エッセイ 立夏の贈り物
5月、サクラが咲き終わるころ、我が家の庭のリンゴの木には紅梅色の小さな蕾がつく。
蕾は日に日に膨らみ桃色になり、中旬には白と薄ピンクの花びらがほころび始める。
お天気が良いと、ダイニングの窓から、大小さまざまな蜂が蜜を吸いに来ているのが見える。
一番目立つのは、マルハナバチだ。毛むくじゃらの黒い体に黄色い線が入った大きな蜂だ。小ぶりで黄色いのは西洋ミツバチだろう。
リンゴは品種の違う木を混ぜて育てないと、受粉が進まず実がならないので、フジと姫リンゴ二種類を植えてある。
毎年蜂が受粉をしてくれる。寒い日が続くと蜂は活動しないので、柔らかな筆の穂先で人工授粉をするが、今年は筆の出番はなさそうだ。
庭のあちらこちらの、こぼれ種で増えたニラが食べごろだ。
レバニラ、チゲ、チヂミなど、ニラの料理が続く。
昔、お向かいのおばあちゃんにニラのお浸しに生卵を乗せたのが美味しいと教えられ、食卓の定番になっている。
先日のテレビ番組で、ニラ蕎麦というのを紹介していた。
ニラを湯通しして、丼に盛った冷たい蕎麦に乗せる。真ん中を凹まし、卵の黄身を落とす。
見た目もおいしそうだったので早速やってみた。ぶっかけのように蕎麦つゆをかけて食べる。ただそれだけなのに、混ぜ込むとのど越しが良く、滋味豊かな一品になった。
ニラ料理が続いているので、何となく息が臭くなっているような気がする。
パンデミックが落ち着いて一カ月ほど経つが、まだまだマスクは外せない。
(2023年5月18日)