I love you さえ批判される世界で生きていくということ。
先日の民主党全国大会で。
民主党/共和党全国大会:4年に1度、米国の民主党/共和党が、副大統領の指名候補を選出などする時に開く大会
ミネソタ州知事ティモシー・ウォルズ氏が、正式に副大統領候補の指名を受けた。(日本では、Timothy James Walz は「ティム・ウォルツ」と認識されているのが多いようなので、私もウォルツ氏と書くことにする)
米国で今話題になっているのは、本人のスピーチ内容などよりも彼の息子なのだ。
私のNoteでは普段、今今のニュースをとりあげないのだが。今回は、このことを軸にして書いていきたい。タイトルから伝わると思うが、けっこう憤りを感じたため。
先に、ウォルツ氏のバイオグラフィーをざっくりと見ていこう。
1964年、ネブラスカ州生まれ。
17歳で陸軍州兵に入隊し、24年間勤務した。州兵は普段は、民間の仕事や学業に従事している。大統領や州知事の要請で、必要時に召集される。
ウォルツ氏は、洪水や竜巻後の災害対応にたずさわったり、派遣され海外におもむいたりした。州の市民兵オブ・ザ・イヤーを獲得したことがある。他勲章も複数与えられている。
イラクへの派遣を通知される2ヶ月前に、退職したこと。トランプ氏やヴァンス氏(後で詳しく書く)は、彼をけなす材料に、このことをよくもち出す。
並行して、大学にも通った。社会科学教育学士と教育リーダーシップ学修士を取得。
中国で1年間、教師をしたことがある。ネブラスカ州では、地理を教える高校教師 兼 フットボールのコーチをしていた。
「フットボールのコーチとは、兵士でストレートで既婚者でなければならない」と言ったことがある。今の時代なら、空気を読んで言わなかったかもしれない発言だ。彼の本音なのだろう。
1994年に結婚。娘(ホープさん)が1人と息子(ガスさん)が1人。
学生グループを連れて、ブッシュ氏の選挙活動を見学に行った時。学生の1人が対立候補のステッカーを貼っていたことを理由に、全員が入場を拒否されたという。
政治のプロセスについて学びたい生徒らをないがしろにされたーーと感じたウォルツ氏は、対立候補の選挙活動に、ボランティアとして参加しはじめた。かなりムカついたのだろう笑。まじめな話、ブッシュ側のとった行動が本当なら、よくないことだ。
このことをきっかけに、政治に直接関わるようになり。2006年から米国下院議員に選出され、議席についている。
2023年に、民主党知事協会の会長に就任。
狩猟と銃の所有を支持していたが。2018年にフロリダ州の高校で起こった銃乱射事件後、ライフル協会を離脱した。
知事として、中絶の権利を保障している。マリファナの合法化も。
米国では現状、中絶法は、州によってさまざまに異なる。
中絶が大きな論争を呼ぶものではなかった頃は、ほとんどの人が、人格は妊娠18週~21週にはじまるという伝統的な考え方をしていた。
以前は、どの州でも、その期間より前の中絶は合法だった。
現代のそれとは大きく異なっていたが、中絶は聖書の時代にも実践されていた。断食や重い荷物を運ぶといった行動が、推奨されていた。
「中絶」という言葉は、その同義語にいたるまで、旧約聖書にも新約聖書にも出てこない。
すでに社会に存在した行為の中で、良いとも悪いとも書かれていない行為ということだ。
明確に言及されていないにもかかわらず、反対派も賛成派も聖書をもち出しがちである。
反対派の意見を総合すると。人間の命は生まれる前から価値があると。人間は神の似姿に創造された・神が母の胎内で私を組み立ててくれたといった部分が、引用されることが多い。
支持派は、このようにも読める部分を引用することが多い。→ 女性が自分の体のために行う選択は、社会的に忌避されるような状況であっても、称賛されている。
現代の政治問題について、信仰にもとづいた独自の議論を展開すること。それは、個々人の自由であるべきだ。聖書に書いてあるかないかに関わらず、だ。
しかし。聖書が中絶に直接言及したことはない。これもまた事実だ。
1973年のロー対ウェイド事件とドウ対ボルトン事件の判決により、全国的に中絶は非犯罪化されていた。
2022年になって、これらの判決が覆された。ドブス対ジャクソン女性健康機構の訴訟で覆された。
重要判決が半世紀ぶりに。これ自体が大事件だ。
アメリカ合衆国憲法は中絶の権利を与えていない、という判断にいたったのだ。合衆国憲法による中絶の権利の保護は、終了した。
各州はそれぞれ独自の州法で、中絶を禁止できるようになった。
バイデン氏は昔からこの考え方(詳しくは貼った動画を観て)で、これは彼の本心だが。この結果を生んだ最高裁の判事を任命したのがトランプ氏であるため、より厳しく責め立てているというのも、無きにしも非ず。
このことをあまり知らなかったという人がいたら、今、さぞ驚いていることだろう。私たちは気づかぬ内に、中世にタイム・トリップでもしているのだろうか。
完全に理解不能というわけではないのだが。命のことをこんなに真剣に考える人たちが存在して、すごいとも思う。
話を本流に戻す。
いつガスさんの話はじまるの?ガスさんの話は最後なんだ。ごめんね!!
