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失敗して転んでも、あなたの手をガシッと掴んでくれる人は必ずいる。



「パパに教わったことがあるんだ…。

 『人生は一度きりだから
 たくさんの経験をしなさい。
 
 どんな出来事にも意味があって、
 お前を立派に育ててくれる。
 
 悲しいことも悔しいことも
 嬉しいことも楽しいことも
 
 全てお前の将来を
 素晴らしいものに変えてくれる。


 たくさん挑戦して、
 悔いのない生き方をしなさい』って…。

 だから、やってみるよ!」



そういったものの…、


正直内心不安だし、
ただの強がりでしかなかった…。


☆☆☆



これは、ある運動会でのお話。


その運動会には、
大人気の競技がありました。


その名も 「オールスター・二人三脚」 です。


この競技は、
5年生と6年生が
ペアを組んで行います。


それぞれの学年には
A・B・C・Dの4クラス があり、


5年生と6年生を合わせると
合計8クラス になります。


各クラスから 1名ずつ代表 が選ばれ、

6年生と5年生が
A・B・C・Dごとにペアとなって
競技を行います。



参加者を決めるとある日。


事件は起こった。


5年生Dクラス、先生は

「競技に出たい人はいないかー?」
と参加者を求めました。


が、

みんな出たくないみたいで、
参加者が決まりませんでした。


仕方なく先生は、
「多数決で決めます!」

と言う。


そして…、



多数決で選ばれたのは…、


僕だった。




僕の名はひろし。

運動神経がてんでダメ、
内気で引っ込み思案な性格だ。


どうして僕が選ばれたのか?


それは…、
いじめられっ子だから。



「こいつをビリにさせて、
 恥をかかせてやろう!」

「笑い物にしてやろう!」

このクラス生徒のおもわくだった。


もちろん先生はその結果を見て、
心配して聞いてきた。

「ひろしくん、いいのか。
 嫌ならいいんだぞ…?」


だけど僕はこういった。


「パパに教わったことがあるんだ…。

 『人生は一度きりだから
 たくさんの経験をしなさい。
 
 どんな出来事にも意味があって、
 お前を立派に育ててくれる。
 
 悲しいことも悔しいことも
 嬉しいことも楽しいことも
 
 全てお前の将来を
 素晴らしいものに変えてくれる。

 たくさん挑戦して、
 悔いのない生き方をしなさい』って…。

 だから、やってみるよ!」


それをみて先生は、
少し心配しながらも、
笑顔を向けて言った。


「そうか、頑張れよ!
 結果はどうなってもいい、
 先生は君を応援しているぞ!」

頭にポンっ、と
軽く手を当ててくれた。



だけど、


正直、内心不安だし、
ただの強がりでしかなかった…。




そして運動会の日になった。


いよいよ大詰め、
最後の注目競技。

5年生と6年生の合同、
オールスター・二人三脚がスタートだ。


怖かった…。

足も手も震えていたけど、
なんとかスタートの持ち場についた。



参加者は僕以外全員、
スポーツが得意で、
運動神経は抜群。


予想通り、
足の早い人ばかりだ。


あきらかに、
僕だけ浮いていた…。



僕とのペアの子は、
D組の6年生、
ゆうき君だった。

周りに負けていない
すごく足も早くて、
スポーツもできる
運動神経バリバリの先輩だ。


(僕にはきっと釣り合わないな…)


僕はゆうき君に言った。

 
「先輩、きっと僕は足引っ張るよ。
 僕のせいで負けると思う。
 だから先に謝っておく、ごめん…!」


先輩はいった

「何言ってるの?大丈夫だよ!
 僕が支えるから、一緒に頑張ろう!」

優しくて、
とても頼もしかった。



でも、見学席にいる、
先輩の6年D組の、
クラスの子達を見れば…、


「あんなのがパートナーじゃ
 きっとビリだろな…」

そう思っているのが、
顔から見てとれた。


口元を手で隠して、
ヒソヒソ話をしているグループもいた。

(ちょっと、あんなので大丈夫なの…?
 ゆうき君かわいそう…)

そんなふうに
言ってるのだろう…。


周りには、
全校生徒。先生方。
生徒の両親達。

別の学校からも
たくさんの見学者がいてる。




(格好悪いマネだけはしたくないなぁ…)



そう思っていた。


「それではいちについてー!」


先生が叫ぶ。


「よーい!!」


「どーん!!!!」


その号令と共に、
先生のもっていた
発砲器の発砲音が

BANッッ!!


