アスペルガーな私のやらかし人生#3 休職中、私を救ってくれたもの・前編
とにかくしんどい休職初期
2022年夏。発達障害の二次障害とみられる適応障害のため、システムエンジニアとして6年間勤務した会社を休職した。
もちろん、休職なんて人生初の経験だ。
休職したばかりのころは、本当にしんどくてつらかった。
それまで当たり前にできていたことが、できなくなった。
好きだったことでさえ、できなくなってしまった。
たとえば、普段の買い物。
スーパーに足を運ぶことはできても、買い物がスムーズにできない。
必要なものを書いたメモを準備して、それを見ながら店内を回るだけなのに。
メモを見て、、、ぼーっ。
商品を目の前にして、、、ぼーっ。
頭が回転しない。とにかくぼーっとして、何も考えられない。
ゆっくりゆっくり店内を歩き回るが、すぐにフリーズしてしまう。
それの繰り返し。ちっとも前に進まない。
さすがにこれはヤバいな。
私、めっちゃ疲れてるんやわ。
これにより自身の状態を客観的に認識した。
思っていたよりずっと疲れていたことに、このとき初めて気づいた。
ここまでひどい状態にならないと自覚できないなんて、我ながら情けない。
しばらく買い物は無理だな。
そう思ったので、しばらくの間は事情を知ってくれている友人に買い物を手伝ってもらった。
音楽を聴くのさえ、しんどかった。
大好きなアーティストの曲を聴くにも、集中して聴けない。
普段から歌詞を見ながら曲を聴いたりするのだけれど、それがしんどい。曲を聴きながら文字をひとつひとつ追っていく作業が。
文字を読もうとすると、あちこちに気が散る。周りにあるいろんなものが目に入ってきて、それがチラついてチラついて、さらに集中力を削がれる。
歌詞すらまともに読めない状態なんだから、より文字の多い本なんて読める気がしない。
文字が大好きな私が、こんな状態に陥るなんて。信じられなかった。
毎日欠かさず観ていた野球も、中継のテレビ画面をぼーっと見つめるだけで内容がほとんど頭に入ってこないから、試合展開がいまいち把握できない。
ごはんの準備にも時間がかかった。
テーブルにお皿や食材がたくさん並ぶと、何をどのように処理すればよいかわからなくなって、混乱する。
やることが増えると、何から手をつければよいのか手順がわからなくなって、混乱する(これはいまもたいして変わらない)。
などなど、ちょっと上手くできないことがあると、すぐに混乱してしまう。
ひどいときには、ほんの些細なことで子どものように泣き出してしまうこともあった。
自分で自分をコントロールできないのがもどかしくて、苦しかった。
頭がごちゃごちゃで、どうすればいいのかもわからなかった。
それまで普通にできていたことの何もかもがしんどくて、上手くできない。
これまで普通にできていたけど、それって実はすごいことやったんやな、と思った。
これは、長期戦になりそうだな。
私は覚悟を決めた。
こんなになるまで、これまで本当によくやってきたよね。
だけど、これからは頑張りすぎるのはもうやめよう。
これからはとにかく無理せずに。我慢せずに。
ちゃんと休もう。
私は私とそんな約束を交わした。
私を守れるのは、私しかいない。
だから、これは私を守るための自分との約束だ。
いったん仕事から完全に離れて、本格的に休むと決めた。
ちゃんと休めば回復するだろうと信じて。
休職中の私を救ってくれたもの
それから少しだけ時間が経ったころ、お世話になった元上司にメールで休職の報告をした。休職前に相談させてもらっていたこともあり、どうしても連絡しておきたかったのだ。
メンタルヘルス不調により休職した場合、状態が落ち着くまでは親しい仲であっても連絡を取り合うのを控えたほうがいいと言われる。可能であれば、配偶者やパートナーとも距離をおいたほうがいいくらいだ。
仕事関係のやりとりなんて、もってのほか。特に会社とのやりとりは、必要最小限の事務連絡程度にとどめる必要がある。
それくらい、休職中の人づきあいに関してはナーバスにならざるを得ないのだ。
しかし、その元上司はとっても面白い人で、いつも元気をもらっていたから、連絡をすることに躊躇はなかった。仕事で直接関わることもなくなったから何の問題もない。それが救いだった。
元上司とやりとりをしているうちに、話の流れで教えてもらったものがある。
それが『SPY×FAMILY』だった。
そのときまで私は『SPY×FAMILY』をよく知らず、いま人気のアニメという程度の知識しかなかった。しかし、
「私が絶対的な信頼を寄せる人が面白いって言うんだから、絶対に面白いはずだ!」
そう思った私は、気分転換にとりあえずアニメを観てみることにした。Amazonプライムで。
そしたら……
なにこれ、めっちゃ面白いやん!!!
期待以上、想像以上の面白さだった。
見事にドハマり!!!
アニメはもちろん全話観て、原作コミックもぜんぶ買ってすぐに読み切ってしまった。ユニクロに行って、作品に登場するキャラクターがプリントされたTシャツまで買ってしまうハマりよう。
この元上司に教えてもらってなかったら、たぶんずっと知らないままだっただろう。
この作品と出会えたこと、しかもこのタイミングで出会えたことは、私にとって本当にとってもラッキーだったなと思う。
『SPY×FAMILY』ってどんな作品?