共和党全国大会で、副大統領候補に示されたのは、ジェームズ・デイヴィッド・ヴァンス氏だ。
1984年、オハイオ州生まれ。
スコットランド系アイルランド人家系の両親は、彼が幼い頃に離婚した。母親が長年、薬物中毒やアルコール依存症に苦しんだ。彼を育てたのは、実質、祖父母だった。
高校卒業後は米海軍に入隊。イラク戦争にも従軍した。(ウォルツ氏と対比させようとしたらできるのが、わかるだろうか)
大学へ進学し、政治学と哲学で学士を取得。イェール大のロー・スクールへも通い、法学位も取得。
彼のとった法務博士(Juris Doctor degree)の短縮表記は J.D. だ。James David Vance → J.D. Vance 名前とかぶっていて、ちょっといいじゃんと思う。 中2的な気持ちで。
弁護士でベンチャー・キャピタリスト。
白人労働者階級の一員として育った自身の体験をつづった著書が、ベストセラーになった。
「貧困が伝統」である環境。ドラッグやDVが日常茶飯事な環境。よりよい未来への希望はほとんどもてないと。
ヴァンス氏のインタビューが載ったウェブサイトが、集中アクセスによりダウンしたことがある。大人気。
出版されたのは2016年。トランプ氏が、大都市以外の白人労働者階級にうったえかけ、勝利した年だ。
恵まれない子供たちを助け・薬物中毒問題に取り組む非営利団体を設立。これは、数年で解散になってしまったのだが。
2016年の選挙中、実はヴァンス氏は、トランプ氏を批判していた。白人労働者階級を非常に暗い場所へ導いていると。
だが。2021年に上院議員選に出馬してからは、トランプ氏に対する過去の批判的発言について撤回した。以降、MAGAのムーブメントに賛同している。
ガスさんは父親のスピーチ中に立ち上がり、「僕の父さんだ。父さん、愛してる」と言った。
静寂の中で叫んだようなイメージをもつかもしれないが。そうではなかった。先に歓声がわいていたため、近くに座っていた人たちにしか聞こえなかっただろう。
赤の他人が突拍子もない合いの手を入れたのではない。壇上から家族に語りかける部分が、スピーチ内にあり。そこに反応したのだから。息子が。
スピーチの続きがあるのなら、一拍おいて再開すればいいだけのこと。
要するに。どこをどうとっても、不謹慎だとか場違いだとか言いようがないのだ。
以下に、SNSになされた投稿をいくつかあげてみる。
「ウォルツのバカな泣き虫息子。左派が自慢に思うような、屈強さも柔軟さもない。(中略)トランプの息子が泣くか?泣かないだろう。父親を愛しているか?もちろん、同じく愛している。私がこの国のリーダーになってほしいのは、後者の方だ」
中略の部分では。(ウォルツ氏がスポーツのコーチとして「強い男」を育成していたことを前述した)自分の息子の育成はどうしたと言わんばかりの、中傷的な言い方がされている。
トランプ氏の息子(バロンさん)の画像を出して、両者を比較しようとするもの。ガスさんを腐すために。
子どもたちまで勝手に対立させるなよ……。
私は、バロンさんもかわいそうに思った。バロンさんがガスさんを見下してるかのようなイメージが、浸透してしまいかねないのではないか。
政治的対立者の身内であると同時に。有名な政治家を親にもつという、特殊な人生にあり得る悩みだとか、そういったことをわかりあえる可能性のある2人だ。そんな「友達」は世界に多くない。
ガスさん17才、バロンさん18才。もしかしたら、本当に友達かもしれない。私たちなどに知りようのないところで。わからないだろ。
ガスさんは、非言語性学習障害と診断されている。
非言語性学習障害(NVLD)。
ウォルツ夫妻「成長するにつれ、彼が同級生とは違うことが、だんだんはっきりしていった。彼がティーン・エイジャーになる頃。不安障害とADHDに加え、非言語性学習障害をもっていることが判明した」
ここに疑わしい点はない。この障害の兆候は青年期になるまで明らかにならないことが、よく知られているからだ。小学校低学年は、単語を覚えたり簡単な計算をしたりと、暗記系の学習が中心だ。NVLDの人たちはこのような学習が不得意ではない。むしろ、得意な方かも。
社会的相互作用の中で理解しなければならない皮肉など、より微妙なことが習得対象となるのは、もう少し後のことだと言えるだろう。
夫妻は本当の話をしている。
ペンシルベニア大の、生化学・分子生物学・ゲノム学の教授によると。
この障害をもつ人は、じゅうぶんに知的で言葉も明瞭だが、空間的な協調が不器用なのが一般的。
「学習障害と呼ばれるもの。それは、私たちが情報を記憶に留めておくために必要な、言葉以外の手がかりがたくさんあるということ」
NVLDの人は、地図を読み道順をたどることを苦手とする傾向が高い。空間を移動する方法を記憶して活用する視覚空間技能が、平均より低い可能性があるということだろう。
