マークの大冒険 「マリエットの伝記」 26 Shelk🦋 2019年4月11日 23:39 古代エジプトの聖牛アピスが埋葬された「セラペイオン」発見のストーリーは、1850年にまで遡る。当時のルーヴル美術館の職員オーギュスト・マリエットは、キリスト教修道院に残されている古文書を回収するというミッションでエジプトへ渡ることになった。 だが、修道院はお金で譲れるものではないと頑なに要求を拒否し続けた。さて、これからどうしたものか。途方に暮れたマリエットはカイロの城砦シタデルに上り、サッカラの風景をぼんやりと眺め黄昏ていた。この時、彼はサッカラに強い感銘を受け、試しに少し地面を掘ってみたいという気持ちにかられた。 試しに掘ってみると、石灰岩製のスフィンクスが見つかった。美術商から流れ、都市部の富裕層の間でもてはやされているスフィンクスと同タイプだった。マーケットで出回っているスフィンクスの出所は不明だった。もともとは盗掘者によって発見されたものだからだ。彼らはいちいち発掘場所など記録しない。 だが、この発見を機にマリエットはスフィンクスの出所がサッカラであることを確信した。そして、彼はふと古代ローマの著述家ストラボンの「スフィンクスが続く道の行く先には大神殿がある」という記述を思い出した。謎と謎の歯車が噛み合う予感。彼の胸は高鳴った。 もしかしたら、この先には……。 マリエットはルーヴル美術館から預かっていたキリストの古文書用購入資金をサッカラの発掘に投じる賭けに出た。彼の読みは当たり、スフィンクスが次々に地中から出てきた。そして、スフィンクスが出土した道の先には第30王朝のファラオ、ネクタネボ2世の神殿があった。ストラボンの伝承は本当だった。 マリエットは掘り続け、気づけば1851年の夏になっていた。そして、彼はついに大発見をした。それは、死んだアピスを葬る地下墳墓セラペイオンだった。階段を降りた先には、200mにも及ぶ巨大な廊下が伸びていた。廊下の両脇にはいくつもの埋葬室が備えられており、その天井はドーム型になっていた。 埋葬室には石棺が置かれていたが、牛のミイラは失われていた。アピスだけでなく人間の埋葬室もひとつだけあり、第19王朝のファラオ、ラメセス2世の息子カエムワセトの名を刻んだ石棺があった。王子のミイラも失われていた。だが、彼はアピスと共に埋葬されることで死後の安寧を期待していたのだろう。 部屋の数は計24個、花崗岩もしくは玄武岩製の石棺は計20個確認された。安置されていた石棺は、最も重いもので70トンもあった。当初マリエットはキリストの古文書回収というミッションでエジプトに訪れた。だが、セラペイオンの発見という別の成功を収める。人生の巡り合わせとは実に奇妙なものである。 この記事が参加している募集 #推薦図書 43,862件 #noteでよかったこと 50,892件 #note感想文 11,255件 #404美術館 33,563件 #コミックエッセイ大賞 with OZcomics 591件 #写真 #小説 #イラスト #マンガ #絵 #猫 #note書き初め #noteでよかったこと #コミックエッセイ #推薦図書 #研究 #404美術館 #夏のオススメ #みんなでつくる冬アルバム #はたらくを自由に #note感想文 #コミックエッセイ大賞 #エジプト #古代史 #2020年代の未来予想図 #あの夏に乾杯 #好きな日本文化 #令和元年にやりたいこと #考古学 #わたしが応援する会社 #2019年のベストnote #ファーストデートの思い出 #古代エジプト #学術 #発掘 #生活のたのしみ展 #平成をかざるプレイリスト #土屋鞄の絵本コンテスト #私の好きなデ・ニーロ #アンティークブック #考古遺物 #詩瑠久 #Shelk 26 この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか? サポート