ここで、知らない方のために簡単な作品紹介を。
敏腕スパイの男・ロイド、凄腕の殺し屋の女・ヨル、心を読める超能力者の少女・アーニャ、未来がわかる超能力犬・ボンド……という3人と1匹が、それぞれの利益のために仮初の偽装家庭を築き、奮闘するホームコメディだ。
スパイと殺し屋が互いの正体を知らずにひとつ屋根の下に暮らしているということ自体、もうコメディ以外のナニモノでもない。
それぞれが素性を隠しながら偽りの家族を演じているわけなのだが、人の心を読めるアーニャだけが何もかもを知っている、という設定が、この作品の大きなエッセンスとなっているのだ。
これ絶対おもろいやつ〜♪
だよねぇ。思わず歌いたくもなるわな。
これで面白くないはずがない、ってくらいの秀逸な設定がこれでもかと詰め込まれていて、ただただ脱帽。
面白いストーリーのつくりかたのお手本みたいな作品だと思う。
赤の他人同士の血がつながらない家族が、次第に本当の家族のように、いやそれ以上の関係を築きながらその絆を深めていく。ハートウォーミングでもあり、シリアスなところもあるのだけれど、基本的にコメディなので気楽に楽しめるところが最高なのだ。
私は、家族愛を描いた作品にめっぽう弱い。
『SPY×FAMILY』にドハマリした理由のひとつがそれだ。
家族愛に恵まれなかった私にとっては、「フォージャー家」はまさに理想的な家族像なのである。
血のつながった実の親や姉妹とさえ良好な関係を築けなかった私には、他人同士でも家族のような関係を築けるということが、うらやましいことこのうえない。
これぞ究極の家族のかたちだーーー!!!
そして、この作品の最大の魅力はなんといっても、アーニャのかわいさに尽きる。
表情豊かで、ちょっとおバカだけど何事にも一生懸命。
家族思いで、スパイである父・ロイドのミッションを成功させるためのお手伝いをしようと必死に行動する姿には胸を打たれる。
アーニャのモノマネにもハマってしまった。
ロイドが妻役を探しているときにヨルと出会うシーン(【MISSION:2】 妻役を確保せよ)。アーニャがヨルの心を読んで彼女の正体を知ってしまったときの心の声が大好き。
「こ…ころしや…!!」
くるくる変わるアーニャの愛らしい表情には、本当に癒される。
個人的には、アーニャを初めて見たとき「ミンキーモモやん!」って思った。私だけかな??
ピンクのつやつやヘアーにグリーンの瞳って、まさにモモやんか!
知らない方のために、説明しよう!
『魔法のプリンセス ミンキーモモ』は1982年(昭和57年)に放送された、魔法少女アニメの金字塔ともいえる作品。
魔法使いである主人公のモモが、作品半ばで事故死してしまうという衝撃的すぎる展開に、当時小学生だった私は度肝を抜かれた。
それくらい強烈な印象を残した、私の大好きな作品だ。
ちょっぴり脱線してしまったが、話を戻そう。
もちろんアーニャは大好きだけど、私の推しキャラはダミアンかな〜。
お父さんに認められたい一心でがんばる姿がいじらしい。
アーニャのことが気になってるくせに、ついつい憎まれ口を叩いちゃったりして素直になれないところもいじらしい。
意外と男気があるとこも素敵。がんばれダミアン!
アーニャとダミアン、うまくいってくれるといいなぁ。
素晴らしきエンターテインメント!
というわけで。
休職中の私を救ってくれたもののひとつは『SPY×FAMILY』。
休職に入ったばかりのめちゃくちゃしんどい時期でも観やすい作品だったので、ぜひオススメしたい。しんどいときには『SPY×FAMILY』のような難しく考えずに観れる楽しい作品がピッタリだ。
もちろん個人差はあるはずなので、そこは注意してほしい。私の場合はそうだったけれど、同じ症状でも同じように当てはまるわけではないから。
自分に合ったものを、自分に合ったやりかたで。それぞれのお好みで試してみてもらえたらと思う。
私の場合は、『SPY×FAMILY』のおかげで少し落ち着いた。アニメだと文字を読まなくていいから疲れない。
次に漫画をたくさん読めるようになって、少しずつ文字の多い本も読めるようになっていった。最初のうちは活字を読みすぎるとすぐ疲れていたが、そういうときは無理せず内容が重くない漫画を読むようにしていた。
こうして徐々に徐々に、段階的に状態は改善していった。
休みに入ってからしっかり寝るようになったので、慢性的な睡眠不足が解消されたことも大きい。だんだんと調子がよくなっていくにつれ、音楽を聴いたり、歌ったり、本を読んだり、野球を観たりと、それまでできていた好きなことが普通にできるようになっていった。
この休職期間中にもたくさんの作品に触れて、エンターテインメントってやっぱりいいな、とあらためて思わされた。
コロナ禍によりエンターテインメントは「不要不急のもの」とされ、ことごとく自粛の対象となってきた。
しかし私は、エンターテインメントは生きていくうえで必要不可欠なものだと思っている。たしかに生活必需品ではないけれども、少なくとも私にとっては、なくてはならない大切なものだ。
音楽も、文学も、漫画も、アニメも、スポーツも。
私のまわりは素敵なエンタメだらけ。
これからも、素晴らしい作品をたらふく味わいたい。
あぁ〜、しまったぁ!!!
『SPY×FAMILY』の話題だけで、こんなに長くなってしまった!
他にもいっぱい書きたいことがあったのに!
この後に続けて書くととんでもない長さになってしまうので、また次回ということで!