エッセイ 早春の贈り物
札幌市の西方に位置する我が家の庭で、雪が解け始めて真っ先に顔を出すのは蕗の薹だ。
そのフキは京ブキという種類だと分けてくれた知人が言っていた。
山や土手に出るものよりトウも葉も細く小さめ。
笊に山ほど採れたトウを丁寧に洗って天ぷらにする。えぐみや苦みは少ないが、香りが高く春そのものの味わいだ。
トウが咲き終わり、若葉が出始めるのは水仙が咲くころ。
若葉もそのまま天ぷらにする。トウや茎とは違い、青臭く濃厚な味わい。
私のフキ味噌レシピは、香りが強い方が美味しいので、山ブキのトウを山から採ってきて使う。
オリーブオイルで炒めて味噌と味醂で味をつけ最後に炒った鰹節をたっぷり混ぜると絶品完成。
クロッカスやレンギョウが咲くと、こぼれ種で育つミツバと地下茎で増えたセリを毎日のようにお浸しや和え物で食べる。
ミツバは豆腐を入れてとろみをつけた汁にするのは知人のおすすめレシピだ。
2合ばかりの米にサバ缶をまるまる入れ、みりん、酒、しょうゆを加えて炊き、刻んだセリを山ほど混ぜ込むセリご飯は、簡単だが香りが高くさっぱりとしており意外なご馳走と言える。
青ネギやアサツキ、行者ニンニクが15cmほど育っている。
アサツキは辛味苦みがないので薬味として重宝だが、さっと湯通しして酢味噌和えにもする。
夏にピンクの花をつけるのはエゾネギとも呼ばれるチャイブだ。
春の見た目はアサツキと区別がつかないが出番は夏。刻んだ小ネギとピンクの花をソーメンや冷や麦に散らしていただく。
長く暮らしているうちに増えた庭の多年生植物。土に合っているものが残って今日に及ぶ。
長い冬のあと雪が融けると、スーパーのお世話にならずに、食卓に旬の苦みや香り、彩りを添える春の贈り物は、我が家の宝物だ。
(2023年4月21日)