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空想お散歩紀行 預言系ユーチューバー

人気者になるのが夢だった。夢というより憧れに近いものかもしれない。
人気者になって注目を集めたいが度胸は無く、学生の頃も、クラスの人気者というより、仲の良いグループの中心程度だった。
だからユーチューブに動画を投稿し始めてからも特にパッとはしなかった。
注目されたいくせに、顔出しするのはリスキーだと考え、自分の声のみでゲーム実況などを中心に活動をしていた。
再生数はゼロというわけではないが、有名どころと比べるとゼロも等しい所謂底辺投稿者だった。
あの時までは・・・
ある時、俺のチャンネルに一つの動画が投稿されていた。自分で投稿した覚えはない。
その動画のタイトルは『預言』とだけ書かれていた。
何だこれと思って再生してみると、投稿日から3日後に○○地方で大雨が降るというものだった。
一応天気予報で調べてみたが、当日のその地方は晴れ。
何なんだ?チャンネルが乗っ取られた?とも思ったが、少し様子を見ることにした。
そして3日後。動画内にあった場所で突然のゲリラ豪雨が降り注いだ。
それからというもの、不定期ではあるが自分のチャンネルに謎の預言動画が投稿され始めた。
正確に言うと、ユーチューブの予約機能を使って事前に投稿される。
今日が9月21日に投稿される動画は、公開されるのは9月28日。そして動画内で預言されるのは決まって3日後のこと。つまりこの場合だと10月2日のことが預言されている。
世間的には3日後のことを動画で知るわけだが、俺だけは10日後のことを事前に知ることができるというわけだ。
最初は、天気のこととか、どこかでちょっとした地震が起きるとか程度の預言だった。確かにすごいと言えばすごいが、当てずっぽうでやっても当たる時は当たるかもしれない。
しかし、的中率が100%となると話は別だ。
俺のチャンネルは次第に話題を呼び、登録者数を増やしていった。
相変わらず誰が動画を投稿しているのかは不明だ。チャンネルの乗っ取りかもしれないが、こんなことをして犯人に得があるのか分からない。登録者数や再生数が増えたことで発生する収益は全部俺のものになるというのに。
不気味に思いながらも、自分自身のチャンネルが大勢の人に注目されているのが嬉しかった。自分の実力ではないけれど。
しかし、その喜びは180度転換することとなる。
ある時投稿された預言動画の内容が、世界的に有名なミュージシャンが、通り魔に襲われて死亡するという内容だった。
しかも、その動画には初めて音声が付いていた。
それが、俺自身の声だったのだ。
そして預言の通り、3日後にそのミュージシャンは死んだ。
それからと言うもの、預言動画は激しい内容になっていった。
『テロリストによる破壊』『世界的大企業の工場が爆発』『大都市での暴動』
全てが俺の声で預言され、そして全てがその通りになった。
俺のチャンネルは世界的に話題になり、登録者数は1000万を超えようとしていた。
さすがにそこまでいくと、警察も黙っていられなくなったらしく、これらの預言に俺が何かしら関与していると思われ、そして、
俺は今、牢屋の中にいる。
全て説明したが当然理解されるはずもなく、俺とは無関係に動画が投稿されていることを証明するために、ネットにアクセスできない状況を作るために牢屋に入っている。
だが、それは1日と続かなかった。
俺は牢屋から出され、警察側から協力を要請されることになる。今のところ、唯一手がかりとなるのが俺自身だからだ。
そして、俺が牢屋に入っている間にチャンネルに投稿された預言動画は、
『△△国、○○国に宣戦布告。第3次世界大戦始まる』
今までに無い規模の預言。今までは決して変えることができないと思っていた預言を変えるための戦いが始まった。
世界の破滅の始まりまであと10日。

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