と開始を知らせる。


「ワアァアー!!!」


見学者たちから湧き上がる声。


「いち、に、いち、に!!!いち、に!!!」


僕はゴールに向けて、
夢中になって走った!



先輩は僕のペースに合わせながら、

「頑張れ、ひろし君!!
 いち、に、いち、に!!!」

励ましながら、
少し引っ張るように
体でリードしてくれた。




だけど…、



他の3クラスと、
どんどん差が開いていく…。



それを見て焦った僕は、
うっかりリズムのバランスを
崩してしまう。


足がもつれ、
僕はおもいっきり
転んでしまった…。




それを見て、


「待ってました!!」
と言わんばかりに

いじめっ子たちは
指を刺したり、
手を叩きながら僕を笑う。

(参加しなくてよかったぁ…)
クラスの子達もそう思っている。



うつ伏せに倒れた僕。


…ひざから血が出ていた。


両手で運動場の砂を強く握りしめて…、

(最悪だ…、やらなきゃよかった…)

(なんで…、いつもこんな目に…)


痛かった。


擦りむいたひざ傷より、
心が痛い。



惨めな自分と、
先輩に迷惑かけている自分。
バカにされている自分。


(なんて滑稽…)

(もう嫌だ…、逃げ出したいよ…)


そう思った矢先、


「ひろし君、
 まだ終わってないよ。
 立てるかい?」


先輩は手を差し出す。


「僕のせいで…、
 もうビリ確定だ…。
 ごめん…」


僕は今にも泣きそうだった。



「何言ってるんだい?
 これからが見せ場じゃないか。

 僕の目的は勝つことじゃない。
 君と一緒に、ゴールまで走り切ることだ!
 さぁたって!」


僕は差し伸べられた手を取り、
立ち上がった。


足を引きずりながらも、

「いち、に!いち、に!!」


ペースを落として、
また走り始めた。




その時、

空気が変わった感じがした。


(頑張れ…!!)




声には出さなくても、
見守ってくれている人。

応援してくれている人。


見学者の視線から
それが伝わってきた。



後ろは見ない。

今できることを全力で、
ただただひたすらまっすぐ、
前だけ見て走る。



そばで力強く支えてくれながら、
先輩が言った。


「もうすぐだ!」



ゴールが見えてきた。



「あれ…?」


僕はそこで違和感を感じた。



ゴールテープが、
きられていなかった。



もうとっくにみんな
ゴールしててもいい頃なのに。


「あ…」


太陽の光がまぶしく輝く。


そこで見えた光景は…、


「もう少しだ!ひろしーー!」

「頑張れー!!」


先を走っていた、
A,B,C組の皆がいた。


「一緒にゴールするぞー!!」



精一杯のエールを送りながら、
手を振ってゴールをせず、
待ってくれている…。




涙があふれてきた…。




こんな格好悪い僕を…、
こんな惨めな僕を…、


この人達は、
認めてくれている…。




ゴール手前に辿り着くと
みんなで肩を組み合って、
一緒に、

「ごおおぉぉる!!!」


と笑顔でゴールテープをきった。


「ワアァァァー!!!!!」


拍手と歓声が響く!



座り込んだ僕に、

頭をくしゃくしゃ
乱暴な撫で方をしながら、

「よく頑張ったな!ひろし!」

共に走った参加者が褒めてくれた。


先生も駆け寄ってきて、

「走り切ったな!すごいぞ!
 さぁ、保健室へ行こう!」

僕をおぶってくれた。



振り返って先輩を見た。


彼は握りしめた拳に親指を立てて、
最高の笑顔を向けてくれた。





「ねぇ先生…」


「どうした?」


背中に身を預けて
僕は満遍の笑みで言う。


「やって、良かったよ!!!」


それを聞いた先生の口元がゆるむ。



「俺達大人も、
 お前から大切なことを
 教えてもらったよ…」




おしまい。



しろ。



追伸


このお話は、
人生ってこういうものだよね〜って、

私の経験をもとに作り上げた、
エッセイ風フィクションです。笑

私は、頑張る人の辛さは、
頑張った人にしかわからない
と思っています。



世の中には、

・転んだ(失敗)を笑う人

・何もせず傍観する人

・ゴール(目標・成功)先、
 または別の角度から応援してくれる人

・引っ張って(教えて)くれる人

・転ぶけど、頑張って(挑戦して)いる人


そんな人に、わけられます。



あなたはこの一度きりの人生で、
どんな人になりたいですか?

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