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2016年1月の記事一覧
乙女は花列車に夢を見る
ルーニンが住む街では、毎年秋になると大きな祭りが行われた。花祭りと呼ばれるそれは三日三晩続く大行事だ。秋の実りと収穫を祝うそのお祭りではコスモスがシンボルとなっており、あちこちに華やかで可愛らしい花弁が咲き乱れている。
今年で十二歳となるルーニンは、そんな花祭りが大好きな少女だった。
ルーニンは花祭りが始まる日の朝、誰よりも早く起床した。
「お母様おはよう! さあ、早くアップルパイを焼きましょう」
ホワイトリリーに口づけ
マリーは絡みつくロングメイドドレスの裾をたくし上げると、広大な廊下をパタパタと走った。
「お嬢様ー!マリアンヌお嬢様ー!」
この姿をメイド長に見つかれば軽く三十分は説教されるであろう。しかし今のマリーにはそんな余裕はなかった。
姿を消した主を早く見つけ、捕まえ、嫌がってでも今夜のパーティーの準備をさせなければならないからだ。
「マリアンヌお嬢様ー!早く出てきてくださーい!」
「……そんなに大声出さ
エデンは西の河に落つる
陽光はすでに西に沈み始めていた。燃え始めの炎のように彩る空はどこか寂しげで、アッシアの黒い影を長くさせた。無心に籠を編んでいたアッシアはその手を止め、目の前に広がる河へと目を向けた。
散らばる乱反射は美しく輝いて、夕から夜への橋渡しをしている。
「やあ、お疲れ様アッシア」
「ラハン」
振り返ればそこには日に焼けた青年が一人。彼はラピスラズリを思わせる瞳を細めるとアッシアから前方へと視線を向けた。
神を切ってはなりません
相変わらずテレビのコマーシャルで、噂の美少女タレントがロングヘアーを風にたなびかせているのを、美羽はうんざりと横目で観た。
「キューティクルを育てる」がキャッチコピーの自然派シャンプーは最近の流行りらしく、美羽のクラスメイトも何人か愛用していた。
風に舞い上がる黒髪がやけにCGめいて吐き気がする。美羽は朝ごはんをかき込むと乱暴に茶碗を置いた。
「ごちそうさま! 行ってきます!」
そうして立ち上
ゆいとケーキ(200字ノベル)
沢山のケーキが並べらたショーウィンドウを前に、ゆいはお鼻を潰すほどどれにしようか思案中。その中で飛びっきりのケーキを見つけた。
「パパあれがいい!」
「どれどれ?」
父親はゆいの指さすケーキを見てしばし言葉を失った。
「…ゆいにはちょっと早い」
「何でー!あれがいいー!」
駄々こねゆいが指差す先にはメレンゲドールの花嫁さん。父親は苦笑いした。
いつかこのケーキを買う日も来るのか、と思いながら