」夜行列車の客室の一つで、外を眺め騒ぐ少女を一人の男がたしなめていた。「これが列車か。こんな大きな塊が動くなんて、一体どんな神様が力を貸しているんだ?」この二人が出会ったのは2週間前。彼女、エスパナの住んでいる土地に、科学者のゼルフがやってきたことが始まりである。その土地には古くから伝わる古代遺跡があり、ゼルフは
2021年9月21日 14:15
人気者になるのが夢だった。夢というより憧れに近いものかもしれない。人気者になって注目を集めたいが度胸は無く、学生の頃も、クラスの人気者というより、仲の良いグループの中心程度だった。だからユーチューブに動画を投稿し始めてからも特にパッとはしなかった。注目されたいくせに、顔出しするのはリスキーだと考え、自分の声のみでゲーム実況などを中心に活動をしていた。再生数はゼロというわけではないが、有名ど
2021年9月20日 14:22
式神職人の朝は早い。夏だろうが冬だろうが、まだ日の昇らないうちから水垢離で体を清め、焚火の前での瞑想を経てようやく式神製作にかかる。どんなに優れた技術を持っていようと、まずは心を整えないと何事も始めてはいけないという代々伝わる伝統である。式神製作に使う道具も、厳選された材料から作られ、製作者と共に長い時を過ごしてきたまさに相棒と呼ぶに相応しい物であり、この道具を失うことは、自らの腕を失うこと
2021年9月19日 13:58
「ふぅ・・・」一息をつく男が座っているのは、公園のベンチ。夏が過ぎ、秋を迎えようとしている季節的にはちょうどいい気温の日々。心地のいい風がその身に吹き抜けた。「運動しやすい季節になったな」男は上下共にランニングウェアを着ていた。ちょうど一走り終えて休んでいるところだった。「・・・少しは効果が出て来ただろうか」自分の体をじっと見つめる。彼が運動を始めたのは分かりやすく、健康のためだっ
2021年9月18日 10:46
異世界。それは今自分がいる世界とは全く異なる世界。だと考えている人がほとんどだろう。だが真実は違う。いや、それも間違いなく異世界なのだが、それはほんの一部の中の一部に過ぎない。科学が異常に発達した世界と、魔法が存在し、ドラゴンが空を飛ぶ世界とは物事の両極であり、黒と白、光と闇、アルファとオメガのようなもので、本来はその間に無数のグラデーションがある。世界と世界の間は、実は薄いカーテンで隔て
2021年9月17日 10:19
「うーん、どうしようかな~~、迷うな~~」大勢の話し声、笑い声が混ざり合い、一種のの音楽のように室内に響き渡っている。そのテーブルの一つで、酒を飲みながら悩んでいる男がいた。その向かいに座っているもう一人の男がつまみに箸をつけながら尋ねた。「どうした?さっきからぶつぶつと」「いや、ガチャのことなんだけどな」「ああ、なるほどね」ガチャと聞いただけで大体のことを察したようだ。「もう1回