「ボディー・ランゲージや日常的な社会的規範について、私たちが考えていることのいくつかを、彼らはキャッチすることができないかもしれない」
少し飛躍的な気がしないでもないが。そうなのかもしれない。いずれにせよ、今回私がしたい話ではない。
後退ではなく秘密の力だと考えている。ウォルツ氏が息子におくった言葉だ。
「ガスは聡明だ。彼は、私たちの多くが通り過ぎてしまうような細部に、過敏に気づくことができるのだ」
なるほど、秘密の力だ。
髪や背が伸びたことなら、頻繁に会わない者の方が気づきやすいかもしれないが。毎日そばにいるからこそ、家族だからこそ、実感するものといった感じがするな。
I Love You をカテゴライズするとしたら、そのどちらに入りやすいのかな。なんてことを少し考えた。
私がしてるのは「父さん、愛してる」の話だ。この話に比べたら、支持政党なんてどうだっていいよ。
もう少し、SNSで見かけた声をあげてみる。
彼が知的に劣っていると中傷してもいるため、好感度を上げようと計算して泣いたとは、誰も言えず。悪口は、涙がガマンできないなんて男らしくないという方向性に、集中していた。
そこに、違った声が聞こえてきた。
「障害のある人をつるし上げ、人々の激情を煽っている時、あなたは何を考えているのか」
元の投稿もこの返信も、百万単位のフォロワーをもつ人によってなされたものだが、返信の方によほど多くの LIKE が寄せられていた。
「君たちのような人は私たちの恥だ。どうか、そんな方向に行かないでくれないか」
いわゆる、仲間割れを起こしているのを大量に見かけた。
「かつては。たとえ支持しない政党が勝ったとしても。意見が異なるというだけだった。国を愛しているというコアを疑わずにいれた」「私のおばあちゃんも同じこと言ってた。昔はこうじゃなかったって」
ウォルツ夫妻は、体外受精に長期とりくむことを経て、長女を授かった。
ヴァンス氏は、体外受精の保護に反対票を投じている。共和党は、リプロダクティブ・ライツ(性と生殖に関する権利)に対する挑戦を強めている。
中絶の議論を尺をとって解説したのは、このあたりがわかりやすいようにでもあった。
私的には、これに関しては、1ミリも理解できない一方というのはない。
どんなおかしな人だったら、これらを見て、受精が体内/体外なんてことが脳裏に浮かぶというのか。ハッピー・ファミリー、以上。
別に、家族写真が幸せそうだからといって、政策がいいとは限らない。逆に言えば。政策には関係ないのだから、息子さんの言動など(あまりにも素行が悪いだとか・犯罪をおかしたとかでもなければ)、関係ないではないか。
特に、今回だ。感極まって涙が出てくるほど、誰かが自分の家族を愛しているというだけだ。
一体それの何が悪いのか。私には1ミリも理解できないし、今後も解りたくなどない。
私も、彼がボケてきたことに笑ってしまったことが何度もあった。心から反省して、実は泣いてしまった。退く時になって、やっとだ。
ひき続き、私は今「政策に関係ない話」をするが。
バイデン氏は、連邦上院議員に初当選した翌月に、最初の妻と幼い娘を交通事故で失くしている。妻と3人の子どもたちは、クリスマスの買い物に行く途中だった。
毎日片道1時間半かけて、自宅からワシントンD.C.へ電車通勤。帰宅してからは、生き残ったが重症をおった息子らの看病。
私たちがこれに笑うなら、メディアは喜んでこのスタイルを続けるだろう。つまり、私(など)のせいなのだ。
SNSで見かけた「いい人かどうかなんて、もうどうだっていいんだよ。俺たちの生活は苦しいんだ!」という投稿に、私の心はしめつけられた。この人は何も悪くない。
トランプ氏、無事で本当によかった。こんな時は支持政党など関係ない。私たち日本人は、特に、そう思った。
シンゾーには私のプライベートなトイレを使ってもらう(?笑)などと言っていたくらい、安倍氏が好きだったトランプ氏。
あの日、私たちも見たかった。ガッツポーズはしないだろうが。かすっただけだ!大丈夫だ!と立ち上がる安倍氏を。
奇跡が起こらなかったせいではない。ケンカをする私たちのせいだ。
どうか、これにキレたコメントとかしないでほしい。私はより多くの物事を「知って」いる。(そんなことは文字が読めれば誰だってできる。そんなことは私を何も表していない)私がしたい話が違うだけだ。
私が自由に想いを語ることを許してほしい。ある意味、そこにしか「私」はないのだから。
いい歌だ。長田弘の詩みたいだ。
サルトルは言った。153cmで斜視に生まれ、老若男女から絶大的に愛された男は言った。(彼は女性からも大いにモテた)
「人間が自らについて責任をもつという場合、厳密な意味の個人について責任をもつということではなく、全人類に対して責任をもつという意味である」
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