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空想お散歩紀行 未来永劫続くお話

2135年。地球人類、初めて地球外知的生命体との接触に成功。
初の接触は地球よりも遥かに文明の進んだ星の生命体で、温和で友好的だったのが運が良かった。
その後、そのアイミス星との交流により地球の科学技術も急速に進化を遂げる。
2187年。ワープ技術の開発に地球独自で成功を収める。
2210年にはアイミス星以外の外星人との交流も深まり、交流星は50を超えていた。
その後も、接触と交流、対立と融和を繰り返しながら地球は宇宙へとその活動範囲をどんどん広げていった・・・
「と、言うのがおおまかな地球が宇宙へ出てからの流れなのですが」
Uの字型のテーブルの真ん中に座っているスーツを着た司会者役の男が話を切り出した。
テーブルの両側にそれぞれ識者やら専門家、コメンテーターが座っている。
これはどの時代でもある討論番組の一つだった。
議題は、2500年を迎えた今、社会問題となっている『若者の宇宙離れ』についてだった。
学者風の初老の男が、統計から現在20代から30代の若者の4割が産まれてから一度も地球の外に出たことがないと語りだした。
これは過去最高の数値であり、地球に引きこもる若者は問題であるとした。
長年教育に携わっているという女性の専門家も、宇宙に出て多くの異星人と交流をすることが人格形成に良い影響を与える。一つの星の中の人たちとばかり付き合っているようでは、これからの宇宙社会を乗り越えていけないと、今の若者は人生に対する意欲が衰えていると批判を飛ばした。
逆に、若者から支持を得ているコメンテーターのヒゲを生やした男は、積極的に地球外に出ていたのは昔の話で、それは外に出たくて出ていたわけではなく、そうしないと情報も物も得られないから仕方なくしていたと持論を展開した。
今は極光速通信でどこでも宇宙中の情報が手に入るし、欲しい物があれば、20パーセク以内なら翌日には届くほど通販も発達し若者は積極的に利用している。むしろ昔の人よりも宇宙に対して貪欲なのが今の若者だとのこと。
自分が生まれ育ってきた環境の違いが価値観の違いを生み、価値観の違いが論争を生む。これは何千年も前から繰り返されてきた、知的生命体のプログラムのようなものかもしれない。
結局、その場の全員がああだこうだと自らの主張の正当性を語り、その議題はタイムアップを迎えた。
司会者の男が一旦ここでCMを挟む。
CM明けの次の議題は、『異星人間の差別問題。価値観の違いはどこまで許されるべき?』とのことだ。

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