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小さな家の小さな庭の話

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住宅街の小さな庭にも、四季がやってくる。
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記事一覧

エッセイ 冬の贈り物

エッセイ 冬の贈り物

 2024年、年明けというのに雨だ。札幌暮らしは48年になる。12月に雨という記憶はあるが、1月の雨は初めての経験だ。

 我が家の庭は、落雪住宅のため家屋が土地の中央寄りに建っている。
 広めの南側、日の当たる狭い東側、半日影の北の庭は建築当初から、菜園だったり果樹園、花壇にしている。
 西側は車庫と玄関アプローチだ。

 東側に植えてあるリンゴの木には、鳥の餌台を取り付けてあり、毎日のように小

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エッセイ きさらぎの贈り物

エッセイ きさらぎの贈り物

 2月は三寒四温という言葉が示すように、寒暖の変化が大きい。
 札幌の住宅街の道路はざくざくだ。先月は降雪量が少なくて、庭の果樹も雪の布団をまとえずに寒そうに見えたが、今は例年通りの積もり具合だ。

 我が家の庭は、落雪住宅のため家屋が土地の中央寄りに建っている。
 広めの南側、日の当たる狭い東側、半日影の北の庭はそれぞれの特性に合わせて、菜園や果樹園、花壇にしている。

 東側に植えてあるリンゴ

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エッセイ 早春の贈り物

エッセイ 早春の贈り物

 札幌市の西方に位置する我が家の庭で、雪が解け始めて真っ先に顔を出すのは蕗の薹だ。
 そのフキは京ブキという種類だと分けてくれた知人が言っていた。
 山や土手に出るものよりトウも葉も細く小さめ。
 笊に山ほど採れたトウを丁寧に洗って天ぷらにする。えぐみや苦みは少ないが、香りが高く春そのものの味わいだ。
 トウが咲き終わり、若葉が出始めるのは水仙が咲くころ。
 若葉もそのまま天ぷらにする。トウや茎と

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エッセイ 立夏の贈り物

エッセイ 立夏の贈り物

 5月、サクラが咲き終わるころ、我が家の庭のリンゴの木には紅梅色の小さな蕾がつく。
 蕾は日に日に膨らみ桃色になり、中旬には白と薄ピンクの花びらがほころび始める。
 お天気が良いと、ダイニングの窓から、大小さまざまな蜂が蜜を吸いに来ているのが見える。
 一番目立つのは、マルハナバチだ。毛むくじゃらの黒い体に黄色い線が入った大きな蜂だ。小ぶりで黄色いのは西洋ミツバチだろう。

 リンゴは品種の違う木

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エッセイ 水無月の贈り物

エッセイ 水無月の贈り物

 郭公の鳴き声が聞こえると霜の心配がなくなるので、豆や苗を植えてよいと言う。
 我が家でも庭の菜園に苗ものやエダマメなどを植えつけていく。

 エダマメは土の中で水を含んで柔らかく膨らみ、根を下ろす。芽を出す前後は山鳩の食べごろなので油断できない。
 白い不織布の芽出しシートを敷く、防鳥糸を張るなど様々な防御策がある。
 私はかなり前から、ポリスチレンでできたコーヒーの使い捨てカップの底を切り取り

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エッセイ 真夏の贈り物

エッセイ 真夏の贈り物

 夏になると、我が家の御菜は、「和食」より「地中海食」が多くなる。
 庭の菜園の夏野菜とベリー類が収穫時期を迎えるからだ。

 「地中海食」とは、オリーブ油、野菜、穀類、鶏肉や魚、ナッツ、フルーツ中心の地中海沿岸諸国の伝統食を指す。
 地中海食がユネスコの世界無形文化遺産に登録されたのは「和食」の3年前だ。
 認知症や心疾患の予防効果が高いと、世界の注目を浴びている。

 私が料理で使う食用油は、

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エッセイ 庭に贈られたもの

エッセイ 庭に贈られたもの

我が家は西向きの三角屋根で、雪は南のやや広めの前庭と北側の裏庭に落ちるようになっている。昨年の晩秋、裏側の燐家に落雪で迷惑が掛からないようにブロック塀を設置した。

工事が終わったのは、今にも寝雪になりそうな時期だ。これで今年は多少の大雪でも安心と、ひとまず胸をなでおろした。

ブロックの塀は地中3段地上4段、転倒予防の控壁3個。幅9メートルほどの規模だ。

裏庭は北向きで、日当たりがあまりよくな

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